DAW環境での宅録に最適な入出力デザインの高音質コンパクト・ミキサー

SOUNDCRAFTCompact 4

昨年発表されたSpirit Eシリーズも記憶に新しいSOUNDCRAFTから、今度はぐっとサイズを抑えたCompactシリーズが発売された。4モノ/6ステレオ入力のCompact 10と、2モノ/2ステレオのCompact 4の2種のうち、ここではよりコンパクトなCompact 4を紹介しよう。

フォノ・アンプも装備の入力端子群
2系統のヘッドフォン出力にも注目


Compact 4は1.8kgと軽めだが、実際に持ってみるとしっかりした質感で高級感もある。ACアダプター端子とアース端子がサイドにある以外、すべてのスイッチ、ツマミ、接続端子はパネルの上面に用意されている。レベル操作もフェーダーではなくツマミで、これらは分かりやすく色分けされており、EQやPANはセンター・クリックがあるタイプだ。ツマミの重さも心地よい。インプットは、ファンタム電源対応のマイク/ラインが2系統、フォノ・アンプのオン/オフ・スイッチも搭載したステレオ入力が2系統、CDやDAW再生用のプレイバック入力が1系統だ。アウトプットは、ミックス出力とモニター出力がそれぞれステレオで用意されているほか、レコーダーへ送るためのレコード出力もステレオで用意されている。また、ヘッドフォン出力も充実していて、artistとengineerと名付けられた2系統を装備。前者用のartisit mixツマミではミックス出力とレコード出力のバランスを調節できる。ダビング時に自分の音とオケの音のバランスを取ることができるので、DAW環境でもオーディオ・インターフェースのレイテンシーを気にする必要がなくなるわけだ。一方、engineer mixツマミではモニター出力とartistヘッドフォン出力のどちらかを切り替えて聴くことが可能だ。このように、Compact 4の最大の特徴はミキサーの信号経路の設計が、DAWなどを中心としたホーム・スタジオでの録音作業に最適化されていることだ。各入力チャンネルには、レベル・ツマミの下に2つのスイッチがあり、赤のスイッチはミックス出力/レコード出力の選択、黒のスイッチはモニター出力のオン/オフとなっており、状況に応じて切り替えられる。レコード、ミックス、モニターの各出力がどのように関係し、ミックス出力がどのスイッチとツマミを経由しているかさえ理解すれば、スムーズに作業できるだろう。

太さと繊細さを兼ね備えた音質
低ノイズな点も特筆もの


今回、Compact 4をチェックするために、2イン/2アウトのハイクオリティなオーディオ・インターフェースを備えたノート・パソコンと、数本のマイク、エレキギター/ベースなどを組み合わせてみた。まず、オーディオ・インターフェースの出力をプレイバック入力につなぎ、幾つかのオーディオ・ファイルを再生してみたところ、音色は期待通りのSOUNDCRAFTのもの。太さと繊細さを兼ね備えている。サウンドのちょっとした変化、リバーブの量や定位の変化なども正確に伝えてくれるので信頼がおける。また、プレイバック入力を直接モニターしても、ミックス出力経由でモニターしても(間にレベル調整のツマミが1つ入る)、ほとんど音質が変わらないのにも感心した。ヘッドフォン出力も優秀で、音質が良くノイズがとても少ない。また、各ツマミの音量変化もスムーズで、左45度くらいの範囲できれいにフェード・アウトできる。これなら、フェーダーではなくても作業に問題はない。次に、オーディオ・インターフェースの出力をステレオ入力につなぎ変え、EQやPANを試してみた。EQはハイが12kHz、ローは60Hzのシェルビング、ミッドは600Hzのピーキングでゲインはいずれも±12dBという仕様になっている。シンプルな作りだが効き目は良い。さて、ヘッド・アンプはどうだろうか? コンデンサー・マイクでアコギやボーカルなどを録音してみた。ヘッド・アンプはゲインをかなり上げてもノイズが少なく、音色がシャープできっちりと焦点が合っている。ch1とch2にはインサート端子があるので、ここにコンプなどを挟んで、録音時にアナログ段階で音を作り込むこともできるようになっている。またch1にはローカット(80Hz、12dB/oct)、ch2にはHi-Z入力のスイッチが付いていて、エレキギター/ベースなどのインピーダンス値の高い楽器を直接つなぐことも可能だ。エレキベースのDIとして使ってみたところ、なかなか優秀でしっかりとした低音が録れた。ここでも、ノイズの小ささは特筆に値する。Compact 4は、サイズからは予想できないくらい優秀なミキサーだ。入出力のデザインと音質が共に優れているので、ホーム・スタジオでボーカルやギターなどの生録をするくらいであれば、メイン・ミキサーとしてこれ1台ですべてをまかなえる。また、ライブ時にDJやプレイヤーが手元におくサブミキサーとしても便利に使いこなすことができるだろう。まずは店頭でヘッドフォンなどを使ってクオリティの高さを確認してほしい。
SOUNDCRAFT
Compact 4
オープン・プライス(市場予想価格:20,000円前後)

SPECIFICATIONS

■周波数特性/20Hz〜20kHz ±0.5dB
■マイク等価入力ノイズ/−128dB(22Hz〜22kHz)
■全高調波歪率/0.007%以下(+30dB、1kHz)
■接続端子/マイク+ライン入力×2(XLR/TRSフォーン・コンボ)、インサート×2、ステレオ入力×2(RCAピン)、プレイバック入力(ステレオ)×2(TRSフォーン、RCAピン)、レコード出力(ステレオ)×2(TRSフォーン、RCAピン)、モニター出力(ステレオ、TRSフォーン)、ミックス出力(ステレオ、TRSフォーン)、ヘッドフォン×2
■外形寸法/277(W)×55(H)×246(D)mm
■重量/1.8kg