1台でレコーディングまで可能にした多機能なギター用マルチエフェクター

BOSSGS-10

最近ギター・アンプ・シミュレーターがどんどん発売されていますが、その中でもこのBOSS GS-10は“GUITAR EFFECTS SYSTEM with USB AUDIO INTERFACE”と本体に書いてある通り、他製品とは全く異なったコンセプトで開発されていることが分かります。CAKEWALK Music Creatorというレコーディング・ソフトも付属していますので、GS-10をUSBケーブルでコンピューターにつなぐだけでいつでも録音できてしまうという優れものなのです。ここまで来るとギター・アンプ・シミュレーターというよりは、レコーディング・マルチエフェクターですね(笑)。普段僕は、アンプでしかギターを弾かないんですが、このGS-10、どこまで期待にこたえてくれるのか、早速試してみましょう!

ギター本体の個性を生かす
充実のアンプ・シミュレーター


最初に気になるのが本体に装備されたモニター・スピーカー。外部スピーカーにつながずギターを弾いてみると、予想を上回る音量にビックリ。これだけ出力があれば、レコーディング以外にも自宅練習用ギター・アンプとしても使用できますし、ライブのとき楽屋でちょっとフレーズの確認とか、ツアー中ホテルで曲作りなんてことも手軽にできそうです。もちろん、通常のギター・アンプ・シミュレーターとして使用もできますし、モニター・スピーカーのオン/オフもボタン1つの操作だけなのでとても簡単です。ヘッドフォン・アウトも装備してるので深夜の作業も安心ですね。僕の場合、電源をいろいろ入れて、配線をぐるぐるやってるうちにいつの間にかアイディアがどっか飛んでいってしまうことがよくあるので、この手軽さはとてもありがたいです。さて、肝心な音質の方ですが、プリセットでいろいろ弾いてみると、ややエフェクティブな印象を受けました。しかし、ディレイやコーラスといった空間系エフェクトを外して単純にアンプ・タイプを選んでみると、ギター・アンプ・シミュレーターとしてかなり良くできていると思いました。特に、MARSHALLやMESA/BOOGIE Dual Rectifierのような大型アンプをフルドライブさせた感じの音は本当に良いです。ROLAND JC-120のサウンドの再現性に関しては、説明の必要は無いですね。それと驚いたのが、これだけ多機能なのにギターのキャラクターが顕著に出ることです。最初GIBSON Les Paulで弾いていたときは、“大型アンプの音は良いけど、FENDER系アンプなどのクランチ・サウンドはやはり苦手だな”と思いました。しかし、シングル・コイル・ピックアップのギターで弾いてみると、コシがあってヌケのいい、とても気持ちの良いサウンドを得ることができるのです。出力の小さいギターを使うと、ピッキングのニュアンスやギター本体のボリュームの反応も素直な感じがしました。各パラメーターも非常に細かく設定可能なので、さまざまな用途に対応できるのがうれしいですね。にもかかわらず、説明書を見なくても簡単に操作できるので安心です。内蔵のリバーブだけでも5タイプから選べて、リバーブ・タイムやローカット、ハイカットなどが設定できます。これだけあれば自然なアンビエント感から深いリバーブまでバッチリです。そのほかのエフェクターも豊富に入っているので、スタンダードなモノから飛び道具的なアプローチまでいろいろ遊べますね。全体的な音質に関する個人的な感想としては、中低域がやや強めにセッティングされていると思いました。

コンピューターとの接続も簡単
どんな環境でもすぐ録音できる


それではGS-10をコンピューターに接続して使ってみようと思います。早速、CAKEWALK Music Creatorを使って録音してみようと思ったんですが、このソフトはWindows専用で、Macintoshには対応してないので断念……。EMAGIC Logic Platinum 6.1(Mac OS 9環境)で録音してみることにします。セッティングはOMSの設定をして、付属のASIOドライバーをASIOフォルダーに入れるだけ。後はGS-10をUSBケーブルでコンピューターにつなぐだけという、実際設定してて“もう終わり!?”って感じでした。本機は、2イン/2アウトのオーディオ・インターフェースを装備してるので、ステレオでギターを録音してみました。再生してみると、変な癖もなく普通に使えると思いました。驚くことに、マイクプリも内蔵してるのでボーカルのレコーディングもできます(XLR端子付き)。ベース・アンプも9タイプがモデリングされているので、ベースに関しても大丈夫だし、AUX INに接続すればシンセもOKです。最後に、付属のエディター・ソフト“GS-10 Editor”を使ってみて感動したのが、画面上にBOSSのコンパクト・エフェクター風の絵がズラリ!と並んでいること。欲を言えば、アナログ・ディレイなどの廃番になっているオールド・エフェクターもいっぱい入れてほしかったです。しかし、エフェクターの接続順や現在のアンプの設定など、すべてのパラメーターがとても見やすく使いやすいので、本体でツマミをいじくるよりさらに操作が簡単になります。エフェクターのオン/オフも画面上でLEDが光るのでかなりリアルだし、チューナー・ボタンを押すとBOSSのチューナーが画面に現れるので、本体の小さい液晶画面でチューニングしなくて済むのも大変助かります。コンピューターとGS-10さえあれば、どこでもレコーディング環境がそろうのには本当に驚きました。これだけの機能をそろえてこの値段、ハッキリ言ってパンチあり過ぎです。
BOSS
GS-10
オープン・プライス(市場予想価格/53,000円前後)

SPECIFICATIONS

■サンプリング周波数/44.1kHz
■AD/DA/24ビット
■接続端子/ギター&ベース(フォーン)、ヘッドフォン、マイク入力(XLR、TRSフォーン)、AUX IN L/R(RCAピン)、OUTPUT L/R(RCAピン)、ギター・アンプ・アウト、エクスプレッション・ペダル/CTLI、2、デジタル・アウト(コアキシャル)、USB、MIDI IN/OUT
■外形寸法/329(W)×85(H)×231(D)mm
■重量/2.25㎏