96kHz対応デジタル出力を備えた2ch仕様のチャンネル・ストリップ

JOEMEEKTwin Q

JOEMEEK! 本誌読者にはおなじみですよね。コンプやEQをはじめとして、30年にわたってさまざまな価格帯のラインナップを送り出してきたブランドです。今回チェックする製品は、同社のTwin Qという2ch仕様のチャンネル・ストリップです。しかもDAW環境にうれしいデジタル出力付き。ところで、“JOEMEEK”ってレコーディング・エンジニアの名前だって皆さん知っていましたか!?

JOEMEEKカラーのパネルに
ツマミ群を機能的にレイアウト


外観はJOEMEEKおなじみのグリーン・カラー。2Uのパネルに黒いノブが整然と並び、丸いVUメーターが印象的です。パネル左から見ていくと、上からマイクプリ部の+48Vファンタム電源、トランス仕様切り替え(IRON)、−20dB PAD、ライン入力切り替え、フェイズ切り替えのスイッチが並んでいます。その右上にEQ部がレイアウトされ、低域&中域の周波数とゲイン、高域の周波数切り替えスイッチ(6/12kHz)とゲイン、EQのON/OFF、そしてアウトプット・ゲインをレイアウト。下段は左からプリアンプ部のゲイン、80Hz(12dB/oct)のHPFスイッチを挟んで、コンプレッサー部のスレッショルド(COMPRESS)、レシオ(SLOPE)、アタック、リリース、メイクアップ・ゲイン、コンプのON/OFFが並びます。これと全く同じ内容がもう1ch分並ぶという仕様です。もちろんVUメーターも2ch分用意されており、入力とコンプのリダクション・レベルの切り替えが可能。また、2chのコンプをリンクさせるモードも用意されています。さらに本機は24ビット/最大96kHz対応のデジタル出力を備えています(周波数はリア・パネルで設定)。端子もAES/EBU(XLR)、S/P DIFコアキシャル&オプティカルを標準装備。ワード・クロック入力もあり、複数のデジタル機器とシステム構築が可能です。DAW環境に対応するデジタル出力はセールス・ポイントの1つでしょう。

粘り気ある音色のプリアンプ部と
大胆な効果も期待できるコンプ&EQ部


それでは実際に使ってみましょう。コンデンサー・マイクとしてNEUMANN U87を、ダイナミック・マイクとしてSHURE SM58をつなぎ、声/ボーカル/アコギのサウンドを試聴します。まずマイクプリ部ですが、U87/SM58共に、粘り気のあるトーンで、JOEMEEKならではのサウンド・キャラクターです。ボーカルではおかしな子音の強調も無く、レンジの広さがうかがえます。特にU87使用時にはボーカル/アコギ共に存在感が増し、レンジ的にも十分な伸びが感じられました。オールドNEVEの雰囲気に少し似た感じです。入力レベルを上げ気味にすると、とりわけアコギの倍音がより多く感じられ、ひずむ直前で非常にガッツのある音になりました。さらにひずませると中域に独特の飽和感が現れ、音楽的に気持ちのいいドライブ感が出ます。エレキベースなど低域楽器にも合いそうです。次にコンプ部をチェック。マイク入力に対し、レシオ4:1程度、3〜4dBのリダクションを実行。システムはオプティカル方式で、実に自然なかかり方です。あえて強く&深くコンプレッションしていくとJOEMEEK独特のディープで荒れたサウンドになりましたが、かけ過ぎはヌケが悪くなるので注意。とはいえ、ループのリズム・セクションなどには刺激的に使えそうです。EQ部もコンプと同様、自然なかかり方から、ディープな効果まで多彩な音色変化が楽しめます。傾向としては±3〜4dBまでは微妙にかかり、それ以降は急に大胆にかかってくる感じです。特に低域の効き具合はファットで、過激なブーストがかなり効果的。逆に高域は空気感が増し、より繊細な音作りも可能です。アウトプット・ゲインもあるので、オーバーEQ気味な処理でも、出力のコントロールができます。最後にデジタル出力部のチェック。DIGIDESIGN Pro Tools│HD Accelを使い、Pro ToolsのI/OでADした音と、本機でADした音(Pro Toolsへの入力はAES/EBU経由)を比較してみました。外部ワード・クロックの供給次第で結果は変わると思われますが、ADコンバーターのサウンド・キャラクターは、若干ですがTwin Qの方が明るめでした。レイテンシーは本機の方が優秀で、30サンプルほど少なかったです(48kHz時)。全体的な印象として、従来のJOEMEEKのイメージよりもさらに自然かつ細かい音作りができ、なおかつコンプとEQの使い方次第で個性的なサウンドにも対応する幅の広い製品だと思いました。デジタル出力によるDAW環境への対応はポイントでしょう。既に海外では同コンセプトのOne Q(モノラル仕様)やSix Q(ステレオ1U版)も発表さているので、それらも楽しみですね。

▲リア・パネル。左からAES/EBU出力(XLR)、S/P DIF出力(コアキシャル&オプティカル)、ワード・クロック入力(BNC)、周波数セレクト・スイッチ。その右は入力レベル選択スイッチ、アナログ出力(フォーン&XLR)、インサート、ライン入力(ともにフォーン)、マイク入力(XLR)をそれぞれ2ch分用意

JOEMEEK
Twin Q
144,900円

SPECIFICATIONS

■入力インピーダンス/マイク:1.2kΩ、ライン:20kΩ
■周波数特性/10Hz〜70kHz(−3dB)
■最大入力レベル(クリップ直前)/マイク:21dBu、ライン:+45dBu
■外形寸法/482(W)×88(H)×220(D)mm(突起部含む)
■重量/3kg