映像と音を指先で自在にエフェクト処理できるKaoss Pad最新機種

KORGKaoss Pad Entrancer

あのKORG Kaoss Padシリーズに映像もエフェクトできるKaoss Pad Entrancerというモデルが加わる、という話を聞いたときは興奮した。今では"音を指先で扱う"というのは当たり前のことになっていたが、同じような感覚で映像までもが操作できてしまうとは! しかも音と映像の同時エフェクトまで可能だという。さらに未体験の領域に踏み込んだシリーズ最新機種。いったい何がどうなっているのか早速試してみることにした。

映像をリズムに追従させることも
タッチ・パッドを触るだけで簡単に可能


本誌読者で、普段慣れ親しんでいるコンプやディレイなどの音楽系エフェクトと映像系エフェクトを同列でとらえてきた人はそんなにいないだろう。ボクも10年ぐらい前まではそんな感じだった。が、ふとしたキッカケでモザイクやズームができる程度の映像エフェクターを入手し、音に合わせて効果を切り替えていくうちに音楽用エフェクターと同じノリを実感。以後ハマリにハマって、最終的に70万円の機種を買うまで突っ走ったのだった。ちなみにそれはメモリー無し、50cm四方の卓を含む重量15kgぐらいのシロモノだった記憶がある。ところが本機は従来のKaoss Padと同等のサイズで重さもわずか2kg。それでいてエフェクト・プログラムは映像(ネガポジ、左右反転、ミラーリングなど)、音声(フィルター、ディレイ、シンセ、サンプリングなど)、さらに両者のコンビネーションを100種類ずつ用意している。接続端子類は、リア・パネルにステレオ音声入出力(RCAピン)とMIDI入出力にプラスして、ビデオやDVDデッキ、コンピューターなどからの映像を入力する映像入力(ピン)、映像出力(ピン/S端子)を用意。フロント・パネルにはもう1つ映像入力(ピン/S端子)が搭載され、VIDEO SELECTスイッチで切り替えて使用できるようになっている。映像機器との接続はビデオやDVDデッキ、コンピューターなどからの映像を直接入力し、映像出力からテレビやプロジェクターにつなぐだけなので至って簡単だ。そして操作も、複雑な階層の奥にあるようなパラメーターは皆無だからマニュアル無しでいじり始めても即使うことができる。そこで最初に実感したのはやはり、映像エフェクトをかける際の経験したことのない自在さだった。そこにこれまでの映像エフェクターとは別種の特質があったのだ。従来の映像エフェクターで素材に効果をかけるには、"レバーを倒す""ツマミを回す""ボタンを押す"という動作によって行っていた。これを本機はKaoss Padシリーズおなじみのタッチ・パッドに指を走らせることによって実現できる。また、ボタンを押してオンにするような動作はタッチ・パッドに触ればいいだけで、そこで指を離せばエフェクトは一瞬にしてオフになる。これがアナログ・スイッチでは難しい。レバーやツマミでは無理だし、ボタンでもタイムラグがあるのだ。この"指で押してる間だけ効果がホールド、離せば即解除"という仕組みには大きなメリットがある。それは音楽との合わせ方においてだ。例えば符点4分音符と8分音符が交互に出てくるラテンのベースのようなリズムに対してでも、机を指先でたたいてリズムをとるくらい簡単にエフェクトを追従させることができる。このようなことはまさに本機の独断場ではないだろうか?また、トップ・パネルのPAD MOTION/MUTE/FREEZEレバーをMUTE/FREEZE側に倒すと、その瞬間の映像が静止画になる。これは曲のブレイクなどでとても使える機能だ。音楽で同種のトライをしている人にとっては"なーんだ"と思うかもしれないが、映像で、かつリアルタイムでこれができるというのはエポックメイキングだろう。

音と映像を同時にエフェクト操作できる
コンビネーション・プログラム


トップ・パネルのCONTROL SELECTスイッチでCOMBIを選択すると、音と映像のエフェクトを組み合わせるコンビネーション・プログラムを使用することができる。"タッチ・パッドの下から上に指を走らすに従ってディレイが深くなり、同時に画面の手前から奥に向かって増殖した画像が広がっていく"といったようなプリセットが100種類も用意され、さらにオリジナルなコンビネーション8個を登録可能。"こんな感じの音のときは映像の方もこんな風に変化してほしい"というイメージを実現するのはなかなか難しいが、事前にメモリーできることで一歩近づくことができる。それから、Kaoss Pad KP2では6秒の音声を録音できたが、今回はなんと動画をも最大6秒サンプリング可能。ここにキメの画像を仕込んでおいて要所要所でエフェクトをかけつつポン出し、といった使い方も考えられる。コンビネーション・モードでは音と動画を同時に記憶できるので、さらにインパクトある利用法もあるだろう。また本機にはパターン選択モードというものも用意されている。これはあらかじめプリセットされているさまざまなタイプのグラフィックを呼び出すモードで、音声入力をスペクトラム・アナライザー、波形、リサージュなどで映像化できたりもする。これも音とリンクした映像プレイのバリエーションとして使えるモードだ。従来のKaoss Padの機能に、その映像版をフル装備で加えた本機。これがあれば従来のVJプレイで弱かった"音との緊密なリンク"という部分が大幅に解消されるだろう。場合によってはDJがVJをも兼ねるといったことも可能かもしれない。本機は、音と映像をつなぐことで新たな表現スタイルをも作り出す可能性を持った1台だと感じた。
KORG
Kaoss Pad Entrancer
100,000円

SPECIFICATIONS

■音声サンプリング周波数/44.1kHz
■音声AD/DA/20ビット・リニア
■外形寸法/240(W)×247(D)×83(H)mm
■重量/2kg