近接収音に優れ、コンパクトなサイズが魅力のコンデンサー・マイク

AUDIO-TECHNICAAE3000

今回はAUDIO-TECHNICAから発表された“Artist Elite”シリーズの中からAE3000というとてもコンパクトな楽器用コンデンサー・マイクを紹介します。アメリカと日本のスタッフが共同開発し、現場の意見を反映したというこだわりのあるシリーズなのですが、ライブ・ステージ用途のイメージが強い本製品がレコーディングではどうなのかを早速チェックしていきましょう。

大口径ダイアフラムを搭載しながら
コンパクトなサイズを実現


まず手に取ってみてみると、手の平にすっぽり入るくらい非常にコンパクトで、“かわいいな”と思ってしまうほどです。24.3(φ)mmの大口径ダイアフラムを搭載しながらこのサイズを実現しているのは、現場のことをよく考えていると言えるでしょう。特に、一般的にコンデンサー・マイクはダイアフラムに対して周囲の編み目の部分が円形に近い形をしていますが、本機はダイアフラム付近でその編み目の部分がえぐられており、より音源に近い位置で狙いやすくなっています。本体にはローカットと−10dBのPADの切り替えが装備されています。最大入力音圧148dBと余裕もあるので、ボーカルからドラムのキックまでさまざまな楽器の収録に対応してくれそうです。指向性はカーディオイド(単一指向性)のみですが、その範囲はバランスが良く、コンデンサー・マイクを使い慣れている人なら何の問題もなくポイントをつかめるでしょう。また、付属のマイク・ホルダーはショックマウント・タイプではないのですが、コンデンサー・マイクでは不安な床などの振動を拾ってしまうという現象は気にならない程度に抑えられています。

上位機種にも引けを取らない
ふくよかでタイトな中低域〜低域


今回は筆者所有の同メーカーの上位機種であるAT4050/4047/4033などと比べてみます。音質的に一番近いと感じたのはAT4050で、AT4050がフラットな印象なのに対して本機は中低域〜低域辺り(周波数的には200Hzくらい)が若干盛り上がっていて、ふくよかでタイトな印象です。高域に関しては同メーカーの伝統のサウンド・イメージです。比較的フラットで、派手過ぎず、こもり過ぎず良くまとめられており、何にでも対応できる音質だと思います。まず、ドラムでオーバーヘッド、タム、スネアを試しましょう。ドラムのセッティング次第で、普通のコンデンサー・マイクでは大き過ぎて狙うことができないような場合でもコンパクトな本機では積極的に使用できます。音的には、特にタムに立てた場合、そのふくよかな鳴りとアタック感がうまく収録できます。オーバーヘッドでは、一般的に使われている高域をちょっとギラつかせた筒型のコンデンサー・マイクと違ってナチュラルな傾向なので、シンバル系を狙いつつ、ドラム・セット全体を拾うという場合にも使えそうです。これは同社の伝統でもあるのですが、全体的に極端な癖がなく、後でEQやコンプをかけたい場合などでも調整しやすい音になっています。次にギターをチェックしてみました。筆者はエレキギターの録音でコンデンサー・マイクを使う場合はAT4050をよく使うのですが、本機も傾向は同じで、若干低域がタイトな印象です。SHURE SM57などと組み合わせて使用しても、それぞれのキャラクターの違いをうまく混ぜることができます。ギラつかせたい場合はSM57を大きめに、太くしたい場合は本機を大きめになど、一度セッティングすれば後はミキサーの方で調整可能です。アコギでは筆者がよく使うAT4033と比べました。好みもあると思いますが、本機の方が若干ふくよかで鳴り過ぎる傾向があります。弾きまくるバッキングなどでは気にならないのですが、アルペジオ系ではもう少し繊細さが欲しいところ。ただ、あまりオフ気味にせずにマイク・ポイントをひと工夫すれば問題ないレベルです。さらに、ボーカルでも試しましょう。上位機種と比べてザックリとしたパンチの効いたボーカルでは本機の方が好印象です。ただ、ちょっと抜いたものや、繊細なものの場合は上位機種に軍配が上がります。もちろんこの辺はどのマイクでも向き不向きがあるので、その潜在能力を引き出す用途&セッティングを心掛けましょう。本機のライブ・ステージを意識したコンパクトな作りはレコーディングでもかなり重宝します。特にドラムとエレキギターの録音では、サウンドの面も含めて使えるバリエーションです。全体的にはオンマイクでのセッティングが好印象で、ガンガン鳴っている音でも無理なく音が拾えます。今回は1本しか借りられなかったのですが、機会があればステレオもしくはすべてのタムに使ってみたいと思いました。このほかにもArtist Eliteシリーズには、デュアル・エレメント型のAE2500など、気になるマイクが多数あるので、ぜひチェックしてみてください。
AUDIO-TECHNICA
AE3000
オープン・プライス

SPECIFICATIONS

■指向性/単一
■周波数特性/20Hz〜20kHz
■感度/−43dB(0dB=1V@1kHz)
■ダイナミック・レンジ/148dB
■出力インピーダンス/100Ω
■外形寸法/48(φ)×115.5mm
■重量/170g
■付属品/AT8471マイク・クランバー