新設計ダイアフラムを搭載したマルチパターン・コンデンサー・マイク

RODENT2-A
RODEは、1991年のNAMMショウに名機NT2を出展以来、現在に至るまで一貫して低価格&ハイクオリティを通し続けている、我々ユーザーにとっては非常にありがたいマイク・メーカーだ。製造工程でもオーストラリアのシドニーにある自社工場でダイアフラムの設計・製造からパッケージングに至るまでのすべてを行い、大量生産することによりコスト・ダウンを実現しているという。クオリティも相まって、今やRODEはコンデンサー・マイクのスタンダードして全世界に認められる存在であると言ってもいいだろう。今回は同社の初期の代表機であるNT2の後継モデル、NT2-Aをチェックする。

肉厚で耐久性の高いボディ・シェル
自社開発・製造の新ダイアフラムを採用

まず外観から見ていこう。NT2と比べると先端部分が細くなっており、色合いも少々暗みがかっている。重量感は明らかにNT2-Aの方があり、実際にも860gと少々重めだ。ボディ部分のシェルもNT2よりは厚めになっている。筆者もNT2を所有していてもう3年も使っているが、さまざまな現場に持ち込んでいることもあって、あろうことか何回か落下させてしまい、ボディ部分に凸凹が何カ所かある。その点でもNT2-Aの耐久性の高さはありがたい。

また、外観ですぐ気が付くのは正面に装備されている3つのスイッチだ。NT2から大きくバージョン・アップした点はさまざまあるが、まずは最上段の指向性切り替え。NT2では無指向/単一指向の2段階だったが、NT2-Aではこれに双指向が加えられている。MS録音などのシチュエーションで活用することもできるわけだ。この指向性切り替えの下にはエアコンの雑音や低域のハム・ノイズをカットするためのハイパス・フィルターがあり、80Hzと40Hzとフラット(オフ)の選択ができる。一番下のスイッチはPADで、0dB(オフ)、−5dB、−10dBの切り替えが可能になっている。大音量の楽器やギター・アンプなども収音しやすい仕様だ。こうしたスイッチ類は上位機種のNT2000に準じているわけだが、連続可変式で調整の自由度がかなり広いNT2000に対し、NT2-Aではそれぞれを3段階に限定することによりコスト・ダウンを成功させている。

このほかにも内部的な特徴があって、例えば新たに設計されたHF1デュアル・ダイアフラムの採用が挙げられる。マイクの命とも言えるこのダイアフラムは大きめの1インチ(25mm)サイズで、ローノイズでありながら周波数特性も上位機種に匹敵する。低価格・大口径コンデンサー・マイクの先駆けとして他社との差別化を図ったのだろう。こういったダイアフラムの開発から自社で行えるのもRODEの強みで、その設計思想には本当に頭が下がる。またNT1、NT2などの旧機種と同様に内部ショック・マウント構造を採用しているので、自宅録音くらいならサスペンション・ホルダーが無くても支障はあまりないだろう。

フラットな特性に明るさを足した印象
広がりや距離感の再現性も高い

実際に音をチェックしてみよう。まずは自分の声でボイス系のチェック。非常にブライトで距離感が見えやすい音色だ。自宅のモニターで試聴する限りでは、1.2kHzくらいからの伸びが良い感じがする。低域が感じられないわけではなく、フラットな特性に明るさが足された感じで、EQのノリも非常に良い。

次に、アコースティック・ギターで試してみた。前述したことと重複するが、非常にブライトで音の粒が見えやすい。ストローク時の音の立ち上がりも非常に良い感じがする。

ここで筆者所有のNT2と比べてみた。使用年数も使用回数も違うことを差し引いたとしても、ダイナミック・レンジ、周波数特性共に全くキャラクターは別物。先程は“NT2-Aはブライトなイメージ”と強調したが、低域もかなり出ていて、明らかに新開発のダイアフラムの成果が音として感じられる。また、狭い部屋でのテストだが、双指向性にして少々遠めから狙ってもみた。広がり感と距離感が思った以上に再現され、部屋全体の鳴りを収音できた。スタジオ録音でも、少ない本数でのバンド録りなどで重宝しそうだ。

NT2-A全体の印象は、NT2とは全く違ったキャラクターだった。NT2では某社の有名マイクの音色を追っていた印象だったが、本機では明らかに自社ブランドの音色を追求している感を受ける。またこの驚異的な価格もすごい。NT2ではハード・ケースが付属していたが、本機ではソフト・ケースになり、サスペンション・ホルダーもオプションとしたことで、限界ギリギリの低価格化を図っている。そしてマイク自体のクオリティは価格以上のもので、これからコンデンサー・マイクを買いたいと思っているミュージシャンにお薦めしたいモデルだ。

RODE
NT2-A
44,100円

SPECIFICATIONS

■指向性/3段階マルチパターン(無指向、双指向、単一指向)
■周波数特性/20Hz〜20kHz
■出力インピーダンス/200Ω
■SN比/87dB(1kHz、1Pa)
■最大SPL/147dB(THD=1%、1kΩ、PAD未使用時)
■感度/−36dB(1V、1Pa)=16mV@94dB SPL(±2dB)
■ダイナミック・レンジ/140dB
■外形寸法/55(φ)×209(H)mm
■重量/860g
■付属品/マイク・ホルダー、ソフト・ケース