指向性が無段階で切り替え可能な真空管内蔵コンデンサー・マイク

RODEK2
低価格コンデンサー・マイク・ブームの先駆けとなったNT2をはじめ、RODE社のコンデンサー・マイクは、今ではプロからアマチュアまで広く浸透していることでしょう。個人的な意見ですが、RODE社は低価格ながら新製品が出るたびにいろんな意見を取り入れているのか、的を射たキャラクターを送り出していると思います。筆者も同社のClassic、NTVなどを実際に所有し、レコーディングで使用したこともあります。なので、今回新たに真空管を内蔵したコンデンサー・マイクが発売されたということで果たしてどうなのか?に大変興味があり、早速チェックしてみました。

重量感のあるしっかりとしたボディと
使用過程を考慮した付属品類

最初に箱を開けてみると、プラスチック製のケースに収められており、よくマイクを持ち歩く筆者にとってはうれしいところです。ケースを開けると、マイク本体、専用電源ユニット、接続用ケーブル、ショックマウント・サスペンションが整然と並べられており、きちんとホールドされて収められています。マイク・スタンドに接続できる変換アダプターも付いたショックマウント・サスペンションは、別売りで買うと意外と高く、これが付属しているのもうれしいポイントです。

マイク本体は、ニッケル仕上げで高級感も重量感もあり、しっかりしたボディになっています。見た目はばっちりですね。電源ユニットとマイク本体を専用の付属ケーブルで接続し、電源ユニットに付いているXLR出力からミキサーなどに接続するという作りになっています。また、本製品は電源ユニットがちゃんと日本仕様になっており、海外製品にありがちな、ステップアップ・トランスを使わなかったために日本の家庭用100Vでは性能を発揮しない、というトラブルもありません。

また本機の大きな特徴と言えるのが、その電源ユニットに、ノイズレスで無段階に変更できる指向性切り替えツマミが付いていることです。通常指向性は、スイッチなどで切り替えると完全に変わってしまうのですが、本機はその中間のような指向性にできるのです。これは非常に使い勝手が良く、それぞれの調整位置で音質も変わるので、ちょっとした音作りにも役に立ちそうです。

高域が伸びながらもクセが無く
さまざまな場面で使えるサウンド

それでは、音を聴いていきましょう。パッと聴き嫌な印象は無く、“きれいな音だな”と思いました。特に重低域に関しては、なだらかにロールオフされている感じがあり、オンマイクでも変なボコボコ感は感じられません。この辺は、スタジオでも宅録環境でも使いやすいポイントの1つでしょう。今までどちらかと言えば、RODE社のマイクは高域がきらびやかで非常に抜けている印象あったのですが、本機にはその極端な印象はなく、高域が抜けながらもしゃりしゃりし過ぎていない感じでした。真空管や新設計のダイアフラムも一役かっていると思いますが、この辺はマーケットのいろいろな意見を取り入れ、ほかのモデルとの差別化を計ったためかもしれません。

実際のレコーディングで使用してみた感想ですが、まずボーカルに試してみました。普段は他社のマイクを使っているアーティストでも、試しに立ててみた本製品で録ったものが採用されるほどの実力がありました。特に女性ボーカルでは好印象で、すごくきれいな声を聴かせてくれます。高域が盛り上がりながらも、7、8kHz辺りの子音の部分と声の軽くなり過ぎる耳障りな部分は逆に盛り上がりません。スペックの周波数グラフを見ても分かるのですが、高域が伸びながらも嫌な部分は出ないという特性が功を奏しているようでした。また、中低域に関しても“ほんのり”と膨らみがあり、太さも程よくあります。極端なクセが無いのも良い印象で、もし後でEQなどで声を作りたくなっても、全体的にどうにでも持っていけそうです。また、どちらかと言えばオンマイク気味の方が筆者の印象では良いようでした。本機は最大SPLが162dBもあり、かなりのオンマイクや大きい声でもびくともしない作りは、値段の高いマイクでも一目置く特徴だと言えます。

次に、アコースティック・ギターとエレキギターを試したのですが、アコギの場合は“きれいな音だな〜”と言う印象です。ちょっとクセを付けたザクザクした音は苦手かもしれませんが、アルペジオなどはきれいな鳴りを録ることができます。エレキでは、特にクリーン〜クランチ系は良いようです。SPLも高いので大音量でも歪むことはありませんでした。

そしてピアノですが、今回は1本しかなかったので、ワン・ポイントで試してみました。結果、高いハイファイ系マイクにありがちな、いろんな音を拾い過ぎる感じもなく、ピアノの直接音を拾ってくれる印象でした。バンドの中でもきれいながらも埋もれにくい音だと思います。

コンデンサー・マイクの低価格化が進む中では、ほんのちょっと高めですが、その作りは値段の高いマイクにも負けないものになっていると思います。特に最大SPLが高く、指向性も無段階で変えられるなど、どんなレコーディング環境でも要求にもこたえることができるでしょう。全体的にRODE社のマイクの音のイメージはありますが、プロからアマチュアまでどちらかと言えばきれいな音で録音したいという方には最適かと思います。まだアップロードされていないようですが、RODE社のWebサイトではほかのモデルなどと併せて、同モデルの実際の音も聴けるようになっていますので、参考にしてみると良いでしょう。筆者も、RODEのマイクとしてはNTKに続き手に入れてみようかな〜と思いました。

RODE
K2
70,000円

SPECIFICATIONS

■周波数特性/20Hz〜20kHz
■出力インピーダンス/20Ω
■感度/−36dB(1V/Pa)、16mV@94dBSPL、±2dB
■ノイズ/10dBA SPL
■最大出力/>+30dBu(@THD=1%、1kΩ)
■ダイナミック・レンジ/150dB
■最大SPL/162dB(@THD=1%、1kΩ)
■SN比/81dB(1kHz/1Pa)
■外形寸法/60(φ)×234mm
■重量/850g