USB接続によりエフェクトのエディットも可能な、5ch仕様の高機能DJミキサー

ECLERNuo 5

最近、個人的によく名前を聞くスペイン(!)のメーカー、ECLERから新作のDJミキサーが発表されました。本機は"DJユースとしての仕様はもちろんのこと、各種音楽制作にも十分な力を発揮するオーバー・クオリティを目指してデザインされました"と取扱説明書に明記してある通りに、多くのオーディオ入出力から内蔵エフェクト、DJミキサーには珍しくMIDIアウトまでをも標準搭載。それに加えて"世界初"のUSB接続により、コンピューター上で内蔵エフェクトのエディットまで可能という非常に多機能なこのモデル。早速その可能性を検証してみたいと思います。

豊富な入出力端子を装備し
さまざまな使用環境に対応


まずは基本的なスペックから。入力部ですが、フォノ4系統、ラインがステレオ6系統、そしてマイク入力が1系統用意されていて、チャンネル数は計5chという仕様になっています。マイク入力はXLR/TRSフォーンのコンボ・ジャックになっていて、DJミキサーとしては珍しいと思うのですが、ファンタム電源も装備しています。続いて出力部は、XLR端子のメイン出力に加えRCAピン端子のサブ出力も用意されています。また録音機器を接続できるRCAピン端子のレコーディング出力を2系統、それにヘッドフォン端子まで2系統あります。それぞれ2つずつあると何かと便利なので、この辺りはうれしいところです。さらに外部のエフェクターやサンプラーなどを接続できるRCAピン端子のエクスターナル・ループが1系統とMIDI出力まで装備。加えて内蔵エフェクトをコンピューター上でエディット(後述)する際のデータ通信用USBポートまで備えられており、DJミキサーとしては、かなり充実した入出力だと言えるのではないでしょうか。と、大まかな入出力スペックの検証を終えたところで、次は実際に使用してみます。ターンテーブルをch2のフォノ端子に立ち上げて再生。まずはEQを動かしてみると、なんというか非常に上品な印象。でもTREBLE、MID、BASSの各つまみを全部カット方向に回し切ると無音になるほど効きます。なるほど、各帯域の設定とカーブが絶妙なのでしょう。つまみ自体が大きいのは非常に好印象。分かりやすいし、ひねりやすいです。クロスフェーダー部は、フェーダー・モード/スイッチ・モードの選択やフェーダー・カーブの調整、CUT-IN TIME(音の"入り"の部分の微調整機能)まで好みによってセッティングでき、もちろんリバース・スイッチまでしっかり搭載しているさすがの充実仕様。チャンネル・フェーダーは、縦フェーダーが4系統+つまみが1系統(ch5)の計5系統あり、縦フェーダーはカーブをSOFTかHARDかで選択可能となっています。

バラエティ豊富なエフェクト群により、
多彩なパフォーマンスが可能に


一通り遊んで次、ということで、内蔵エフェクトへ。ターンテーブルが立ち上がっているch2のFX SENDボタンを押し、パネル右のエフェクト・セレクターで使用したいエフェクトを選択、説明書にはさらに"エフェクト・セレクターのスイッチを押す"との記載が。なるほど、プッシュ型スイッチとつまみが併用なのですね。回して種類を選び、押すと決定。FXインプットのつまみを上げWET-DRYクロスフェーダーを真ん中へ、FX LAUNCHボタンを押して準備万端! ちなみにFX部のほかのつまみの幾つかも併用型で、パラメーターつまみはタップ・テンポ機能として、タイムつまみはディレイなどの長さを倍や半分にできるビート機能としてそれぞれ使用します。肝心のエフェクト音ですが、基本的にはクセの無い音色で僕個人としては非常に好みです。EQ同様にスマートながら、しかし的確に効いている印象。ものによっては結構過激なところまでいけるものもあるので、確かに楽曲制作時にも良い働きをしそうです。特に個人的に面白かったのはボコーダーで、例えば単純なドラムのワン・ループをリアルタイムで加工するなんてのは、出音だけでもいきなり面白くてうれしくなってきます。そしてついに本機の核心部(?)、コンピューターによる内蔵エフェクトのエディットです。付属の専用ソフトEdi:lab(Windowsのみ対応)を使用することにより"エフェクターに含まれるパラメーターもすべて操作可能"となります。このEdi:labを使用したエフェクトのエディットはもう本当に極めて簡単で、おそらく誰が見ても分かるんじゃないかってほどのシンプルな画面です。ここで自分の好きなように各パラメーターを編集した後は、コンピューターのハード・ディスクにはもちろんのこと、Nuo5本体のメモリー領域に設定を記録することができるので、好きな設定をいつでも手軽に呼び出せます。DJミキサーはほんの数年前からですら考えられないほど豊富なラインナップがそろい、さらにそれぞれに進化を遂げています。Nuo 5はそのなかでもかなり独自の進化を遂げた最新鋭の機種だと言えるでしょう。

▲リア・パネル。左よりMIDIアウト、USB端子、アウトプット(RCAピン、XLR)、センド&リターン(RCAピン)、ライン×6(RCAピン)、フォノ×4(RCAピン)

ECLER
Nuo 5
176,400円

SPECIFICATIONS

■周波数特性/10Hz〜30kHz -1dB(LINE)
■出力レベル/0dBV/600Ω1V(OUT 1)
■外形寸法/320(W)×80(H)×370(D)mm
■重量/約5.5kg