高いSN比&高出力を誇るステレオ仕様のアクティブ・リボン・マイク

ROYERSF-24

リボン(ベロシティ)マイクについてあまり知らない方も多いでしょう。しかし、実は1940〜60年代の多くの録音がこのリボン・マイクを使ってレコーディングされたもの。最近ではデジタルのある種“固い音”が一般化している中、ローファイ&レトロな音を追い求める人が多くなり、リボン・マイクについても復刻版として昔のタイプの製品が再発売されるなど、一部の人たちの間で現在でもひそかに使われているのです。中でもROYERは復刻版としてでなく、新製品としてリボン・マイクをリリースしており、海外を中心にナチュラルな音色と扱いやすさで評判の良いメーカーです。では早速、ステレオ仕様のリボン・マイクSF-24をチェックしていきましょう。

従来のリボン・マイクを改良し
高いSN比&耐音圧を実現


リボン・マイクというのは特にオールドものの場合、交換パーツが現存しないことも多く、取り扱いに注意が必要です。音を気に入っていても気軽に使えないのが現状なのです。例えば、間違ってファンタム電源を入れると壊れる、横に寝かせて保管するとリボンが伸びてしまう、大きい音に弱いなど、いろいろ使用上の注意事項があります。それに加え、マイク自体のゲインがものすごく小さく、ヘタなマイクプリだとSN比がとても悪くなってしまうという欠点もあります。現に筆者もROYERのR-121というリボン・マイクを2年以上も使っていますが、録るものによって音は良いけど、SN比の問題で使うのを断念するということが何度もありました。しかし、SF-24はそういったリボン・マイクの欠点とされていた部分を改良し、ステレオ仕様にした製品なのです。改良のポイントを挙げると、特注のローノイズFETを内部回路に採用して高いSN比と高出力を達成しており、なんと!48Vファンタム電源仕様のアクティブ・タイプになっています。加えて、最大SPLが130dBという高音圧に耐えられるのでコンデンサー・マイクと同感覚で使えるわけです。SF-24はステレオ仕様ということで、2つのリボン・マイクを上下に配置してあり、センターから45°ずつの角度がつけられ、X-Y方式とM-S方式で収録が可能です。もちろん、どちらか片方を使えばモノラルとして普通のマイクと同じように使うこともできます。パッケージも豪華で、ショック・マウント、スタンド・アダプター、専用ケーブルのほか、これらのアクセサリーとマイク本体を収めるアルミ製の専用ハード・ケースも付属。マイク本体も頑丈に作られており、ずっしりとした重量も含め、プロが使うものとしてふさわしい作りになっています。また、専用ケーブルはSF-24本体が5ピンのXLR端子でステレオ出力仕様なので、それを通常の3ピンのXLRが2本のステレオ仕様で接続できる変換ケーブルと、長めの5ピンXLRの接続ケーブルという2タイプが付属しています。

最近のマイクでは絶対に出ない
耳に痛くなく温かいサウンド


ここからは一番気になる音を確認していきましょう。通常“リボン・マイクの音”と言われる場合、“温かい音”を指すと思いますが、SF-24を最初に聴いた印象もまさしくその通り。全く痛くない音です。かといって抜けが悪い音ではなく、ちゃんと高域もあり、実際に耳で聴いている感じをそのまま拾っている印象です。特定帯域の出っ張りをあまり感じさせないので、あらためて最近のマイクがハイ上がりなことが分かります。では、SF-24がステレオ仕様ということで、ストリングスのレコーディングで試してみましょう。今回は6/4/2/2編成にオフマイクで使用したのですが、コンデンサー・マイクと同じようにマイクプリでゲインを調整でき、SN比にも全く問題はありません。音的にはフェーダーを立ち上げた瞬間“いい感じだな〜”というもので、ストリングスの嫌なギスギス感も無く、何だかエンニオ・モリコーネの映画音楽のストリングスを聴いているような感覚です。変な分離感も無く、ステレオ・イメージも広がり過ぎない感じです。これはレコーディングしたストリングスがバラードものだったことも関係あるのかもしれませんが、もうちょっと派手な楽曲でも音がナチュラルな分、十分にEQで作り込める範囲だと思います。次に、ROYERのリボン・マイクは海外でよくエレキギターに使われているそうなので、試してみます。エレキギターの場合はステレオではなく、上の方のマイクだけを使い、モノラルでのチャレンジです。オン・マイクでアンプのサランネットから指3本ぐらい離して録ったのですが、音の印象はストリングスのときと同じで温かいのです。特にクリーン系サウンドでは通常アンプ側で高域を上げると痛い音になることが多いのですが、SF-24ではそういったこともありません。雰囲気のある音で好印象です。中低域は特に良く、変なブースト感も無く、粒がハッキリしています。この印象はディストーション・ギターでも同様ですが、若干、中高域の音の押し出しが優し過ぎるかなという印象です。しかし、SHURE SM57などのダイナミック・マイクとうまく混ぜてみるとお互いの弱い部分を補っている感じで、ノーEQでも十分に使える音を録ることができます。また、ドラムのオーバー・ヘッドで試したのですが、印象としては特にジャズ的な要素が多い楽曲では金物の音が変に固くなく、EQでちょっとハイエンドを伸ばしてあげるだけで良い感じです。SF-24のナチュラルな温かい音は最近のマイクでは絶対出ない、何とも気持ちの良いもの。もともとリボン・マイクは双指向性ということもあり、単一指向のものでは得られない空間のニュアンスが良くとらえられています。筆者もリボン・マイクはよく使いますが、やはりアクティブ・タイプの本機はSN比やヘッドアンプとのマッチングを考えると非常に有利に使えます。ステレオ仕様ということで、マッチングを考える必要もありませんし、汎用的にいろんな用途で使うという感じではなくとも値段次第で即買いしたいほどです。SF-24はデジタル時代だからこそ、必要とされているマイクなのかもしれませんね。
ROYER
SF-24
オープン・プライス(市場予想価格:504,000円前後)

SPECIFICATIONS

■指向性/双指向
■周波数特性/30〜15kHz±3dB
■エレメント/1.8μmアルミニウム・リボン
■磁石/希土類ネオジウム
■感度/−38dB(1V/pa±1dB)
■ノイズ・レベル/18dB未満
■出力インピーダンス/200Ω未満
■ロード・インピーダンス/1.5kΩ以上
■最大出力音圧/130dB以上
■外形寸法/270(H)×39(φ)mm
■重量/531g
■付属品/専用アルミ・ケース、ショック・マウント、スタンド・アダプター、専用マイク・ケーブル