新開発RP振動板を採用し宅録からプロ環境まで対応するモニター・ヘッドフォン

FOSTEXT40RP MKIIN

皆さんの基準モニターは何でしょうか? スピーカーですか? ヘッドフォンですか? モニター環境によって音が変わるから、何を信じていいのか分からない......なんて方もいらっしゃることでしょう。音の判断には、大小のスピーカー、そしてヘッドフォンなど複数の方法でモニタリングを行い、その差を比較する方法が定番です。そのモニター機器の中でも、手軽な投資で用意できるものと言えば、やはりヘッドフォンです。今回紹介するT40RP MKIINは、1万円強で購入できる安価なモデル。だからと言って見くびってはいけません。皆さんはFOSTEXのヘッドフォンを見過ごしてはいないでしょうか? 私は、旧RPシリーズのT20RPを以前からモニター基準の1つにしていますが、ずばり低音の量感チェックの際には、必ずT20RPを使っているほどの信頼を置いています。今回紹介するT40RP MKIINをはじめとするRPシリーズのニュー・ラインナップには、新開発RP振動板が採用され、さらなる能力改善がなされているそうです。これは期待が高まります。

密閉型ならではの優れた遮へい効果
オープン型のT20RP MKIINも用意


今回は、密閉型であるT40RP MKIINのチェックですが、さらにオープン型のT20RP MKIINも同時に見ていこうと思います。T40RP MKIINは、新開発RP振動板を使用した密閉型ヘッドフォンです。まず、密閉型とオープン型の違いは、スピーカー・ユニットの筐体に"穴"が開いているかいないかなのですが、これだけの違いで振動板に要求される働きが大きく変わってきます。と同時に、低域表現に決定的に大きな違いも出てくるので、用途によって両者を使い分ける必要があります。前述したように、T40RP MKIINは密閉型で、この形式はユニット筐体が密閉されているため、ヘッドフォンからの音漏れを少なくすることができます。コンプレッサーを強くかけてボーカル録音をする際には、モニター・ヘッドフォンから音漏れしやすくなるので、そんなときには密閉型のT40RP MKIINは最適でしょう。同時に耳にイアー・パッドをしっかりと密着させれば、外部から進入してくる雑音に対しても遮へい効果が出ますので、小さい音量でも外部の音が気にならず、集中してモニターすることが可能となっています。一方、T20RP MKIINはオープン型です。当然、密閉型に比べてへッドフォン特有の密閉感/孤独感は減ります。オープン型は概して、スピーカーでモニターするときのような伸びやかな低音の鳴りを感じることができるので、量感の表現力は密閉型より分かりやすいと個人的に思います。もちろん、このT20RP MKIINも例外ではありません。ただし、密閉型のT40RP MKIINと違って音漏れはしますし、外部の雑音も入ってきますが、スピーカーでのモニターに慣れている人は、オープン型であるT20RP MKIINの方が物理的に自然にモニターできるかもしれません。

耳をしっかり覆うイアー・パッド
周波数偏差の少ない出音も魅力


ほかにもT40RP MKIINとT20RP MKIINでは装着感の違いがあり、イアー・パッドの形状が異なります。密閉型のT40RP MKIINは、頭部の形状の違いによる密着度の低下を防ぐためにも耳を直接押さえつける形状です。一方、オープン型のT20RP MKIINは耳には直接触れず、耳の周りを押さえる形状で、特に長時間使用しても痛みがありません。ヘッドフォンのスペック欄では分からない情報の1つに、頭の対応サイズがあるのですが、これが意外と大事なポイントなんですよね。この新RPシリーズ2機種はイアー・パッドがしっかりと耳の下部までかぶさる設計になっており、頭部とのすき間が開いて音が漏れることもありません。この装着感は、ぜひ店頭に出向いてチェックしていただきたいです。さて、肝心の音についてですが、両モデルともプロフェッショナル用途にも全く遜色の無い出来です。クセの少なさ、定位の分かりやすさといった基本的な部分は完全にクリアしています。モニターの周波数偏差も無く、低域から高域まで同じ音質で聴こえます。ちなみに、SONY MDR-CD900STと比べてみたところ、T40RP MKIINの方が音の固さが少なく、自然な感じを受けました。私が思うに、良いミックス・バランスの音はリスニング・システムに左右されにくいものです。なので、正確で分かりやすいモニターで良いミックス・バランスを取ることはとても大事です。良いモニターを手に入れることができれば、突っ込んだ音の加工も、良いバランス取りも素早く判断できますから、それを聴いて演奏するミュージシャンにとっても影響が多大で、モニターによって演奏内容さえも変わってくると言えます。T40RP MKIINとT20RP MKIINは、共に1万円付近という価格を実現しながら、アマチュアからプロの使用まで耐え得るモニター・ヘッドフォンだと思います。世界でも高い評価を得ているようですし、この新RPシリーズから最大入力値が2,000mWに上がり、業務用としても使い回せるスペックを備えたのも特筆すべき点です。プロはもちろん、宅録環境の方にもぜひ試してみてほしい製品です。

▲オープン型のT20RP MKIIN(11,000円)

FOSTEX
T40RP MKIIN
12,500円

SPECIFICATIONS

■型式/密閉RPダイナミック
■周波数特性/15Hz〜30kHz
■インピーダンス/50Ω
■感度/96dB/mW
■定格入力/67mW
■最大入力/2,000mW
■重量/330g
■コード長/3m