サンプラーなど豊富な機能に加え高精度なスクラッチも可能なDJ用CDプレーヤー

TASCAMCD-X1700

クラブで使うDJ用CDプレーヤーにターンテーブルと同等の機能(スクラッチなど)が導入されてから4〜5年が経ちます。技術の進歩というのはスゴいものですね。もうほとんどレコードをスクラッチするのと何ら変わりないじゃんという感じですから。で、今回のTASCAM CD-X1700は、結構早い時期からクラブで活躍していたタイプのDJ用CDプレーヤーの最新版。一部の機能を取り除いた兄弟機種CD-X1500との同時発売です。僕も最近はDJプレイにCDを使いますが、正直なことを言うと、このタイプのものは使い勝手がよく分からないために敬遠していました。すいません。しかし、このレビューを通してその真の実力の程はどうなのかと、かなり期待しております。

3種類のエフェクトを搭載し
ボタン一発でテンポへの同期も可能


CD-X1700は2Uサイズの本体と、同じく3Uサイズのリモート・コントローラーからなるDJ向けデュアルCDプレーヤーです。リモート・コントローラーでの操作が本体と連動するわけですね。リモート・コントローラーのトップ・パネルには、ジョグ・ダイアルやテンポ・スライダーなどDJ用CDプレーヤーではおなじみの操作系が並んでいます。本体にはアナログの出力のほかにコアキシャルのデジタル出力(44.1kHz)も装備。この辺りはクラブでのDJプレイ以外にレコーディングでの使用も考えられて設計されています。兄弟機種であるCD-X1500の機能に加えて、左プレーヤーと右プレーヤー(DISC1、DISC2)それぞれへのサンプラーの搭載、またエコーやフランジャー、フィルターなどのデジタル・エフェクトも装備しています。まずはこの辺から遊んでみましょうか。こういったDJ用機材というのは取扱説明書を見ないでどこまでいじくり倒せるかが大事。取りあえず真っ先にボタンを押したのがエコーなんですが、むむっ、なかなかいい感じです。音色もエグくなくて、フィードバックもナチュラルに伸びています。この調子でほかのエフェクトを試してみると、フランジャーもフィルターのかかり具合も変にデジタルくさくないし、よく考えて作られているという感じです。単体のエフェクターと比べるとさすがにその差はありますが、操作性がシンプルだし、DJプレイの際に"何かちょっと味付けしたいなぁ"などと思ったときにサラッとかけられるのがいいですよね。さらにエフェクト・ボタンの横にあるFX SYNCボタンを押すと、後述する自動検出されたBPMにシンクしたエフェクトが勝手にかかってくれるのもポイント。曲のキメの部分でポチっとボタンを押すだけでオリジナリティあるサウンドに仕上げることができるわけです。ということで、本製品には再生中の曲のBPMを自動で検出する機能が付いています。曲をプレイするとすぐにTAPキーの上に付いたLEDが4分音符のタイミングで点滅し、またディスプレイにも数字でBPMが表示されます。さらに、手動でのBPM入力もできまして、これは自分で音を聴きながら4分音符のタイミングに合わせてTAPキーをたたいて入力するもの。ここからさらに細かな微調整はジョグ・ダイアルをクルクルしながらサクっと合わせていくことができるわけですね。このTAPキーを使った数字入力は、自分の好きなタイミングでできるので、BPMを合わせる用途のほか先程のエフェクト・タイムを変えたりするのにも使えます。ちょっと凝ったエフェクト・プレイにチャレンジしたいといったときに役に立ちますね。続いてサンプラー機能も見ていきましょう。1と2それぞれのチャンネルに最大8秒までのサンプリングが可能なので長めのフレーズにも使えますね。これも取扱説明書無しでちょっと触るだけで大体の操作感はつかめます。機能としては通常のプレイバック再生はもちろん、ループ再生やリバース再生も可能。さらにジョグ・ダイアルを回すことでサンプルのピッチ調整もできるので、かなり遊べるしイケています。例えば両チャンネルのサンプラーにネタ物を仕込んでおいて、片方のチャンネルからビートを再生し、そこへ適宜サンプルを重ねてもう一方のチャンネルの曲にはスクラッチを加えてみたりと、やり方によってはすごいプレイができてしまうのです!

別売りスクラッチ・コントローラーで
ターンテーブルでの衝撃プレイが!


今回のレビューにあたってぜひとも使ってみたかったのが、別売りのスクラッチ・コントローラーTT-M1です。これを手持ちのターンテーブルにセットすれば、なんとターンテーブルがジョグ・ダイアルの代わりとして使えるようになるのです。例えばターンテーブル側でスクラッチの動作をすれば、TT-M1を介してそれに連動したCD-X1700からスクラッチ音が鳴るわけです。これはすごい! 今までありそうで無かった衝撃のプレイが可能になるわけです。アナログのターンテーブルに取り付けられるというのがキモなんです。いや〜参りました。皆さん、時代はスゴいことになっていますよ。もちろんジョグ・ダイアルでも十分スクラッチはできますが、私の場合はターンテーブルを普段から触り慣れている分、こちらでやる方が感覚的につかみやすいのです。今回はTECHNICS SL-1200MK2で試してみましたが、もうですね、スゴすぎて笑います。ぜひとも皆さんも2台のターンテーブルでガシガシとコスってみてください。その反応の良さには驚くはずです。今回のCD-X1700。別売りのコントローラーTT-M1も含めて、デジタルとアナログの利点をうまくブレンドさせていますよね。これ1台で十分に遊べます。ライブなどでもかなり使えるのではないでしょうか。最後に個人的にメーカーさんへのお願いなのですが、デュアル仕様のプレーヤーもいいですが、ぜひシングルでも発売してほしいです。しかもTT-M1付きで。どうでしょう?

▲別売りスクラッチ・コントローラーTT-M1(8,400円)。手持ちのターンテーブルに設置しスリップ・マットの回転を検出してターンテーブルをCD-Xシリーズのジョグ・ダイアルとして使用できる。



▲本体のリア・パネル。左からDISC2のアウトプット(RCAピン)、デジタル・アウト(コアシキャル)、FADER START(ミニ)、TT-M1接続用端子、リモート・コントローラー用接続端子を挟み、DISC1も同構成

TASCAM
CD-X1700
104,790円

SPECIFICATIONS

■周波数特性/20Hz〜20kHz
■SN比/95dB以上
■外形寸法/482(W)×132(H)×272(D)mm(リモート・コントローラー)、482(W)×94(H)×272(D)mm(本体)
■重量/5.7kg(リモート・コントローラー)、2.5kg(本体)