VCFやEGによる音作りも可能なビンテージ感溢れるスプリング・リバーブ

VERMONARetroverb

“ハイエンド”なんて言葉を今自分流に再構築してたりします。一時代前のシミュレートやおいしいとこ取りをした音楽はもういいかなとも思い、今一番腰が動く帯域やBPM、圧力感というものをストレートに表現する音楽が楽しいと感じるようになって、そんな時代に使える“ハイエンド”機を探っているところです。今回のレビューはそんな僕の十数年来の味方でもあるスプリング・リバーブの新製品! 果たして僕の“ハイエンド”機構想の一端を担えるのか?

ACCUTRONICS製スプリングによる
厚く長めなリバーブ・サウンド


箱から出してまず笑ったのが、その外見。電子オルガンの上に乗せるんじゃないんだから、とほほえんでしまう家具調据え置き仕様。本体の上にいろいろと小物が置けるようにもなっていて、スタジオでも置きどころを探しちゃいます。本体の前面には13個のツマミと4つのスイッチ、背面にはL/Rイン/アウトにCV/PEDALイン(ここにCVやエクスプレッション・ペダルを接続してフィルターのカットオフ周波数をコントロールすることが可能)、後述するクラッシュ機能とエンベロープをトリガーするAUDIO TRIGGER/GATEイン、そしてクラッシュ機能&エンベロープのトリガー用、VCA&VCF機能のON/OFF用、リバーブ・バイパス用の3つのフット・スイッチが並ぶ、スプリング・リバーブらしからぬゴージャス仕様。そう、このRetroverb、実はただのスプリング・リバーブではなく±15dBの2バンドEQや12dB/octのVCF(ローパス)とVCA、リピート機能付きでLFO的使用もできちゃうアタック&ディケイ・エンベロープ機能装備というハイブリッド・マシンなのです。本機には4つのモードがあり、入力がスプリングからEQを通り、VCF/VCAに行ってL/Rアウトから出力されるのがモード1。信号経路はモード1と同様ながら、出力のRだけ位相反転されるのがモード2。そして、モード1&2のスプリングをバイパスしたのがモード3&4です。まずモード1で、エレピやエレキギターなどを卓からAUXセンドで送ってみました。うーむ、なかなか良い感触。良いスプリング・リバーブはモノラルでもなぜか広がり感まで出るものなんですが、これもそう感じました(本機のリバーブ・ユニットは1ch仕様のため、ステレオ入力時もモノラルに変換されて処理される)。程よいプリディレイ感を持った厚く長めなリバーブで、特に入力レベル上げめでギターを送った際の芳醇な“ピチャッと感”は素晴らしいです。またモード2の位相反転による音像の広がり方も、モノラルにしても決して打ち消し合わないトリッピーなもので、ダブ・マニアにはこたえられない空間になりました。マニュアルを見ると、本機にはACCUTRONICS製の3本スプリング・ユニットが使用されているとのこと。これはかのHAMMONDオルガンやFENDERのギター・アンプで用いられていたものと同じで、なるほどと納得、かなり本気にさせてくれるスプリング・リバーブです。

絶妙に音をなまらせるEQ
フィルターとEGでワウも可能


2バンドEQセクションは特にTREBLE加減がよく、シンセ・ストリングスなんかを一気にレコードのネタのように滑らかな質感になまらせてくれました。インプット・ゲインの幅も広く、エレキギターを直接つないでみましたが、レベルはバッチリです。VCF/VCAセクションはCUTOFF、RESONANCE、EG INTツマミとVCAのON/OFFスイッチで構成されています。このセクションとTRIG SENSE、ATTACK、DECAY、SPEEDツマミとREPEATスイッチで構成されるENVELOPE GENERATORセクションを併用すると、そう!何とリバーブのツヤや長さの調整はもとより、トレモロやワウがかかっちゃうんです。無茶なエフェクトつなぎが信条の僕も、このルーティングはやってませんでした。またREPEATスイッチが面白く、SPEEDで設定した周期でエンベロープがトリガーされます。例えばモード2を選んでエレピを入力し、ここをうまく設定すると、ワウのかかった逆相のスプリング・リバーブ音が周期的に“クワックワッ”とフィードバックし続けます! これは病み付きになりそうなサウンドでした。また、モード3&4のスプリング部をバイパスした状態でギターを入力すると、エグい系オート・ワウ+ディレイ・サウンド(しかもアナログ感満載)やリバースっぽいフィルター・ギターも楽しめました。さらに“ギター・アンプにけりを入れたような”効果音を出すCRASHスイッチの装備もユニークで、ありそうで無かった“レトロ感”を今風味に大きくアレンジした本機。ビンテージのスプリング・リバーブ所有者からフィルター・フリークまで、目から鱗が落ちる発想の玉手箱でした。スプリング・リバーブの“ハイエンド”機第1号として認めちゃいますよ、もう。

▲リア・パネル。左からCV/PEDAL端子(カットオフ)、AUDIO TRIGGER/GATE端子×2(CRASH、EG)、フット・スイッチ×2(CRASH/EG、VCF/VCA)、アウトプット×2(フォーン)、フット・スイッチ(バイパス)、インプット×2(フォーン)

VERMONA
Retroverb
69,800円

SPECIFICATIONS

■リバーブ・ユニット/ACCUTRONICS Type 9
■EQ/2バンド・シェルビング
■フィルター/12dB/octローパス
■外形寸法/485(W)×80(H)×240(D)mm
■重量/4.5kg