高品位なエフェクトとモニター・スピーカーが一体化した4trカセット・テープMTR

KORGCR-4

KORGよりエフェクトとスピーカーを内蔵した4trカセット・テープMTR、CR-4の登場です。猫もシャクシもDAWなこの時代に、当然のようにカセットMTRをリリースするKORGが僕は大好きです! “ギターをつなぐ、録る、聴く”というレコーディングの初期衝動をシンプルに思う存分堪能できる本機。では早速いじってみましょう!

電源を入れて即録音を開始できる
シンプルなレコーダー部


まずは外見から。一見DJ機器のようにも見えるボディ・デザインは、見ているだけで触りたくなる衝動に駆られます。そのボディで最初に目を引いたのが8cm×2のバスレフ・タイプのスピーカー。モニターとして使用するには十分なクオリティで、これから宅録を始めたい人も本機1台持っていればスピーカーを買わなくて済みます。フロント・パネルに4つ用意された入力端子(フォーン)にはマイクやシンセなどだけではなくギターなどのハイインピーダンス機器も直接入力できます。出力部はリア・パネルのLINE OUT端子(RCAピン×2)に加え、フロント・パネルのヘッドフォン出力端子×2という構成。個人的にグッときたのがこのヘッドフォン端子が2つある点で、2人での共同作業もヘッドフォンでできるのは大きな利点でしょう。それではレコーダー部を見ていきます。本機で使うことができるカセット・テープはCrO2(Type II、いわゆるクローム・テープ)のみで、スピードはノーマル・スピード固定。テープに録音するまでの手順は至ってシンプルです。まず録音したいトラックに対応した入力端子に楽器を挿し、TRIMツマミで入力レベルを調整、そして録音したいトラックにあるREC/OLボタンを押して録音モードにし、RECORDボタンを押すだけで録音がスタートします。電源を入れてから10秒もあれば余裕で録音を開始できるくらい簡単でスピーディ。ふと曲が浮かんでから録音するまでの時間は短いほど助かるので、メモ録音にも重宝するでしょう。肝心の音も良好で、テープ特有のアナログ感やテープ・コンプなども相まって嫌味のない音です。普段DAWを使っている人も一度CR-4に録音してアナログ的な質感を得る、といった使い方もできます。リバース再生もテープを裏返して再生するだけで可能で、このようなちょっと変わったエフェクター的な使い方もアリだと思いました。

多彩な音作りが可能な
エフェクト・セクション


トップ・パネルの右下にはKORG独自のモデリング技術“REMS”を使用したAmpworksエフェクト・セクションがあり、これはアンプ/マイク・シミュレーターとデジタル・エフェクターで構成されています。各トラックのEFFECTボタンを押せばこのエフェクトを使用して録音できます。まずアンプ/マイク・シミュレーターには8種類のギター/ベース・アンプ・シミュレーターと2種類のマイク・シミュレーターが用意されており、MODELINGセレクターで1つを選んで使用します。ここにはTREBLE/MIDDLE/BASSの3バンドEQが搭載され、シミュレーターをバイパスしてこのEQだけを使用できる“AC EQ”タイプも用意されています。さらにアンプ・ゲインを調整できるMID-FC/GAINツマミも付いており(このMID-FC/GAINツマミはモデリング・タイプによってはMIDDLE EQの中心周波数調整ツマミとなります)、これらを使って多彩な音作りが可能です。実際にギターを入力し、VOX AC30TBのシミュレーターである“AC30TB”を選んで使ってみましたが、独特の箱鳴り感がしっかり再現されていて驚きました。さらにこのシミュレーターの後段に用意されたデジタル・エフェクターには、コーラス、トレモロ、ディレイ、リバーブなどの多彩なデジタル・エフェクトも搭載されており、EFFECTセレクターで選んで使用します。これらのエフェクトはEFF.DEPTHツマミで効きを調節し、ディレイ・タイムやモジュレーション・スピードはTAPボタンを使って設定します。試しにギターにトレモロをかけてみましたが、かなり“それっぽい”雰囲気が出て十分使える音に仕上がりました。ほかにレコーダーを持っているなら、本機をギター・アンプ+エフェクターとして使うのもアリですね。ただ、このAmpworksエフェクトはかけ録り専用で、録音したトラックにかけることはできません。ミックス・ダウンは音量とパンの調整だけになります。これには物足りなさを感じてしまう人もいるかもしれませんが、録音する段階でしっかり音作りをしてしまえば問題は無いと思います。むしろ余分な機能を省いてる分、ミックス・ダウンも潔く行えて不満を感じることはありませんでした。実際に使ってみて本機は“初心者から上級者まで用途はたくさんあるなぁ”と実感しました。宅録初心者の入門機としてはもちろん、Ampworksエフェクトをフル活用した個人練習や同時録音を利用したバンドでの一発録り、テープのアナログ感を得るエフェクター的な使い方などさまざまな利用法が考えられます。個人的にカセット・テープMTRは今でも頻繁に使っているのですが、本機は単純なMTRとしてだけではなく総合的な音楽制作に役立つ機材としてぜひ使ってみたくなる1台でした。

▲フロント・パネル。左からヘッドフォン端子×2、入力端子(フォーン×4)が並ぶ

KORG
CR-4
29,400円

SPECIFICATIONS

■テープ速度/4.76cm/s
■使用テープ/CrO2(Type II)専用
■周波数特性/50Hz〜12.5kHz±3dB
■SN比/43dB
■全高調波歪率/3.0%以下
■スピーカー最大出力レベル/2.5W+2.5W
■外形寸法/434(W)×322(D)×103(H)mm
■重量/4.9kg