ダイナミックとコンデンサーが一体化した画期的なバス・ドラム用マイク

AUDIO-TECHNICAAE2500

AUDIO-TECHNICAのマイクロフォンといえばやはり打楽器!というイメージが筆者的には強いのですが、そんな気持ちが通じてか、今回のレビューで紹介しますAE2500も、まさにバス・ドラムを意識した画期的で、なおかつユニークで、そして素晴らしいマイクロフォンです。

ハードな環境での使用にも
耐えうる基本構造


冒頭からこんなに軽やかに紹介できるレビューも珍しいと自分でも驚いてしまいますが、AE2500はなんとコンデンサー型とダイナミック型の2つのユニットを1つのボディに搭載した、究極のバス・ドラム用マイクロフォンなのです。内容的には、コンデンサーとダイナミックの2つのユニットが完全に同一線状に配置されており、先がコンデンサー用とダイナミック用に分かれたY字の専用ケーブルで、別々のチャンネルに出力することができます。なおかつダイナミックのユニットのサイド・ポートを、密度の違う2層のフォームでカバーし、マイクの中心軸から外れた位置にある音を遮音しています。なので、2本別々のマイクを使った場合に起きるような位相の乱れを完全に解消できるようです。コンデンサー・ユニットのダイアフラムにはエイジング処理が施されていて、ハードな環境での長期間の使用に備えられていたり、ユニットのベース部分に、電波障害の防止のためのニッケル・メッキが施されています。また、パッド・スイッチとローカット・スイッチは、厳しい環境下での使用を考え防湿タイプになっているそうなので、 SRでの使用にもかなり期待できる内容になっています。さて、リズム録りのセッションで早速使ってみましょう。通常バス・ドラムに使うコンデンサー・マイクというと、自分はNEUMANN U47FETが多いのですが、U47FETはサイズが大きいので、ヘッドに大きな穴が空いているときか、よほど特殊のことがない限り、フロント・ヘッドに空けた穴の中にマイキングすることはありません。しかし、このAE2500はコンパクトなので、なんら問題無く自在にマイキングすることができるのです。ヘッドの中にマイキングできるコンデンサー・マイクというのは数少ないような気がするので、これは非常に評価できることだと思います。まずはヘッドから4、5㎝のところにマイキングし、試してみます。第一印象はAUDIO-TECHNICAらしい、明るく、粘り強い、スピードのあるサウンドだということ。コンデンサーはややアタック重視な感じもありますが、基本的にはワイド・レンジで、いい結果です。しかしダイナミックに関しては、ややぼやける感じが残り、やはりヘッドの中にマイキングした方が良さそうです。

押し出し感がありつつ
レンジの広い音楽的なサウンド


ということで、ヘッドの中に突っ込んで使ってみましょう。想像の通り、ダイナミック・マイクのサウンドは、同社のATM25とほぼ同じ印象でした。明るく、粘りがあり、スピード感もあります。コンデンサーに関してはやや癖はあるものの、素晴らしく音楽を表現してくれるサウンドです。もちろん、ヘッドの中に突っ込めば、キックのアタック音が強調され、サウンドの抜けも良くなるのは当然ですが、それをこのように、耳で聴いた感じ、もしくはそうであってほしいという願望と同じように表現してくれるコンデンサー・マイクはなかなか無いと思います。バス・ドラムのヘッドの中というと、かなりのダイナミック・レンジと音圧があり、周波数のレンジも非常にワイドです。また、指向性もシャープでないと、無駄な胴鳴りを拾ってしまいます。さらにかなりの吹かれ(結構風圧があります)や振動がありますが、それらさまざまな問題をこのコンデンサー・マイクはクリアにしてくれます。また、パッと聴いた感じは派手ですが、EQをしてみると驚くのが、ワイド・レンジを余すこと無く拾っていて、欠落部分が全く無く自在にEQできることです。ですから、裏方にまわる音作りもできるし、メインの音作りもできるでしょう。そんなコンデンサーと押し出し感や、存在感を得意とするダイナミックが共存しているのですから、最強のコンビと言えるのではないでしょうか!せっかくですからバス・ドラムだけでなく、スネアにも使ってみましたが、結果はやはりバス・ドラムの方が向いているようです。しかしコンデンサーに関してはかなり良いサウンドでした。というか、ズバ抜けて好きなサウンドです。SHURE SM57のようなパンチ力はないものの、ナチュラルさという意味では素晴らしく抜けの良いサウンドだと確信します。しかし残念なのが、ダイナミックの高域の抜けに若干のストレスを感じてしまったことでした。バス・ドラムを意識しているので仕方がないと言えばそれまでですが、単体での結果はそんな感じでした。しかし、バス・ドラム同様、2つのサウンドを混ぜれば、コンデンサー単体よりもっといい結果が出ると思います。筆者的にはかなり好感触なレビューでした。以前にも、マイクロフォン産業の将来に残るのは個性と隙間産業だと書いた記憶がありますが、まさにこのAE2500にそれが当てはまると思います。機会があればAUDIO-TECHNICAのマイクロフォンをすべて試してみたいと思わせるほど、見事な製品を作るメーカーだと感心してしまいました。
AUDIO-TECHNICA
AE2500
オープン・プライス

SPECIFICATIONS

■指向性/単一
■周波数特性/コンデンサー:20Hz〜17kHz、ダイナミック:30Hz〜10kHz
■感度/コンデンサー:−51dB、 ダイナミック:54dB(0dB=1V/1Pa、1kHz)
■ダイナミック・レンジ/124dB(1kHz at Max SPL)
■外形寸法/55(φ)×165(H)mm
■質量/390g