広がりや奥行きを確実に再現する低価格の小型パワード・スピーカー

ESINear 05 Experience

今回紹介するESI Near 05 Experienceは、既に発売されているアクティブ・モニター・スピーカーNear 05を元に、新しいエンクロージャーとウーファー・ユニットが採用された製品です。最近は、本機のような小型で低価格なモニター・スピーカーが数多く見られますが、この価格帯のモニター・スピーカーの選択肢が多いのは、その重要性が広く認識されていることの表れではないかと思います。私自身もモニター・スピーカーの選択は常に考えている部分であり、機会があればいろいろと試聴するようにしています。というわけで、Near 05 Experienceがどんなスピーカーなのか、個人的にも楽しみです。

ふくよかな低域が印象的な
力強く派手なサウンド


まずは概要を説明していきましょう。電源を入れると光るブルーのLEDが印象的で、ケブラー繊維を使用した防磁仕様の5インチのウーファーと、同じく防磁仕様でシルク・ドームの1インチ・ツィーターの2ウェイ方式です。またパワー・アンプ部はウーファーが40W、ツィーターが30Wの独立したアンプで駆動させるバイアンプ構造になっています。今回はリファンレンスとして聴いているCDやマルチの素材を利用し、普段愛用しているスピーカーと本機を並べて切り替えながらチェックしてみました。まずはCDを聴いてみましたが、第一印象としては派手で気持ちよく聴こえるスピーカーです。中高域に若干癖があるように感じますが、それも本機の特長である派手で元気な音という部分を演出していて悪い印象はありません。この帯域は、ほかのスピーカーでも少なからず癖の出るあたりで、音のキャラクターを決定する部分ということもあり、良しあしではなく好みで判断すればいいと思います。また低域は、このサイズからは想像できないほどの再現性と量感を持っています。かといってブーミーな印象はなく、キックやベースも実像がよく見える感じです。特にキックはスピード感があり気持ちがいいです。このクラスのスピーカーによくある、無理に低音を出しているといった印象は全くなく、高域とのバランスもよくとれています。もし低域に不満がある場合は、壁との距離を調節してみたりするとよいでしょう。本機のバスレフ・ポートはリアにあるので、壁との距離でかなり印象が変わります。今回は壁から20cmほど離した位置が量感的に一番良く感じました。さらに定位の再現性に関しても良好と言えるでしょう。ただ左右のスピーカーの間隔を少し狭めると左右の分離が悪くなる場面もありましたが、間隔を広げて内振りにすることで左右の分離がよくなるのはもちろんのこと、センターもよく見えるようになり、リバーブ感も分かりやすくなりました。セッティングの際にはこの点を考慮したスペースを確保したいところです。

高域や低域の確実な再生力で
小音量でのミックスも快適に


CDの試聴で本機の特長をつかんだところで、DIGIDESIGN Pro Toolsのセッション・ファイルを立ち上げて軽くミックスをしてみました。ドラム、ベース、ボーカル、上モノといったよくある手順でやったのですが、作業中にモニターに関する違和感や不安は全くありませんでした。特にキックやベースといった低音パートの音作りが小音量でもしっかりできるので快適です。またボーカルの空気感を強調するような高域のEQをした場合も、結果がきちんと音に反映されます。低域や高域の音作りをする場合に、スタジオではラージ・モニターを使用したくなることがあるのですが、本機はそういったことをほとんど感じさせませんでした。中でも特に感心したのは奥行きの再現性です。モノのリバーブやうっすらかけたディレイなど、奥行きを出すためにかけたエフェクトの効果をしっかりと再現してくれます。広がりはうまく再現されても奥行き感は苦手という製品が多いこのクラスのスピーカーの中で、本機の存在は貴重なものだと思います。ただ音量/音圧は小スペースでの作業には十分だと思いますが、レコーディング・スタジオでの録りからミックスまでを本機のみで行うのは音量の面で難しいかもしれません。本機は自宅録音をターゲットにした製品であると言えるでしょう。もう少しハイパワーなモデルがあるとスタジオでも使いやすくなるのではないでしょうか。もし製品化されたらぜひ試してみたいです。また、本機の最大の魅力はコスト・パフォーマンスではないでしょうか。この価格でモニター・スピーカーとしての必要な要素を持ち、なおかつ気持ち良く聴くことができるというところが素晴らしいです。そのシンプルな構造は、初めてモニター・スピーカーを導入する方には最適だと思います。
ESI
Near 05 Experience
オープン・プライス(市場予想価格 45,000円前後/ペア)

SPECIFICATIONS

■タイプ/2ウェイ・アクティブ
■スピーカー構成/1インチ・シルク・ドーム(HF)、5インチ・ケブラー・コーン(LF)
■周波数特性/60Hz〜20kHz
■クロスオーバー周波数/3.2kHz
■アンプ出力/40W(LF)、30W(HF)
■入力端子/XLR、TRSフォーン
■外形寸法/166(W)×250(H)×200(D)mm
■重量/5kg(1本)