DVD-RAMを録音メディアに使った高音質の8トラック・レコーダー - サンレコ〜音楽制作と音響のすべてを届けるメディア

FOSTEXDV824

南雲和晴（ハイパーソニック）

最近本当にテープ・メディアものが減ってきたと思っていたら……今回のターゲットは録音メディアにDVD-RAMを使った８トラック・レコーダーのFOSTEX DV824。果たしてどんな機材なのか見ていこう。

映像との同期を見据えた
多彩な入出力端子を装備

フロント・パネルを見ると2Uのサイズにコンパクトにまとめられたインターフェースが目を引く。スイッチとロータリー・エンコーダーによる操作が可能で、トランスポート・コントロールはプロ仕様をさりげなく主張する自照式プッシュ・スイッチが採用されている。液晶ディスプレイはコンパクトな割に表示に工夫がされており、必要な情報はすべてここで把握することができる。右ブロックには機能の選択や、ファイル名などアルファベットを入力するためのボタンが装備されている。一番右にはロータリー・エンコーダーがあり、各機能の設定をスピーディに行うことができる。左ブロックにはDVD-RAMのドライブが配置されており、その下に電源スイッチやUSBポート、モニター・スイッチャーが装備されている。通常このタイプのMTRはコンソールと相互接続するので、ヘッドフォン端子は装備されていないのが普通なのだが、本機では各トラックを選択してモニタリングできるのが珍しい。次にリア・パネルを見てみよう。アナログ入出力はなんと全部XLR端子のバランス仕様というところに好感が持てる。また、AES/EBU、S/P DIFで切り替え可能なデジタル入出力も搭載している。ほかにはデジタル機器に欠かせないワード・クロック入出力や、映像編集機器との連携プレイも可能な９ピン・シリアル・ポート、リモート・コントロール用のパラレル・ポートに加えてEthernet用のコネクターまで装備されている。実際に録音してみよう。まずSAFE/RDYボタンを押すとLEDが点灯して録音準備完了。必要なトラックだけ録音待機状態にしたいと思い説明書を読んでみたのだが、２トラックならばトラック１と２、４トラックならば１〜４と、録音はあらかじめ設定されたトラックでしか行えない。また、シリアル・ポート接続時に１度録音を始めて停止すると、タイム・コードが打たれたファイルが作成される。つまり映像との同録向けのMTRなのだ。フォーマットとしては24ビット／96kHzで４トラックまで同時録音が可能なので、マスター・レコーダーとしても使うことができる。しかし、本機は“録る”ことに全力を尽くしているレコーダーなので、ハード・ディスク・レコーダーのように本体でのデータ編集はできないのであしからず。AVIDの映像編集ワークステーションに取り込むためのALEファイルを作成することができるのも、“映像向き”と書いた理由の１つだ。ちなみに本機ではメディアに取り込むファイル形式はBWFフォーマットなので、DVD-RAMから直接ファイルを取り出してDIGIDESIGN Pro ToolsなどのDAWへ取り込むことが可能。コンピューター側にDVD-RAMドライブが無い場合は、本機のEthernetのFTPサーバー機能を利用してネットワークからデータを移すこともできる。またオプションのIEEE1394/USBカードを実装するとコンピューターにダイレクトにDVD-RAMをマウントすることも可能になる。さらにDV824には非常に便利な機能が付いているのを発見した。それはオプションのハード・ディスクを内蔵していると、DVD-RAMとハード・ディスクを同時に使用して録音が可能ということ。つまりバックアップを取りながら録音できるという素晴らしい機能なのだ。

非常にハイファイで
クセの無い音質

実は先日、幸運にも現場で本機を使用する機会があったのでサウンド・チェックも行ってみた。スタジオではコンソールから直接本機に録音してプレイバックをチェック。24ビット／96kHzモードで2tr収録をしたが、アタックをしっかりとらえ、キレのある申し分ないサウンドであった。高域も綺麗に伸びており、低域の適度な締まりも好感が持てる。これはAD/DAコンバーターの質が高いことを物語っている。非常に面白い作りの機材である。基本的に映像同録やポストプロダクション用レコーダーとしての性格が強いが、24ビット／96kHzのマスター・レコーダーとしての側面もあるので、使い方次第ではいろいろと活躍してくれるだろう。個人的には気軽に使える感じが良く、“ポストDAT”として使いたいと思った。サラウンド・ミックスのマスター・レコーダーとしてもいける。音質もクセが無く非常にハイファイで、もっと時間をかけてじっくりと料理してみたい逸品であった。