24ビット/192kHzに対応した完全ディスクリート構成のパワード・モニター

ROLANDDS-8

今回はROLANDからリリースされた24ビット/192kHz対応のパワード・モニターDS-8をチェックしていく。まず、編集部から送られてきた箱を見ると、なかなかの大きさだ。それに重い。重いというのは欠点でもあるが、MDF素材で重厚に作られたエンクロージャーと、電源部などがしっかりしたパワー・アンプを搭載しているのなら重いのは仕方がない。今回このDS-8に搭載されたアンプはフルディスクリートの自信作ということらしい。このフルディスクリートという言葉に筆者は非常に弱い……いざ、試聴へ。

ハイサンプリング・レートを見据えた
豊かな低域とフラットな高域


早速、筆者のスタジオにあるニアフィールド・モニター用スタンドに設置。まずはアナログ入力で試聴をスタート。音源には、ちょうどマスタリングを終えた声優さんのプロジェクト(筆者がマスタリングまで手掛けた、ピアノ、アコースティック・ベース、ギター、ドラム、パーカッションなど、すべて生楽器を使用したお気に入りの作品)を選択してみる。DS-8を一聴した最初の印象は“モニター・スピーカーらしい音がするな”というもの。分離がよく、ノイズの混入なども発見しやすいはずだ。リップ・ノイズなどもはっきりと聴きとれるし、エンクロージャーの悪い箱鳴りはほとんど感じない。先ほど言った重さがここでは生きているのだろう。パワーも入る。といっても、パワード・モニターだから、正確に言うと大音量でもひずみ感の増加も少なく、大音量でモニターするタイプのエンジニアにも向いていると思う……いいじゃん!がしかし、強いて言えば低域がスッキリしない。といっても足りないわけではなく、むしろ逆。200mmのウーファーで58Hzまで伸びているということなので、さすがに少し無理をしているのか、中高域が非常にモニター・スピーカーらしい高音質なのに対し、低域の解像度が少し甘い。ベースとキックがうまく分離しない感じなのだ。というわけで、インシュレーターなどを使用してチューニングを行ってみた。DS-8を生かすには、かなりがっしりした台の上に、壁面からできるだけ離した状態で設置した方がよさそうだと感じる。幾つかのチューニング後、さらに試聴を続けてみた。低域は傾向として変化していないが、最近はサブウーファーの使用がかなり増えてきて、こういった低域特性での音作りが実用的な面もある。DS-8はそういう声を取り入れたのだろうし、オーディオ的にもかなり楽しめる豊かな低域だと言えるだろう。高域もスペック上の24kHz辺りまでかなりフラットに伸びていると感じる。こういった部分はハイサンプリング・レートでの制作を見据えた設計だろう。音質以外で本機の工夫と言えば、電源スイッチをフロント面に付けたこと。あまり機材に詳しくない知人が“いちいち電源を入れるためにスピーカーのリア・パネルでオン/オフするのが嫌だ”と言っていたのを思い出した。こういった細部も大切なポイントだし、レベル調節のつまみもフロントに付けて欲しかったなあと思ったりもする。

高品位なデジタル入力は
カスケード接続も可能


さて、本機のトピックである24ビット/192kHzに対応したデジタル入力を試してみよう。本機にはS/P DIF(オプティカル&コアキシャル)とAES/EBU(XLR)のデジタル入力端子を搭載しており、L/Rどちらの信号を受けるかをスイッチで切り替えることが可能だ。またS/P DIFコアキシャルのTHRU端子もあり、もう1台のDS-8とカスケード接続して使うこともできる。つまり出力側の機材のデジタル出力は1系統あればいいわけだ。ちなみに、筆者はオーディオ・インターフェースにLYNX STUDIO TECHNOLOGY Lynx Twoを使用しているが、192kHzのデジタル出力はほとんど使用したことがない。24ビット/192kHzをデジタルで受けられる相手が少ないからだ。肝心の音の印象であるが、DAコンバーターに関しては最新の製品でもあり、力の入ったアナログ部と同じく高品位なものだと思う。オーディオ・インターフェースから直接、デジタル・ケーブル1本でつなげられるので、シンプルでピュアなサウンドを得やすいし、例えばクラシックなどをステレオ192kHzで録っているような人で、デジタル出力をダイレクトにモニターしたい人などに最適だろう。ただ、デジタル信号はアナログと比べて、アウト側でボリュームを絞ると音質(使用ビット数)が落ちる。そのため、送り側では音量は最大にして、DS-8側で音量を設定したい。先ほどレベル調整のつまみもフロントに持ってきてほしかったというのは、そのためでもある。いろいろ聴いていくと、DS-8はニアフィールド・モニターではあるが、スモールというより、ラージ&スモールの兼用であり、なおかつモニター&リスニング兼用と考えると非常にいいバランスの製品だと思えてきた。プライベート・スタジオでの使用を考えての小音量時の再生バランスの良さも(筆者には大音量よりも良く感じる)好感が持てるし、24ビット/192kHz対応デジタル入力と合わせて現在のニーズを良く考えた製品に仕上がっていると感じた。
ROLAND
DS-8
オープン・プライス(市場予想価格:55,000円/1本)

SPECIFICATIONS

■タイプ/2ウェイ・バイアンプ方式パワード・モニター
■キャビネット/3/4インチMDF(バッフル:1インチMDF)
■スピーカー構成/防磁型25mmソフト・ドーム・タイプ(HF)、防磁型200mmポリプロピレン・コーン・タイプ(LF)
■周波数特性/58Hz〜24kHz(±3dB)
■クロスオーバー周波数/2.3kHz(アクティブ4次)
■アンプ出力/40W(HF)、80W(LF)
■入力端子/アナログ入力(XLR/TRS標準タイプ)、デジタル入力(XLR、オプティカル、コアキシャル)、デジタル・スルー出力(コアキシャル)
■外形寸法/254(W)×406(H)×367(D)mm
■重量/17.2kg(1本)