正確な定位と立体的な音場再生を実現したニアフィールド・モニター

PREMIUM SOUND DESIGNPS2208B-A

今回レビューするのは、PREMIUM SOUND DESIGNのスタジオ向けニアフィールド・モニター、PS2208Bです。同社は世界に通用するハイエンド・スピーカーを制作することを目的として設立された新進の国内メーカーで、最初の製品となる本機は2ウェイ・パッシブ・タイプ。ツィーターのユニット構成の違いで2タイプがあるのですが、今回はCANADIAN LOUD SPEAKER社のMaxシリーズのドライバー・ユニットを搭載したPS2208B-Aを試聴することになりました。

卓での反射を考慮したデザイン
キャビネットにも独自技術を凝縮


外観はフロント・バッフル面がやや上方に傾斜しているので少々風変わりに見えてしまうのですが、実はこの傾斜には意味があり、中低域の濁りを産み出すコンソールでの一次反射を抑制させるためのものだそうです。あくまでニアフィールド・モニターとしての使用を目的に設計されたものだと納得させられます。普通はこのままだと、バッフル面の傾斜分だけ音が上方に逃げていってしまうのですが、ツィーターの角度調節が可能となっていて、やや下方に向けて調節されています。つまり、ウーファーとツィーターが点音源に近づくようにセットされていて、このアイディアに感心させられました。ツィーターは、CANADIAN LOUD SPEAKER社との技術提携により独自に供給を受けた“NeoSilk”という新開発のユニットで、ドライブ回路に超強力ネオジウム磁石を搭載したソフト・ドーム・タイプ。30kHzまでスムーズに伸びる特性を確保しているそうで、DVD-AudioやSACDといった次世代ハイエンド・フォーマットを意識したデザインとなっています。ちなみに、姉妹機のPS2208B-Oには、MOREL社製の25mmのユニットが搭載されているそうです。このPS2208B-Aには、スピーカー・ユニットに限らず、さまざまな技術が凝縮されています。まず、ドライバー・ユニットの往復運動によってキャビネット内に生じる位相反転した不要波(=再生音を濁らせる原因)を効果的に減衰させる、MDSRSという特殊なキャビネット構造になっています。それに関連して、キャビネット材には従来のスピーカーよりもはるかに厚い木材を使用。またネットワーク基板には、オリジナルの銅板配線基板が採用されています。一般的なエポキシ樹脂ではなく強度の高い黒ベークを基板に使用し、基板配線も通常のパターン配線と比べて10倍以上の厚みを持つ極厚銅板をプレス加工して作成されており、音質劣化や熱問題を考慮し、高負荷時の大電流にも対応できる設計となっています。

次世代フォーマットにも対応し得る
自然で立体的かつ音楽的なサウンド


スペックから見ても、ニアフィールドながらかなり高品位なサウンドを意識してデザインされたスピーカーのようですので、その辺りをポイントに試聴してみました。パッシブ・タイプですので、今回はパワー・アンプにMARK LEVINSON No.23を使用してのチェックです。まず一聴して、再生される音の質感が高いことが分かります。ツィーターは、NeoSilkというその名称通り、きめの細かい絹のようなつややかさや潤いを表現してくれます。音源がCDであっても、ハイエンド部分の表現は従来の同クラスのものには無い滑らかな伸びを味わうことができ、長時間聴いていてもさほど疲れることがありません。また、ウーファーは130mmと比較的小口径ですが、ある程度のローエンドはきちんと表現されており、コンソールでの反射を考えてエネルギー・バランスをうまく取っているようです。逆に、コンソールが無い状態ではややローエンドのロール・オフが高めになるのではないかと思います。定位も分かりやすく、ノイズの見分け方も分かりやすいので、モニター・スピーカーとしての条件は十分クリアしていると思います。ただし、リスニング・ポイント(特に上下方向)が比較的狭いので、安易にセッティングをすると音色・バランス・位相が崩れるので注意が必要です。個人的には、わずかながら中低域の音像が大きく感じられて、残響なども少々多く感じるのが残念でした。とはいえ、同クラスのモニターではなかなかお目にかかれないような自然で立体的な表現のできる、高品質なスピーカーと言えるでしょう。また、DVD-AudioやSACDの再生でも、そのスペックを裏切らない再生表現ができますから、次世代フォーマットにうまく対応したスピーカーとしてもお薦めできます。モニター・スピーカーにありがちなクールなサウンド表現とは違い、音楽を楽しめる要素が十分あるのも、このスピーカーの魅力だと思います。たぶんこのスピーカーでサウンドを作り込んでいくと、従来のEQポイントやコンプの処理などが変わってくるような気がします。新しいサウンドが生まれるのではないか、そんな可能性を秘めたスピーカーの1つと言えるでしょう。今回は、スタジオでの使用を目的にデザインされたものでしたが、その潜在能力の高さに期待して、ホール録音向けにデザインされたものなどにもぜひ挑戦していただきたいと思います。
PREMIUM SOUND DESIGN
PS2208B-A
オープン・プライス(市場予想価格:180,000円/1本)

SPECIFICATIONS

■インピーダンス/8Ω
■能率/87dB(1.83V@1m)
■最大定格入力/130W
■周波数特性/40Hz〜30kHz
■クロスオーバー/3.8kHz
■外形寸法/190(W)×380(H)×330(D)mm
■内容積/8リットル
■重量/8kg(1本)