低域再生に優れハイコスト・パフォーマンスを実現したパワード・モニター

FOSTEXPM-1

一昔前の宅録環境では、モニターの重要性が語られることはそれほどありませんでした。しかし、最近では低価格でしかも性能の良い小型モニターが各社から次々とリリースされてきました。それによって、多くの人がモニターの重要性を認識すると共に、より良い音楽制作ができるようになったことはうれしい限りです。そんな中、プロの間でも使用している人が多いNF-1Aで有名なFOSTEXから、また1つ低価格なパワード・モニターPM-1が発売されました。上位機種との音質の違いも含め、さまざまな環境でどのような性能を発揮するのか、期待を込めて早速チェックしていきたいと思います。

ずっしりとした重量感に加え
75Wの出力を誇るバイアンプ方式


まず箱から出してみてびっくりしたのが、その重さでした。通常、低価格なモニターとなるとコストの都合もあって、構造上軽めの製品が多いのですが、PM-1にはずっしりとした重量感があるのです。重量感があるということは、つまり箱鳴りを抑えやすいということなのでこれは重要なポイントです。NF-1Aに初めて触れたときもそうでしたが、重量がある分、低域のレスポンスに期待が持てます。次に外観を見てみると、ウーファーの表面に取り付け用のねじが無いことに気が付きました。最近ではトルク・マネージメントなど、ねじの締め付け具合や、その緩みによって音質の変化が生じてしまうといった問題が話題に上ることもありますが、本製品はウーファー部分のねじを無くすことで、低域のチューニングに特にこだわりを感じさせます。さて仕様面ですが、インプットがXLRとフォーンのコンボ仕様となっており、用途に合わせての使い分けが可能です。コントロール関係はゲイン調整のつまみのみで、至ってシンプルで使いやすい仕様となっています。アンプ部はバイアンプ方式で、低域(ウーファー)/高域(ツィーター)共に75Wというパワーがあるため、程よい大きさのスタジオで使用しても十分な音量で聴くことができます。また、スピーカー部は防磁設計となっているので、コンピューターのディスプレイやテレビの横などにも気軽に設置することができます。さらに、本製品の底にはゴム製のインシュレーターが付いており、置いたときの安定感も良く、箱鳴りが余分に伝わるのを防いでくれます。これはキズ防止といった効果も含めてうれしいところです。もちろんはがすこともできるので、自分の気に入ったインシュレーターを使うこともできます。

上位機種にも負けない
重量感あふれる低域


さて、仕様面の話はこれくらいにして、早速音を鳴らしてみましょう。今回のチェックは、さまざまな環境での使用が考えられる本製品のために、自宅のマンション、レコーディング・スタジオ、ホーム・シアターという3カ所で行ってみることにしました。まずは自宅のマンションで聴き慣れたCDを鳴らしてみたのですが、低域のレスポンスに驚かされました。低域がタイトで、キックやベースなどがとても気持ちの良い鳴りを奏でてくれます。特にROLAND TR-808系の重低音のキックなど、小さいスピーカーでは聴き取りにくいサウンドでも難無く再生してくれます。高域に関しては、同社のNF-1Aなどに比べておとなしい出音でキャラクターの違いを感じました。これについては低域のレスポンスが良い分、高域がおとなしく聴こえるのかもしれません。定位感はさすがに同社の上位機種には劣るものの、音の広がりという部分では非常に気持ち良く感じられます。また、これは余談になりますが、宅録で使用する場合のセッティングは、スピーカー・スタンドやブロックなどの固い物の上に乗せる方が良いようです。私は最初にテーブルに適当に置いて鳴らしてみたのですが、低域の再生能力が強いためか、少しだぶついた感じがしました。しかし、ちゃんとした固い物の上に置き直すと、そのだぶつきも無くなり、本来の音で聴くことができました。次に、レコーディング・スタジオで聴いた感想ですが、やはり低域の再生は好印象でした。YAMAHA NS-10Mに慣れている人には、高域がおとなしいので地味に聴こえるかもしれませんが、長時間聴いていても疲れないサウンドです。全体的な印象では、スタジオ仕様の同社の上位機種に軍配が上がりますが、価格が半値以下というコスト・パフォーマンスを考えれば本当に良くできた製品だと思います。最後にホーム・シアターで聴いてみた感想ですが、これも量感あふれる低域のおかげで、本当に気持ちの良い音でした。もともとテレビのスピーカーの音はレンジの狭いものが多いので、その欠点を補っている感じです。DVDの映画などをぜひ5.1chサラウンド仕様にして聴いてみたいものですね。ただ集合住宅で聴く場合は、気持ち良くてついつい音量が大きくなってしまうのに注意しなければいけませんが(笑)。このように、今回はいろいろなシチュエーションで試してみましたが、どの場合でも本製品の重量感あふれる低域は気持ちの良いものでした。全体的な迫力といった点でも上位機種に負けてはいません。本製品を聴いた後、いつも使っているモニターで聴いてみると、音が軽く感じてしまうほどです。スタジオで大音量で聴いたときには、少し低域がきつ過ぎるかな?とも思いましたが、自宅で程よい音量にした場合にはバランスが良くタイトに鳴ってくれたので好感触でした。特に低域を重要視するような音楽では、より性能を発揮してくれることでしょう。それにしても、このクオリティで1本26,145円というお値段は本当にうれしい限りですね!
FOSTEX
PM-1
26,145円(1本)

SPECIFICATIONS

■形式/2ウェイ・バイアンプ方式 バスレフ型
■スピーカー構成/160mmウーファー(LF)、25mmソフト・ドーム・ツィーター(HF)
■周波数特性/50Hz〜20kHz
■クロスオーバー周波数/2kHz
■アンプ出力/75W(LF)、75W(HF)
■外形寸法/215(W)×380(H)×285(D)mm
■重量/11kg(1本)