万全なノイズ対策でライブから録音まで幅広く活躍するコンデンサー・マイク

CADC195

名機“E100”の発表で一躍世界に名をはせたCADですが、私がCADを知ったのは10年以上前です。何か良いボーカル用コンデンサー・マイクが無いかと探していたときに友人に薦められ、その音とルックスに一目ぼれをして即買いをしたのが初めての出会いでした。今回そのCADから新しくボーカル用ハンドヘルド・コンデンサー・マイクC195が発表されたので早速チェックしてみたいと思います。

フラットな周波数特性と丈夫な構造で
ボーカルから楽器までマルチに対応


ハンドヘルド・コンデンサー・マイクというと、繊細で手荒に扱うとすぐ壊れてしまいそうなルックスをしている製品も多いのですが、C195は見るからに丈夫で安心して使用できそうです。これならいろいろと試してみたくなります。早速、手に取ってみるとちょうどよい重量感で自然と手のひらになじみます。グリップ部にラバー素材のような加工が施されており、ライブ中に汗で手が滑ってマイクを落とすという事故も未然に防ぎ、激しいステージングにも対応できそうです。万が一落としてしまったとしても、CAD独自のグリル・スクリーンは衝撃に強い構造になっており、グリルの変形による音の変化を最小限に抑えることができます。また、ラバー・ショック・マウントによりカプセル部とグリップ部分がアイソレートされているので、ハンドリング・ノイズやケーブル・ノイズ、スタンド・ノイズなどを防止します。さらに特筆すべき点は、グリルの内部に3種類のスポンジを使用した多段ポップ・フィルターの搭載でしょう。これにより吹かれを防止しているのです。このようにC195からは、細部までのさまざまな工夫と配慮がひしひしと伝わってきます。最近のハンドヘルド・コンデンサー・マイクの指向性は単一指向でも狭角になっているものが多いのですが、このC195の指向性は広過ぎず、狭過ぎず使いやすいものになっています。ステージで使用するときの必要最小限の広さなので、ハウリングを起こしたり、周囲の無駄な音を拾ってしまったりすることもありません。目的の音を、コンデンサー特有のクリアでリニアな音質で確実に再現することができます。またSN比が良いばかりか近接効果も少なく、マイクから離れていても音やせしたりすることもありませんでした。さて、細かいことはここまでにして、マイクは音を出して聴くのが一番です! 早速、ステージで女性ボーカルに試してみましょう。やはり思った通り吹かれることもなく、低音も緩やかにロールオフされます。また、子音が耳に付くこともありませんでした。個人的には3kHz辺りが少し足りないかとも思いましたが、この辺りはどっちにしろEQで切ることも多いのでさほど問題ないでしょう。男性ボーカルにも試してみましたが、素直な質感でかなりの好印象です。こんなに魅力的なマイクなら、エンジニアとしてほかの楽器に試さないわけにはいきません。まずは、アコースティック・ギターのホールから15cmほど離れた所にマイクを立てて音を拾ってみました。するとどうでしょう、ほかのマイクではハウリングを起こしてしまうくらいの音量を出しても、ハウリングどころか楽器が目の前にあるようなリニアな音がそこにあるじゃないですか。サウンド・チェックのときには、フェーダーを上げただけで5秒とたたないうちにミュージシャンにOKを出してしまいました。興奮もさめやらぬまま、パーカッションの小物類にも使ってみることにしました。いろいろな音色を録るために、非常にフラットなマイクが必要とされるポジションにもかかわらず、C195はまたしてもEQ要らずのサウンドを見せつけてくれました。周波数特性表を見ても、このマイクは非常にフラットで原音に忠実なサウンドを表現しているのだと納得しました。

しっかりとした定位感を持ちつつも
奥行きのあるナチュラルなサウンド


ここまで来れば次は録音です。知り合いのスタジオにC195を持って行きチェックしてみました。スタジオではC195とともに、ステージでもよく使われる他メーカーのコンデンサー・マイクをアコースティック・ギターのネックの根元から20cm離してセッティングをした状態で弾いてもらいました。率直な感想は、アルペジオではC195はダイナミック・レンジの関係と3kHz辺りがやはり弱いせいか、ハイファイ感が若干ですが足りないような気がしました。しかし、ストロークはC195の方がうるさ過ぎずにアコギのボディと弦のちょうどよいミッド感を得ることができました。さらに、たまたま女性アーティストの仮歌録りがあると言うので、こちらでは宅録でもよく使用される数万円台のコンデンサー・マイクとC195で試してみることにしました。その結果、C195の自然な音質には今回も納得させられましたが、驚いたことにリファレンスに使用した、より高価なマイクよりも定位感がよいのです。それでいて奥行きや自然な広がりもあり、レコーディングで求められるクリアでナチュラルな音質を、何もしなくても得られるとスタジオのエンジニアと2人で感心してしまいました。短時間のセッティングで存在感のある素晴らしい音質を表現できるこのマイクさえあれば、音を前に出したいのにプラグインがうまく使えない人や、最近流行のインターネット・ラジオのための録音をしたい人にも、買ってすぐに力を発揮する最適なマイクではないでしょうか。C195はライブにはもちろん、高いクオリティを要求するボーカルや楽器のレコーディング、自宅での録音まで幅広く使用できナチュラルなサウンド表現を可能にします。こんな魅力的なコンデンサー・マイクを低価格で出せるなんて、さすが名機を生んだ会社のなせる技ですね。
CAD
C195
18,900円

SPECIFICATIONS

■指向性/単一
■周波数特性/50Hz〜18kHz
■インピーダンス/500Ω
■ダイナミック・レンジ/110dB
■ノイズ・レベル/22dB以下(A-weighted)
■外形寸法/45(φ)×172(H)mm
■重量/282.5g