多彩なエフェクトに加えオーディオI/O機能も備えたボーカル・プロセッサー

DIGITECHVX400

ペダル付きのボーカル・プロセッサーという、一風変わったスタンスで注目を集めたVocal300。その上位機種であるVX400がリリースされた。新たにマイク・モデリング機能とUSBオーディオ・インターフェース機能を装備し、さらにDAWソフトまでもパッケージング。個性とスペックにさらに磨きがかかった本機を早速レポートしよう。

7つのエフェクト・グループを独立設定
ボーカルだけでなく楽器にも有効


VX400の音作りの基本は、7つのエフェクト・グループの組み合わせとエクスプレッション・ペダルのアサインにある。ペダルに1〜3個の任意のパラメーターをアサインし操作することで、ボーカリストが歌いながらリアルタイムにエフェクトを操作できる優れものだ。ペダルにはほとんどのパラメーターをアサインできるため、トリッキーな演奏から微妙なサウンド調整まで自由度の高い使い方ができる。なお、ボーカルだけでなくライン入力された楽器音に対してもエフェクト処理が可能なので、ギターやキーボードといったさまざまなソースが利用できるのもポイントだ。本機にはエフェクト・グループの特徴を生かしたファクトリー・プリセットが40と、ユーザー・プリセットが40用意されている。エディットはマトリクス・エリアにプリントされたパラメーター・リストを参照しながら、パネル左のSELECTボタンで各エフェクト・グループを呼び出し、対応するノブを使って変更する仕組みだ。早速、パラメーター・リストの最上段にある“MIC MODELING”のLEDを点灯させマイク・モデリングのエフェクト・グループを選択。ここではNEUMANN U87AiやAKG C414-ULSなどの有名マイク13種の中からそれぞれのシミュレート・サウンドを選ぶことが可能だ。実際にその性能を探るべく、手持ちのマイクを使ってテストしてみた。当然ながら、ダイナミックとコンデンサーという使用マイクのタイプによって音は左右されるが、周波数特性という点ではシミュレートされた元のマイク・キャラクターが実感できて面白かった。自分の声や歌い方に合った設定をノブ1つで探し出せたら、こんなに便利なことはないし、またシミュレートされたマイクにはSHURE 520DX(Green Bullet)などの変り種もあるので、曲調によって意外な好結果を生むかもしれない。次に“MIC PRE/VOICE”のエフェクト・グループをチェック。ここでは3タイプのプリアンプと9タイプのボイス・キャラクター・エフェクトを選択することができる。その中で特に気に入ったのがチューブ・プリアンプのシミュレーター。中低域の膨らみが良く、サウンドにコシを与えてくれる。ほかにもディストーション系などのプリアンプがあり、歪みサウンドにも死角が無い。ボイス・キャラクター・エフェクトではロボット・ボイスやローファイ・サウンドなど個性的なエフェクトを楽しめる。具体的なプログラムを紹介すると、“Dark Side”はピッチ・シフターで低いトーンを強調したダースベイダー・ボイス。逆に倍音を付加してリング・モジュレーター的な効果を狙った“Lunar”。“Alien”ではビブラートのピッチとスピードを自由に設定してクレイジーなSEサウンドを生成できる。エフェクト・グループ“EFFECTS”にはモジュレーション系エフェクトが12種類用意されている。“Chorus”“Flanger”“Phaser”などのスタンダード・プログラムから、音を周期的に断続出力する“Strobe”まで用意。“Envelope”はいわゆるオート・ワウだが、ペダルをフィルターにアサインして操作することで、よりピッチに動きのあるワウ効果を得ることができる。また“Whammy”は同名製品でおなじみDIGITECHのオリジナル技術で、ペダルによってシンセのピッチ・ベンドと同様の効果が出せる。ペダル1つで複雑なコーラス・ワークも可能だ。このほかにも“COMPRESSOR/GATE”や3バンドの“EQUALIZER”、10〜2,000msまでディレイ・タイム設定可能な“DELAY”、高音成分のみの減衰時間を調整できる“REVERB”など、7つのエフェクト・グループが装備されている。

16trレコーディング・ソフト
Pro Tracksを同梱


さて、冒頭でも触れたが、VX400は4イン/4アウトのUSBオーディオ・インターフェースとしての側面も併せ持ち、標準でバンドルされるWindows対応のレコーディング・ソフトPro Tracksと併せてコンピューターでのデジタル・レコーディング環境も実現できる(WDM対応の他のDAWソフトでも使用可能)。このPro Tracksを付属のソフトと侮るなかれ、オーディオ・トラック×16と無制限のMIDIトラック、そして基本的なオーディオ編集機能を備え、何より使い勝手が良い。当然VX400との連携はバッチリなわけだから、製品同士の相性によるトラブルも皆無に近い。VX400と連携させれば、エフェクト・サウンドをモニターしながらドライ・サウンドのみを録音するといったルーティングもでき、リマイク機能を使えば録音済みのトラックにエフェクトを施すといったこともフル・デジタル処理で可能だ。またVX400の3つのフット・スイッチを使って、録音/再生/消去などレコーディングの基本的な操作ができる。ノイズの軽減を考慮して、コンピューターから離れた位置にマイクを立てるといったことは、今や宅録でも常識になっている。そのような状況において、足下のスイッチでトランスポートのリモート・コントロールできるこの機能は、地味だが慣れるとクセになるだろう。VX400は本体だけでも十分にその性能を実感できるが、コンピューターを組み合わせればそのパフォーマンスは何倍にも膨れ上がる。単体のボーカル用エフェクターとしてはもちろん、安価で質の良いDAW環境を検討している方にもお薦めしたい製品だ。
DIGITECH
VX400
49,800円

SPECIFICATIONS

■入出力端子/MIC INPUT(XLR)、INSTRUMENT INPUT(フォーン)、LINE IN(フォーン×2)、OUTPUTS(フォーン×2)、BALANCED OUTPUTS(XLR×2)、CD / MONITOR INPUT(ステレオ・ミニ)、ヘッドフォン・アウト(ステレオ・ミニ)、USB、フット・スイッチ
■メモリー/40ユーザー+40プリセット
■AD/DA/24ビットΔΣ方式
■外形寸法/330(W)×216(D)×57(H)㎜
■重量/2.11㎏
■付属ソフト/Pro Tracks、X-Edit