低価格ながら堅実な処理とAIRフィルターでの音作りが魅力の2chコンプレッサー

TAPCO BY MACKIE.Squeez SQ・2

今回紹介するのは、宅録マニアやPAエンジニア必見のコンプレッサー/リミッター/ゲート・プロセッサー、MACKIE.の兄弟ブランドTAPCOのSqueez SQ・2です。TAPCOはMACKIE.のノウハウを生かし、高品質な製品をより低価格で提供し、何よりも疲労度の高い過酷なツアーでも、長年にわたって連続使用できる頑丈な設計で知られています。PAエンジニアはもちろんのこと、ギタリストやこれからプロを夢見るボーカリストたちにとっては十分手の出る価格のコンプレッサーと言え、ライブや自宅でのレコーディングなどで大活躍する製品だと思われます。

原音に忠実な音質と
しっかりとした処理能力を兼備


まずは本機の概要から紹介していきましょう! 1Uサイズでラック・マウントができ、電源部は115V〜230Vまで対応。電圧を選択するだけで世界のほとんどの場所ですぐに使用できます。リア・パネルには、2つのチャンネルにそれぞれバランス/アンバランス対応のTRSフォーン入出力と、XLRライン入出力を実装。さらに各チャンネルごとにサイド・チェイン端子も装備されています。フロント・パネルのゲイン・リダクション・メーターは、8段階の精密なシグナルを用い、視覚的に把握しやすくなっています。ゲート部にスレッショルド、コンプレッサー部にスレッショルド、レシオ、アタック、リリース、アウトプットと、基本的なパラメーターが用意されているほか、ソフト/ハード・ニーのコンプレッション・カーブを自動的に設定してくれるAUTOスイッチや、ゲート/コンプレッサーのバイパスを瞬時に行えるCHANスイッチを装備。さらに、本製品の最大の売りである、コンプレッション後の高周波帯域を整えるAIRフィルター機能のツマミが配置されています。このAIRフィルター機能によって、1960〜70年代のクラシックなボーカル・サウンドを再現できるそうで、この価格ながら何ともただならぬ予感がします。これらのパラメーターがフロント・パネルに2チャンネル分並んでおり、見た目は非常にシンプルで分かりやすい仕様と言えます。早速使用してみましょう!まずは本機にCDの再生音を入力し、バイパス状態にした素の出音をチェックしてみました。元音との差がなく、音質的な問題はないようです。どうしても価格による先入観があったのですが、実際に聴いてみると音はいいと思いました。次に、ちょうどチェック前日にレコーディングしたトランペット・ソロや、キックのトラックを本機に通し、コンプレッションしてみます。印象は、DBX 160などコンプの名機に近い感じを受けました。ガッツリかけてひずませるというよりも、しっかりとコンプレッサー/リミッターとしての役割を果たし、しかも非常に効果も分かりやすいタイプです。一方、ゲート部では完全に小さな音(ノイズ)のみをシャット・アウトできるほど、細かい調整が可能になっています。例えば、自宅で生録する際に入るかすかなエアコンのノイズ除去などに重宝すると思われます。ツマミもスレッショルドだけなので面倒な設定要らず。慌ただしいPA現場などで使う場合は、設定時間の短縮に一役買ってくれることでしょう。また、肝心のAIRフィルター機能ですが、このツマミを上げていくと12kHz辺りの表情が豊かになり、空気感が増すという効果が得られました。AIRツマミを極端に上げても耳に痛い帯域が持ち上がることもなく、音に輝きをもたらすという言葉がぴったりな感じです。

トータル・コンプにも使用可能
特にライブ現場で効果を発揮


さて、CDや2ミックス音源を本機に入力して試しているうちに、この機器の素晴らしさに気付きました。レコーディングやライブでしっかりと使用できることはお分かりいただけたと思いますが、より本機のポテンシャルを引き出すには、トータル・コンプとして使用するとよいと思われます。特にトータル・コンプ時のかかり方が自然で、奥行き感も出て、よりパワフルなミックスになる傾向にあります。曲のダイナミズムを損なわず、音圧を稼ぐことが容易にできるのです。AIRフィルターも、楽器単体にかけるよりも2ミックスにかける方が効果的に感じました。特にドラムがグッと前に出てくる感じが印象的です。この価格でトータル・コンプが手に入ると考えたらワクワクしますね。特にクラブなどでトータル・コンプとして使用する場合、本機1台でコンプレッションができてゲート機能も付いているので、余計な機材/回線を使う必要がないのは大きなメリットです。AIRフィルター機能もクラブで十分生きると思います。この機能1つでクラブの箱鳴りの印象もかなりコントロールできるのではないでしょうか。コスト的な問題も十分クリアできているので、ライブPAの現場でこのコンプレッサーがずらりと並ぶ日も近いと思います(2チャンネル仕様ですし♪)。しかも、余計なものが一切付いていないので、万が一電源が落ちてしまっても再び電源を入れれば、瞬時に音が復旧します。このメーカーは耐久性にも高い信頼性があるので、その辺りも全く心配ないでしょう。本機はドラムなどを極端につぶすようなコンプではないと実感しました。それこそどんな録音でも使え、高級機ではないにしろコンプが必要だと思う場面にすぐに対応できる製品ですね。AIRフィルター機能の部分も“うんうん、なるほどこういう高域が足されるのね”と、初めは軽い印象でしたが、使っていくうちにその効果を実感することができました。DIGIDESIGN Pro ToolsなどDAWソフトの影響で、せっかく手に入れたビンテージ機器がすっかりホコリをかぶっているという方も多い昨今。高いお金を出せば、良いサウンドが得られる時代ではないんですね。そういう意味では、Squeez SQ・2は低価格ながら、“しっかりと使える”コンプレッサーだと思いました。

▲リア・パネル左部には115V/230Vの電圧切り替えスイッチを装備。右部の端子はCHANNEL 1/2共に、左からアウトプット&インプット(XLR、TRSフォーン)、サイド・チェインとなっている

TAPCO BY MACKIE.
Squeez SQ・2
21,840円

SPECIFICATIONS

■周波数特性/20Hz〜20kHz(+0、−1dB)
■最大入力レベル/+21dBu
■THD+N@1kHz,+4dBu/0.05%(通常)
■クロストーク@20kHz/−85dBu未満
■同相信号除去比/60dB以上
■外形寸法/483(W)×44(H)×216(D)mm
■重量/3kg