コンパクト/低価格で驚きの高音質を実現したコンプ&EQ内蔵1chプリアンプ

SM PRO AUDIOTB-101

小さいものが好きだ……ってフィギュアとかの話ではなくていわゆるアウトボードのお話。このところ“小柄ながらよーく働きまっせ”的なアウトボードが続々と登場しており個人的に楽しい展開になっています。と思っていたら今回、SM PRO AUDIO TB-101のレビューのお誘いが。あーら、小さくてしかも好みのルックス。さてその働きっぷりは? 早速チェックしていきましょう。

録音現場用に考え抜かれた
充実のスペック


このSM PRO AUDIOというメーカー。実は友人からここのコンデンサー・マイクが驚くほどの低価格にもかかわらず、非常に存在感あるサウンドを持っていると聞いていてずっと気になっていたのですが、このTB-101もまずはその価格に驚かされます。ハーフ・ラックの中にオプティカル・コンプとEQを搭載したモノラル仕様のこのプリアンプ。センスを感じる赤いフロント・パネルの中央にしっかり“TubePreamp”と書き込まれていることから分かる通り、真空管12AX7を内蔵しています。入出力端子はフロント・パネルに楽器用のHi-Z入力(フォーン)が1つ、リア・パネルにはマイク用のインプット(XLR)とアウトプット(XLR、フォーン)が用意されています。リアにはファンタム電源(48V)のオン/オフ・スイッチやフェイズ・スイッチもある本格派っぷりで、こちらの期待も膨らみます。次にフロントに用意されたツマミやスイッチ類を見ていきましょう。左からまず−20dBのPADスイッチと入力レベル調節ツマミがあり、コンプのオン/オフ・スイッチとコンプレッション量を調節するツマミ、アタック・タイムとリリース・タイムそれぞれの早さを2段階で切り替えるスイッチが並びます。そして±16dBの増減が可能な3バンドEQ(中心周波数は80Hz/1.8kHz/8kHz)のツマミが用意され、最後に出力レベル調節ツマミがあります。このほかにもフロント・パネルには入力信号のレベルを表示するLEDメーターや各スイッチの上部にオン/オフを示すランプが用意されていたり、EQのツマミはクリック付きだったりと、なかなかの“現場感分かっています”的な仕様となっています。

独特の存在感のある音を
手軽に得ることが可能


では肝心の働きっぷりはと、まずはちょうど頼まれていたアコースティック・ベースの録音にマイクプリとして使ってみることにしました。アコースティック・ベースに立てたAKG C451EBを本機のマイク・インに入力し、そこからDIGIDESIGN 888 │24 I/Oに直接送って録音。コンプはアタック/リリース共に早くしてうっすらとかけ、EQはフラットな設定にして試してみましたが、これがなかなか好感触です。中域が“グッグッ”と持ち上がってきて、良い意味でにじみ感があります。マイクについて聞いていた話と同様の、独特の存在感がある色っぽい音です。チューブっぽいというよりビンテージ機材のようなパワーが感じられるサウンドで、打ち込みのオケに非常に混じりやすい印象の質感でした。別の日にCOLDFEETのデモ録音があったので、相方LORI FINEの歌録りにも使ってみました。普段僕のスタジオではAUDIO-TECHNICA AT4050とGRACE DESIGN Model 201、TUBE-TECH PE1B、UREI 1176という組み合わせで歌を録っているのでこのセッティングで一度録った後に、AT4050からTB-101のみを介して収録という極端な比較にチャレンジ。このときはコンプ強め(アタック/リリース共に早いモード)、EQは80Hzと8kHzをややブースト、入力も少々ギリギリに突っ込んでみました。当然歌い手との相性もあるでしょうが、ベース同様かなりの好印象です。通常のセッティングで録音したものと聴き比べるとハイファイさは多少落ちるものの、存在感のある固まりのようなサウンド。オールドNEVE系のプリアンプを苦手とするLORIにも大好評でした。なぜか玉置浩二氏を思い起こさせるような中高域のチリっとしたにじみ感に加え、かつ決して奥に行かずにむしろせり出してくるようなガッツのある感じを持っているのが印象的です。ますます自信を深めた僕はさらに翌日、今年10月リリース予定のさるプロデュースもののプリプロにも使ってみました。このトラックは“エレポップ+ドラムンベース”という感じの曲調で、なかなかうまく落ち着かないROLAND TR-808のロング・キック的ベースを本機に通してみることに。入力レベルはクリップ寸前まで上げ、コンプも強め、そしてEQは80Hzをがっつりカット、1.8kHzをかなりブーストしました。するとあーら、かなりナイスな、レベルを食い過ぎずに聴きやすく、かつ圧力あるベース音を作ることができました。ここでもミッドローあたりの押し出しの存在感がキモとなっています。この1週間こうしてさまざまなシチュエーションで本機を使い倒してみましたが、その結果はそのどれもが採用され作品の一部になります、という事実でお答えしましょう。本機の、マイクでもラインでも“使える質感”を簡単に得られるという便利さは宅録でも重宝するでしょう。特に入力レベルを突っ込み気味に録音した際の独特のにじみ感は非常に音楽的なもので印象に残りました。何やら本機のステレオ・バージョンTB-202も間もなく国内販売が開始されるらしく……うーん、気になるメーカーです。

▲リア・パネル。左からアウトプット(XLR、フォーン)、ファンタム電源スイッチ(48V)、フェイズ・スイッチ、マイク・イン(XLR)が並ぶ

SM PRO AUDIO
TB-101
25,200円

SPECIFICATIONS

■入力インピーダンス/3kΩ
■ゲイン可変幅/10dB〜60dB
■周波数特性/6Hz〜20kHz(ライン)、8Hz〜20kHz(マイク)
■全高調波歪率/0.05%(Unweighted)
■SN比/>90dB
■外形寸法/201(W)×44(H)×155(D)mm
■重量/1.1kg