多彩な機能を搭載したスマートメディア採用のポータブル4trデジタルMTR

ZOOMPS-04

ZOOM製品といえば“低価格で多機能”というイメージが定着していますが、今回もやってくれました。4trレコーダーに加えリズム・マシンやマルチエフェクター、アンプ・シミュレーターまで搭載して23,800円という本機。正直、このサイズにこれだけの機能を詰め込んでいると聞いたときには“無謀”の二文字が脳裏に浮かびましたが、その実力やいかに? 早速試していきましょう。

小さく軽いボディに
充実した機能を凝縮


まず驚かされるのはその小ささと軽さです。PALM PalmなどのPDA機器と同じくらいのサイズで、コートのポケットにSONY Walkmanを突っ込んで歩くような感じで持ち運べます。電源はACアダプターか単三乾電池4本で、アルカリ乾電池使用の際は約10時間もの連続使用ができます。記録媒体はスマートメディアで、付属の32MBのメディア使用時にはHI-FIモードで約16分、LONGモードで約32分の録音が可能とのこと(1トラック換算)。携帯性に対する配慮はバッチリです。入力部はギター/マイク入力(フォーン)とライン入力(ステレオ・ミニ)で、ギターなどのハイインピーダンス機器を直接入力することもできます。出力部はマスター出力(ステレオ・フォーン)とヘッドフォン出力(ステレオ・ミニ)という構成。このほか内蔵マイクが装備されているので、本機のみでボーカルなどを録音することが可能です。入力された音にはインサート・エフェクトをかけることができます。このインサート・エフェクトには歪み系、ダイナミクス系、空間系、アンプ・シミュレーターなどが用意され、かけ録りはもちろん、本機を単体のマルチエフェクター/アンプ・シミュレーターとして使うことも可能です。さてその音質は、ZOOMのエフェクターを継承したカラッとしたサウンド。普段僕が使ってるLINE6 PodやTECH21 SansAmpに比べるとかなり派手めです。これならオケに埋もれることはないでしょう。ハイゲインなディストーションやコーラスをかけたクリーン・サウンドはかなり使えそうです。マイク入力に関しても、マイクプリの特性の設定まで可能なのには驚きました。僕が気に入ったのはTAPECPというパッチで、アナログ・マルチの飽和感のシミュレーション。こんなパッチまで搭載するZOOMの時代を見据えた商品開発スタンスに感心してしまいました。リズム・マシン部は、PCM音源採用の7ドラム・キット/5ベース・サウンド。346種類のプリセットからリズムを選択でき、オリジナル・パターンの作成も可能です。さすがにこのインターフェースで本格的に打ち込むのは大変なのですが、本機は素早くアイディアを形にする目的での使用がメインでしょうし、プリセットも幅広いジャンルを網羅しているので特に問題になることはないと思います。素早く形にするという意味ではZOOM独自のFAST方式の入力も便利です。例えば“パターン12を4回繰り返した後にパターン20を6回繰り返す”という構成の曲を作りたい場合、フェーダーとカーソル・キーを使って“12×4+20×6”と数式を入力すれば一瞬で作成できてしまうのです。

メモ録音から
本格的な曲作りまでカバー


それではレコーダー部を見ていきましょう。サンプリング周波数は31.25kHzで、最大同時録音トラック数は2、最大同時再生トラック数は4。1トラックにつき10テイクのバーチャル・トラックが作成できるので、合計40テイクもの録音ができることになります。これにより、トラック数を気にせず複数テイク録っておくことも可能です。もちろんコピー/ペーストなどの編集機能で細かく構成して本格的な曲作りを行うこともできます。ミックス・ダウンにおいてはEQやパンの設定はもちろん、インサート・エフェクトとは別系統に用意された空間系のセンド/リターン・エフェクトに送ることも可能です。また、リズム・マシンも含めたトータルのミックス・バスにはマルチバンド・コンプなどのマスタリング用のエフェクトをかけることもできます。このプリセットは効果が分かりやすい特徴的なものばかりなので、初心者でも迷わず選ぶことができるでしょう。ミックスはマスター出力から外部のレコーダーに直接録音するだけではなく、空きのバーチャル・トラックにバウンスして、スマートメディアから専用ソフトを介してコンピューターに取り込むことができます。これにより、DAWソフトとの連携も簡単に可能です。“取り込めても31.25kHzなんて微妙なサンプリング・レートじゃ……”と勘違いしていたのですが、専用ソフトでコンピューターに取り込む際に44.1kHzのWAV/AIFFに変換できるので問題ありませんでした。なお、このソフトは現在Windows用のみとなっていますが、Macintosh用も近々公開されるとのことです。僕は今まで携帯電話の留守電かノート・パソコンにアイディアをメモして歩いていましたが、どちらも性能や携帯性が中途半端で、“こんなのがあったらいいな”と思っていたところに本機はバッチリでした。出先でふっと良いメロディやアイディアが思いついたときすぐに形にでき、さらに本格的な曲作りにまで発展させることができるのは非常に便利です。鼻歌やギターで曲を作るミュージシャンにぜひオススメしたいと思います。
ZOOM
PS-04
23,800円

SPECIFICATIONS

■サンプリング周波数/31.25kHz
■AD変換/24ビット64倍オーバー・サンプリング
■DA変換/24ビット8倍オーバー・サンプリング
■外形寸法/85(W)×133(D)×36(H)㎜
■重量/160g(電池含まず)
■付属品/32MBスマートメディア