柔軟性のある構成で幅広く活用できるチャンネル・ストリップ

PRESONUSEureka

友人や知人のプライベート・スタジオや、ライブ・ハウスのPA現場などで、個人的に使用する機会の多いPRESONUSは、1995年から米国で、マイク・プリアンプやコンプを中心としたアウトボード類を発表している比較的若いメーカーです。私が今までに使った製品の印象としては、使いやすく、原音を損なわずに役割をきちんとこなすといったようなものでした。そんなPRESONUSからチャンネル・ストリップ、Eureka(ユーリカと読むらしい)が登場しました。割と近い価格帯のチャンネル・ストリップをちょうど何台か所有しているので、比較してチェックしてみましょう。

スマートなルックスに
まとめられた充実の機能


まずは本機の外観から見ていきましょう。フロント・パネルは、アルミの削り出しに青色の印字で、同色に塗装されたアルミのツマミ類、押し込んだときに青色に点灯するスイッチ類、ほぼ中央に位置するVUメーター、左側にLEDインプット・レベル・メーター、その下に楽器用のハイインピーダンス入力端子といった構成になっています。何種類かのチャンネル・ストリップをラックにマウントさせておいたら、まず一番最初に試してみようかな......なんて気持ちになるクールなデザインです。各セクションについてですが、まずプリアンプ・セクションは、マイク/ライン切り替え、48Vファンタム電源、−20dBのパッド、80Hzハイパス・フィルター、フェイズ切り替え、マイクのインピーダンス・セレクター、マイク入力+52dB/楽器入力+44dBの可変幅を持つゲイン、サチュレーション・コントロールという構成になっています。コンプレッサー・セクションには、バイパス、ハード/ソフト・ニー切り替え、スレッショルド、レシオ、アタック(0.1〜200ms)、リリース(50ms〜3s)、10Hz〜10kHzのサイドチェイン・ハイパス・フィルター、±10dBのゲインが装備されています。そしてEQセクションは、3バンドのパラメトリック・タイプで、±10dBの可変ができ、Qも3〜2/3オクターブの調整が可能となっており、バイパス、EQをコンプの前/後段に切り換えられるスイッチも搭載。さらに、マスター・セクションには、最終的なレベルを調整する−80dB〜+10dBのアウトプット・トリムと、VUメーターの表示をアウトプット・レベル/ゲイン・リダクションに切り替えるスイッチを装備しています。ツマミ類は全部クリック式になっているので、"セッティングを元の状態に戻したい"といった状況でも楽に再現可能です。また、今回使用したデモ機には搭載されていませんでしたが、24ビット/44.1/48/96/192kHz対応のデジタル・アウトプット・カードをオプションで装着することもできます。ざっと概要を説明してみましたが、これでもか!というくらいの機能を装備していてこの価格! 最近の機材は安くなったなあと、あらためて感心してしまいました。

クセのない素直で滑らかな音が
さまざまなソースに対応


では、実際に音を出してみましょう。まずは、マイクプリ・セクションをチェックしてみます。コンデンサー・マイクを使用しボーカルとアコースティック・ギターを試してみることに。コンプ/EQセクションはバイパスにして聴いてみました。印象は、"クセのない素直で滑らかな音だな〜"ということでした。この価格帯のほかの機種は、高価なマイクプリと比較すると、ちょっと解像度が低いというか粉っぽい感じがするのですが、そういった印象は全く受けません。S/Nも非常に良く、ゲインを目いっぱい上げても、マイクが拾うノイズの方が気になってしまうくらいでした。これは、マイクプリの入力段にディスクリート・クラスA回路を採用しているからだと思います。そして、今や定番になりつつあるサチュレーション・コントロールですが、0〜75%辺りまでは徐々に倍音成分が増幅していきコシのある太い音になって、あたかも真空管を通したかのようになり、かといって大げさな感じではないところが良かったです。しかし75〜100%にかけては、アナログのテレコでレベルをかなり突っ込んで録ったような飽和感と、テープ・コンプ感が得られました。ちなみに、インピーダンス・セレクターが装備されているので、リボン・マイクなどの出力の小さいマイクでも、コンデンサー・マイクのように扱えます。次に、ギター/ベースも通してみました。250Hz辺りに多少色付けしてあるようで、ギター/ベースをラインで録るときに特有のペチペチ感が少なかったです。ライン入力は、+4dBu固定で、プリアンプ・セクションの機能は、すべてバイパスされます。ちなみに、センド/リターンはプリアンプ直後に配置されているので、ここにエフェクター類をインサートしたり、EQやコンプの2段がけなんてこともできてしまうのです。今度は、コンプ・セクションをチェックしてみましょう。これはFETタイプのコンプで、聴感上とても自然な効き具合です。レシオ、アタック、リリースの可変幅が広いため、どんなソースにも対応できます。ただし、深くかけてもあまり歪まないので、積極的な音作りにはあまり向かないと思います。前述のようにサイドチェイン・ハイパス・フィルターという便利な機能が装備されているのですが、これは特定の周波数以上のレベルが、スレッショルド・レベルを超えると、コンプが動作するので、ディエッサー的な使い方も可能になっています。そしてEQセクションですが、ロー20〜300Hz、ミッド200Hz〜3kHz、ハイ2〜20kHzの周波数が調整可能です。コンプの前段/後段どちらに入れるかも選べるので、幅広く使えるはずです。効き具合としては、クセがなく自然にブースト/カットをしてくれました。本機を数日間使用して、この価格帯のチャンネル・ストリップの基準、お手本になり得る、非常にまじめで優秀な製品であると感じました。あらゆるソースに対応できますが、個人的にはボーカルなどの、扱いの繊細なソースに使用したいです。本機を導入しても後悔しないと思いますし、きっと長いお付き合いができるでしょう。

▲リア・パネル。左からマイク/ライン・アウト(TRSフォーン、XLR)、センド/リターン(TRSフォーン)、マイク/ライン・イン(TRSフォーン、XLR)

PRESONUS
Eureka
110,000円

SPECIFICATIONS

■周波数特性/10Hz〜50kHz
■ダイナミック・レンジ/>115dB
■ノイズ・フロア/−112dBu(+12dB gain)
■全高調波歪率/<0.0005%(0% saturation)、<0.5%(full saturation)
■入力インピーダンス/10kΩ(XLR、フォーン)、1MΩ(DI)
■外形寸法/483(W)×44(H)×178(D)mm
■重量/3.6kg