多彩な音作りが可能な真空管搭載のステレオ・アナログ・フィルター

ALLEN&HEATHXone VF-1

最近は本誌の広告を見てもソフト関連のものが多く、ハード系の機材は脇に追いやられてるような。機能も充実してるし、価格も以前からすれば格段に下がっているのに、何かこう、ぱっと見で"欲しいっ"と思わないんですよね。あたらしモノ、大好きなんですけどね......最近はついつい中古機材を探すことの方が多くなっていたり......そんな気持ちを察していただけたのか、編集部よりハード機材のレビューのお話が。果たしてXone VF-1は、僕の物欲モードにスイッチを入れてくれるのか?

シンプルだが多機能な
パネル・レイアウト


ALLEN&HEATHというとコンソール同様DJミキサーも評価が高く、Xoneシリーズはヨーロッパをはじめ世界各国のDJが愛用しています。そのシリーズからフィルター部を抜き出し進化させた、ステレオ・アナログ・フィルターがXone VF-1。フィルター・タイプはVCFで、ステレオで12dB/oct、モノで24dB/octという仕様になっています。僕は以前同社のDJミキサーをクラブ・プレイで使ったことがあり、その際にフィルターも試してみたのですが、"エグいくらいガッツリかかるなー"なんて思いました......そんな回想をしながら本機を箱から取り出すと、パネルの色も渋く、何だか良さげな面持ち。フロント・パネルはツマミが6つにスイッチが3つ、ボタンが4つと非常にシンプル。もうこれだけでかなりの好印象です。で、リア・パネルはというと、入出力それぞれにXLR、TRSフォーン、RCAピンがそろっております。"スタジオであれクラブであれ、さまざまな場所で使えますよ"という自信の表れでしょうか。そして、その横にはMIDI端子が。そう、外部シーケンサーと同期しちゃう賢い子でもあるのです。さらに上面を見てみると、黒いパネルのスリットからキラリと光るものが。おぉっ、これは真空管ですよっ。なんか、すごく期待させられる感じで鎮座してますよ。いやー、第一段階は軽くクリアですね。"これは早く音を聴いてみなければ"という気にさせられてしまいました。

奇麗な出音ながら
過激なサウンド・メイクも可能


とりあえず今回は"あまり難しくない形で使ってみよう"と勝手に決めつけて、CDプレーヤーを直で本体につなぎ、そのアウトをミキサー卓に立ち上げてスタジオでモニターしてみました。以前アナログ・シンセのオーディオ入力にCDプレーヤーをつなげてフィルターのかかり具合を試してみたら、あまりの気持ち良いかかりっぷりに、しばらくそのままリスニングしていたという経験がありましたので、"そんな感じになるといいな"なんて期待もしつつのトライです。前回はアナログ・シンセだけにモノラルでしたが、今回はステレオですからね。ソコもまた楽しみの1つというか。向かって右側のボタンがフィルターのオン/オフ・ボタンなので、まずは素の音を聴き、その後ボタンをオンにしました。カットオフのツマミ(20Hz〜20kHz)の横にローパス、バンドパス、ハイパスのボタンが並んでいるので、それらを切り替えながらカットオフのツマミをグリグリしつつ、さらに左のレゾナンスのツマミも回して......おぉっ、コレはなかなか、というか良いっ! それぞれのツマミの動きはすごく滑らかです。ちょうどいい重さというか、回しやすいんですよ。さらにその動きにちゃんと音がついてきます。余すところなく上から下まで、すべての帯域がスムーズに落ちては上がり、上がっては落ちるという感じです。出音もとても自然で、先述のアナログ・シンセにオーディオを通したときと同じ感覚で聴くことができました。奇麗な音ではありますが、ステレオ感も損なわないし、嫌じゃないですね......そんな感じで、しばらく聴き入ってしまいました......。いかんいかん、残りのツマミも試さないと。レゾナンスの隣にはLFOの深さを調節するツマミがあり、ウェーブ・フォームを矩形波/三角波に切り替えるスイッチが。さらにその横のツマミではLFOのスピードを設定します。この辺りをいじりだすと、元の音が劇的に変化し始め、完全に別物へと持っていくことも可能です。先にも述べたようにツマミがしっかりしてるので、自分が求めているポイントにしっかりとハマってくれます。そして、フィルターの効果をより劇的にしてくれるのが、パネル左にある残りの2つのスイッチとツマミ。今度は左から紹介していくと、入力信号の音量に合わせてフィルターのかかりが効果的に変化するエンベロープ・フォロワーと、その効果のディケイ(減衰)スピードを決めるスイッチ、真空管によるひずみを加えることができるバルブ・オーバードライブ、そのひずみとエンベロープ・フォロワーを連動させるスイッチ......と、文章だけでは分かりづらいかと思いますが、これがまた面白く、かつ気持ちイイです。以前レコーディングの際に、生ピアノの音を"サンプリングしてさらにフィルターを掛けたような音色"にしたくて、いろいろな機材で試してみたのですが、全く理想の音にならなくて、結局その案自体がボツになったことがありました。"Xone VF-1がそのときにあればよかったのに"と思います。コレを使っていれば、間違いなくOKが出てましたね。Xone VF-1はすごく"音楽作ってるなー"って気にさせてくれる1台でした。ちなみに、物欲モード、入りました。欲しいです、ホントに......皆さんもお店で触れる機会があったら、ぜひグリグリして自分の耳で確かめてみてください。ほかのフィルターとはひと味違うのが分かると思いますよ。

▲リア・パネル。左よりMIDI OUT/IN、MONITOR OUT(TRSフォーン)、BALANCED OUT(XLR、TRSフォーン)、UNBALANCED IN/OUT(RCAピン)、BALANCED IN(TRSフォーン、XLR)

ALLEN&HEATH
Xone VF-1
126,000円

SPECIFICATIONS

■最大出力/+26dBu(XLR)
■周波数特性/10Hz〜30kHz(+0/−0.5dB, Filter On)
■全高調波歪率/0.002% 未満(1kHz、+4dB Out)
■出力インピーダンス/50Ω
■外形寸法/482 (W)×44(D)×125(H)mm
■重量/1.8kg