ELA-M251と同パーツを採用した単一指向性コンデンサー・マイク

TELEFUNKENELA-M14

TELEFUNKENのマイクといえば、今でも愛用者の多いビンテージ・マイクである。TELEFUNKENの名前は知らずとも、必ずどこかで“TELEFUNKENサウンド”は耳にしていることだろう。私にとってもTELEFUNKEN(あるいはNEUMANN)のU47 Tubeは、レコーディングをする上で欠かせないマイクだ。

現在のTELEFUNKENは、TELEFUNKENNORTH AMERICA社が復活させたブランドで、オリジナルの復刻モデルを中心にマイクの生産をしている。そして今回のELA-M14は先に発売された復刻版ELA-M251のコスト・ダウン・モデルという位置づけになると思う。

単一指向性に限定することで
音質面で妥協せずに低価格化を実現


もっとも“コスト・ダウン”という言葉を使うと語弊があるかもしれない。妥協という意味ではなく、レコーディングにおいて一番使う頻度が高いシチュエーションに特化したものという意味である。その証拠に、ELA-M14の各パーツはサウンド・キャラクターを決定付けるカプセルにCK-12、サウンドの要となる真空管に6072の新品在庫品、トランスはT14といった、ELA-M251(Eモデル)と同じものが使われている。文章にするとこれだけで終わってしまうが、ELA-M251の復刻に際しては、できる限りオリジナル・パーツを使ったり、オリジナルのものを手に入れることができなければ忠実に新しく作ったり、当時生産していたメーカーに同一のものを発注したりしたそうだ。ELA-M251の復刻・再生にさまざまな検証、膨大な時間、試行錯誤を繰り返したことを考えれば、不満な部分などあるはずもなく、同パーツを使用しているELA-M14も十分に納得できるマイクだろう。ELA-M251との相違点は、ボディの形状と単一指向性のみになっているということ。ELA-M14はELA-M251よりもほっそりしていて、デザインもシンプルの一言に尽きる。いかにもマイク、という武骨な感じが個人的にはすごく好きだ。また、このELA-M14の単一指向は、CK-12のダイアフラムを片方だけ使用しているとのこと。レコーディングで楽器単体の演奏を録音する場合、無指向や双指向よりも圧倒的に単一指向性で録音することが多いので、指向性の切り替えが無くなったことはほとんど気にならないだろう。

明るく輪郭のはっきりしたサウンド
低域の膨らみや距離感も再現


肝心のサウンドだが、印象としてはかなり明るい傾向にある。輪郭がはっきりしていて、音の粒立ちが良い。音を拾ったときの立ち上がりに対する反応が鋭い感じだ。ビンテージの復刻というよりも、別の新製品という印象を受けた。まずパーカッションで使ってみたところ、カホンの“ドスン”という低域はレンジが広く膨らみのある感じで録れた。また、コンガも手が皮に当たるアタック部分のリアルな感じとともに、胴鳴りの響きも良く、忠実に再現できていたと思う。次に使用したのはピアノである。別のマイクをハンマー近くの高音域側と低音域側にオンで立て、ELA-M14は低音域側にオフで立てて混ぜてみた。ELA-M14はマイクの立てた位置の距離感をきちんと表してくれて、オンマイクの補強という形で低域の豊かさを付加してくれたように思う。さらにトロンボーンに使用してみたところ、パーカッションでは気にならなかったが、若干中高域にピーキーなところがあった。明るさや輪郭など、このマイクの良い部分にも影響する要素なので嫌な感じではないのだが、フルートに使用したときにも同様の傾向が感じられた。高域部分の伸びが強調され過ぎてしまったのだろうか。実際には、音のダイナミクスや微妙なニュアンスも埋もらせずに録れていたので、悪い方向性ということではなく、セッティングの問題もあったと思う。最後に、男性ボーカルでも試してみた。非常にブライトで、突き抜けるようなエッジ感があり、パワフルだ。リアリティがあり、ダイアフラムがニュアンスを余すところなく拾ってくれる。多分これを所有したら、いつも使っているマイクが選択肢から外れることも多くなりそうだ。あえて不満を挙げるならば、全体的な“ドッシリ感や厚み”は期待したほどではなかったことだろうか。しかし、明るいサウンドのわりに、温かみも感じられることは間違いない。個人的な感想だが、復活したTELEFUNKENはオリジナル・パーツを用意したり、できる限りの再現をしたのは称賛に値する。ただ、当時はマイクの特性の方がコンソールや記録媒体の特性よりも優れていたため、単純に言えば、マイク以降で音の劣化を見越したスペックになっていたと思う。アナログからデジタルへ移行し、ハイビット/ハイサンプリングが当たり前となり、マイク以降の機器やケーブル、コンソールなどの特性が(原音の再現性という意味で)進化した現在、当時と同じようなパーツでのマイクのキャラクターや特性を再現すると、結果的に明るめのサウンドになり、私が“ビンテージ”という言葉から思い浮かべるサウンドにはならないのかもしれない。とはいえ、このマイクそのものの価値は素晴らしいと思う。変にどこかを強調したような癖がなく、素直な感じで安心感がある。“おなじみのサウンド”という安心感だ。価格は実売で38万円前後なので個人で持つ1本としては高価かもしれないが、お薦めに値するマイクである。
TELEFUNKEN
ELA-M14
オープン・プライス(市場予想価格380,000円前後)

SPECIFICATIONS

■外形寸法/43(φ)×204(H)mm
■重量/422g(本体)
■付属品/マイク・ケース、電源ユニット、専用ケーブル