驚きの低価格に加え迫力の低域再生を実現した小型パッシブ・モニター

BEHRINGERTruth B2030P

今回紹介するパッシブ・モニターBEHRINGER Truth B2030Pは、好評を得ている同社のパワード・モニターTruth B2031の兄弟機種に当たります。個人的には久しぶりにパッシブ・タイプのニアフィールド・モニターをチェックするので楽しみです。これまで私も幾度か自分用のニアフィールド・モニターを買い替えてきたのですが、なかなかしっくり定着するものに出会うのは難しいのも本音です。まあ、それだけモニターの好みというのが十人十色ということなのですが。その中で今回のこのTruth B2030P。ペアで31,395円というハイコスト・パフォーマンスに加え、コンパクトなサイズが魅力ですが、サウンド的にはどういったものに向いているのでしょう。早速チェックしていきましょう。

大音量でも問題なく聴ける
ラージ・スピーカーにも近いレスポンス


まずは簡単に製品の概要から説明していきます。ウーファーが172mmのポリカーボネート・ダイアフラム、ツィーターが19mmのチタン・ドームという2ウェイ構成で、クロスオーバー周波数は2.3kHz。本体のサイズは214(W)×317(H)×211mm(D)と、かなり小柄の作りになっています。最高出力が100W、音圧は89dBということですので、この規格を見た限りでは、素っ気ない言い方になってしまいますが“普通にまとまっている”という印象です。では実際に音を聴いてみましょう。いつもの試聴方法と同じくアンプにはAMCRON DC-300を使いモニターしてみます。まずはすべて生楽器のジャズのソース(楽曲)のマルチを立ち上げて簡単にミックスをしてチェックします。音を聴いた第一印象は良くも悪くも普通、ということは、この価格帯の中ではかなり頑張っているということの証しでもあります。若干、中/高域に癖があるという印象ですが、あくまでもこの製品はパッシブ・タイプのスピーカーなので、音は使用するアンプによってかなり左右されてしまいます。その点を考慮してみても、各楽器のディテールをしっかりと表現できているという感じです。特にウッド・ベースの奥行き感などはかなり評価できるものです。スピード感はもちろんですが、低域の奥行き感に優れているように感じました。この辺りはラージ・スピーカーに近いレスポンスを持っているのではないでしょうか。また、このサイズの小型スピーカーには起こりやすいのですが、低域のアタックの方が勝ってしまい、サウンドそのものの低域の長さや膨らみが無くなってしまうということもなく、かなりの大音量で聴いても問題はありません。

キックやベースの表現力に優れ
中/低域のメリハリがしっかりと出る


生楽器のジャズの次は、今風な打ち込みの歌モノをミックスして試してみることにしましょう。これは聴く前に想像した通り、キックやベースなど低域パートの表現力に優れているという印象です。アクティブ・タイプの小型サイズ・モニターにありがちな過剰な音表現やローエンドの出過ぎ、またスピード感の物足りなさといった要素なども感じません。ラージ・スピーカーを代行できるのではないかと思うくらいの、低域の迫力がここでも印象的です。かなりキックを強めにしてみても、ベースとの混ざりや、中/低域とのメリハリがしっかりと表現できているので、安心してモニターすることができます。信頼性が高いと言えばいいのでしょうか。ボーカル・パートに関しては高域の抜けが良いのが好感触です。ただここで若干気になったのは、高域から下の倍音部分のウーファーとのつながり方です。声の太さを表現する下の倍音はウーファーからしっかりと聴こえるのですが、ちょうどクロスオーバー・ポイントの下の辺りに少しだけ癖があるようなので、そこでツィーターとウーファーのつながり方が若干不自然に聴こえるような感じがしました。ただ、これがエイジングの甘さなのか、私のアンプのチョイスの問題なのかは分かりませんが、時間があれば違う環境でこの辺りをもう少しチェックしてみたかったですね。トータルの印象としては、量感あふれる低音が特徴的なTruth B2030Pですが、バスレフ・タイプという強みも手伝って、かなりの大音量でモニターしてもクリップが発生することがないというのも特質すべき点だと思います。これだけの小型サイズにもかかわらず、ここまでの強い低域を出しても歪みが無いというのは、やはり今のサウンド(ダンス・ミュージックなど)を十分研究し尽くして設計されているモニターなんだなと感心してしまいました。全体的な音の迫力といった点からも上位機種にも負けておらず、プライベート・スタジオなどの環境であればその低域の表現力を十分に生かした音作りができるのではないでしょうか。もちろん防磁対策もしっかりと施されておりビデオ・モニターやコンピューターのディスプレイ、機材回りに設置することも可能。サイズ的にもぴったりとはまるのではないでしょうか。この高いコスト・パフォーマンスも手伝って、“最初に買う1台”としても、魅力のあるモニターだと思います。
BEHRINGER
Truth B2030P
31,395円(ペア)

SPECIFICATIONS

■形式/パッシブ、バスレフ型
■スピーカー/172mmポリカーボネート・ダイアフラム(LF)、19mmチタン・ドーム(HF)
■アンプ出力/100W
■音圧/89dB
■周波数特性/75Hz〜21kHz
■クロスオーバー周波数/2.3kHz
■インピーダンス/8Ω
■外形寸法/214(W)×317(H)×211(D)mm
■重量/7kg(1本)