【製品レビュー】カプセル交換で指向性切り替え可能な筒型コンデンサー・マイク

BEHRINGERB-5

大型ダイアフラムを採用した低価格なコンデンサー・マイクが多く出回っている中、本製品のようないわゆる筒型タイプはあまり見かけないと思います。実際、“ダイアフラムが大きい方が良い”という印象を持っている方も多いかもしれませんが、プロ現場では筒型タイプのコンデンサー・マイクを楽器によく使っていたりします。これはダイアフラムが小さい分、大型ダイアフラムがある種、苦手とする部分を補うという利点があるのです。リーズナブルな製品で定評のあるBEHRINGERからなんと12,900円という筒型コンデンサー・マイクが発表されました。楽器録音を行う方は気になる製品だと思われますが、その実力はいかに。早速チェックしていきましょう。

ローカット/PADも備え
低価格ながら充実した仕様


まず外観ですが、小柄でツヤ消しのニッケル・メッキ真鍮ボディを採用した丈夫な構造です。少々乱暴に扱っても壊れなさそうな作りになっています。製品パッケージには専用キャリング・バッグやマイク・スタンド・アダプター、ウィンド・スクリーンも付属しており、至れり尽くせりといったところでしょう。特にキャリング・バックはしっかりとマイクを収められるので、スタジオへの持ち運びや保管の際にも有効に使えると思います。スペック的には、切り替え式のローカット/−10dBのPADスイッチを本体に備えています。最大入力音圧はPAD使用時で150dBもあるので、さまざまな用途に対応できるでしょう。特にローカットは、宅録環境で非常に重宝する機能だと言えます。ただローカットとPADのスイッチは切り替え式で独立していないので、ローカットを行いながらPADを入れることができないのは残念なところです。しかし、コストのことを考えると致し方ないでしょう。さらに宅録用途では同時に使うケースもまれなので、十分と言えます。本製品の一番の特徴は、何といっても指向性の違う2つのカプセルが用意されている点です。単一指向性(カーディオイド)と無指向性のカプセルが用意され、指向性を切り替えられるのは、レコーディングにおいて非常に有効です。この価格でよく実現できたなあと、驚きすらありました。カーディオイドのカプセルでは近接効果も利用でき、一般的な用途で幅広く使うことが可能です。一方、無指向性では近接効果は無く、クセの無いフラットな特性で、空気感を重要視した自然なサウンドを得ることができます。取り換えもカプセル部分を回して外すだけで簡単に行うことができ、カプセルの接点も大きめな構造となっているので、よほどのことが無い限り壊してしまうなんてこともないでしょう。この辺り、当然のことですがうれしいところです。ちなみに本製品はコンデンサー・マイクであるためファンタム電源が必要となります。カプセル交換時には大きなノイズが出てしまうので、必ずファンタム電源をオフってから行いましょう。

素直でクセの無いサウンド
音作りがしやすいマイク


今回のチェックでは、B-5のほかに比較用として、レコーディング現場でよく使われる筒型マイクAKG C451、NEUMANN KM84iも試してみました。もちろん、これらは価格的にも何倍もする製品なので単純な比較とはなりませんが、スタジオ定番マイクということで用意したものです。まず、アコギで試してみました。第一印象はうまくまとまった音だなというものです。変に高域や低域が出ているわけでもなく、少な過ぎるわけでもなくクセの無い音でした。ピッキング・ノイズを大きめに拾ってくれるため、ザクザクしたバッキングで特に好印象です。他のマイクと比べると、高域のきらびやかさでは一歩リードされていますが、B-5はクセの無い音質なのでEQで補正できる範囲だと言えます。また、筒型マイクの特徴でもある低域のタイトさも十分実現しています。ちなみに一般的には狙わないサウンド・ホールへも向けてみましたが、ローカットを併用すれば“使える”音を作ることができました。続いてカプセルを無指向性に替えてみたのですが、こちらは雰囲気が変わり、ピッキング・ノイズもうまく抑えられた空気感のあるサウンドです。特にアルペジオ弾きの場合に好印象で、やはり2種類のカプセルが用意されていることは、生録りにおいて非常に有効なことだと確信できました。次にドラムのトップとハイハットに試してみたのですが、こちらもアタック感をうまくとらえた素直な音です。比較用のマイクと比べると若干ハイエンドの伸びが足りない気がしますが、ハイハットにオンマイクでセットしたときの歪み感の少なさはかなり評価できるものです。なお、番外編として筒型マイクでは試すことの少ないボーカルもチェックしてみました。ふくよかさに関しては、さすがに大型ダイアフラムにかなわないものの、軽過ぎず前に出てくる感じは意外なものでした。B-5の全体的な印象は、低域が程よくロール・オフされていて素直な音だなというものです。物足りない部分もEQ補正が十分に効く範囲ですし、音作りしやすい音だと言えます。また、変にチャリチャリしてないのでダイナミック・マイクからの移行もスムーズに行えるでしょう。やはり何と言っても、一番の特徴である“低価格でカプセルを2つ搭載”という点では、キャラクター違いのマイク2本分を楽しむことができ、お買い得なものです。あまりなじみの無いであろう筒型コンデンサー・マイクですが、宅録でも扱いやすいという利点もあり、特に楽器の録音を中心に行う読者はチェックしてみてください。
BEHRINGER
B-5
12,900円

SPECIFICATIONS

■周波数特性/20Hz〜20kHz
■ローカット/6dB/oct(150Hz)
■最大入力音圧(1%THD@1kHz)/140dB(0dB)、150dB(−10dB)
■SN比/78dB(カーディオイド/A-Weighted)、76dB(無指向型/A-Weighted)
■外形寸法/20(φ)×120(H)㎜
■重量/90g