複雑なフレーズでも直感的に生み出せるMIDIステップ・シーケンサー - サンレコ〜音楽制作と音響のすべてを届けるメディア

MANIKIN ELECTRONICSchrittmacher

鈴木光人（OVERROCKET）

ドイツはベルリンのMANIKIN ELECTRONICからリリースされたSchrittmacher（シュリットマヒャー）は、16ステップのMIDIステップ・シーケンサーです。何気なく取り扱い説明書に目を通すとスペシャル・サンクスにクラウス・シュルツの名前が。お国柄ですね、いい感じ。ステップ・シーケンサーの新製品は久々なのではないでしょうか。ソフト・シンセで同じようなフレーズが作れたとしても、ツマミをひねってパラメーターを変化させるだいご味、レスポンスの良さ、また作っているうちに脱線して思いもよらないフレーズや音色ができるといった点は、ハードウェアに軍配が上がると思います。では、Schrittmacherがどんな可能性を秘めているのか見ていきましょう。

大型液晶ディスプレイを搭載
最大32トラックを同時再生可能

まずは概要から。大きさは3Uラック・サイズで背面のMIDI端子は、INが１系統にOUTが２系統。フロント・パネルでは大きな液晶ディスプレイが目を引きます。またプッシュ機能付きで、エンドレス・タイプのロータリー・エンコーダーが16個とシーケンス選択ボタンが４個、ライン選択ボタンが８個並び、ほかはトランスポート用など幾つかのボタンが並んでいるだけとシンプルです。本機はMIDIステップ・シーケンサーなので、"じゃあ、同時再生トラック数って幾つなの？"と疑問を持たれると思います。説明しましょう。本機では一般的なシーケンサーで言うところのトラックのことを"ライン"と呼びます。１つのシーケンスの中にこのラインは８本（８トラック）用意されていて、シーケンス自体は４本あるので、４シーケンス×８ラインの計32本のトラックを同時に走らせることが可能となっています。

各ラインのパラメーターはアサイナブル
ループ範囲もリアルタイムに変更可能

それでは操作方法を見ていきましょう。ディスプレイには現在選択されているシーケンスの中の１本のラインが表示されます。ここに16のステップが並んでいて、各ステップごとの設定を対応するロータリー・エンコーダーでエディットしていくのです。ラインでコントロールできるパラメーター（タイプと呼ぶ）はアサイナブルで、ノートのほかベロシティ、ゲート、レングス、コントロール・チェンジ、MIDIチャンネルなどが選べます。あるラインのタイプはノート、また別のラインのタイプはベロシティといった具合にアサインしていき両者をリンクさせれば、ステップごとにノートとベロシティを変更したフレーズを作れますし、複数のラインにノートを割り当ててコードを作成することも可能。コントロールする音源に合わせて、いろんなタイプをアサインし、それらをリンクさせれば音色も変化する複雑なフレーズを作れます。また各ステップをプレイするかミュートするかといった設定は、ロータリー・エンコーダーをプッシュすることで切り替えることができます。これは本体左側にあるStepmodeボタンのオン／オフ設定とも関連していて、前のステップの値を維持させたり、スキップさせることも可能。各ステップの状態は、ロータリー・エンコーダーをプッシュするたびにLEDが緑、赤、消灯と変化して教えてくれます。このように回す／押すという手順だけでフレーズを次々と変化させられるので、良いループができたらすぐにセーブしましょう。作成パターンは30個まで本体にセーブすることができます。さらにLoopボタンを押して、ループさせたい範囲の最初と最後のステップにあたるロータリー・エンコーダーを同時に押せばループ範囲を設定可能。ステップ5〜7といった中途半端な範囲をリアルアイムに設定できるのでミニマル的なフレーズの作成に役立ちそうですね。なお、Loopモード以外でも各ラインのファースト・ステップとラスト・ステップは任意に設定可能です。そのほかシーケンサーの走行方向は、前進、後退、往復、ランダムなどが選べますし、Rotate機能を使えば、すべてのステップをリアルタイムに左右にずらしたりもできます。これもライブ・パフォーマンスに効果的でしょう。使用方法としては、コンピューターとシンクさせて、良いフレーズができたらMIDIデータまたはオーディオで録音するといったスタイルが考えられます。もちろんライブでも効果的に使えるでしょう。直感的なフレーズ作成が可能なその自由度の高さはやはりステップ・シーケンサーならでは。最初のうちは何をしてもアシッド・ループばかりになりますが、それも味の１つ。慣れればより複雑なパターンも作れるようになります。ちなみに、このメーカーでは音楽レーベルもやっています（www.manikin.de/）。開発者の電子音楽への情熱が感じられますね。