“1108サウンド”を受け継ぐソリッドステート式2chマイクプリ

UNIVERSAL AUDIO2108

現在、各メーカーからマイクプリ製品が数多く発売されており、それぞれが独自のサウンドを持っている。アメリカはカルフォルニア州、サンタクルーズにある老舗アウトボード・メーカーUNIVERSAL AUDIO(UREI)も、古くから個性的なサウンドの製品を売りに、その人気はいまだ衰えない。特にリミッターの1176LNは、同社のフラッグシップ・モデルとも言える製品で、ほとんどのプロ・スタジオで常設されている機材だ。今回紹介する2108は、2チャンネルのディスクリート/クラスA回路を搭載したソリッドステート式プリアンプで、同社のビンテージ・モノラル・アンプ1108をステレオ仕様に作り変えたという製品。残念ながら、筆者は1960年代の初頭に作られたビンテージの1108を使用したことはない。しかし、特徴のあるその音色はのちに1176LNを生み出すことにもなったのだという。2108は1176LNと全く同じ出力増幅用回路および、トランスを備えている。それを聞けば、何となく音の想像はつくが……早速、チェックしてみよう。

シンプルで扱いやすいパネル・デザイン
2系統あるHi-Z端子の音は好感触


まず、接続端子から。リア・パネルにはXLR入力(MIC IN/バランス)、XLR出力(LINE OUT/バランス)が2系統、加えて、フロント・パネルに楽器入力用のHi-Z入力(フォーン)が2系統装備されている。コントロール・セクションは1176LN同様にシンプルで、インプット・ゲイン、アウトプット・ゲイン、+48Vファンタム電源スイッチ、Z-IN SELECT(入力インピーダンス切り替え)、REVφ(位相反転)スイッチ、インプット/アウトプットのレベル・インジケーター切り替えスイッチのみだ。外観については、奥行きが30cm弱あり、重さが5.2kgと少々重め。デザイン的にはかわいいのだが、欲を言えばレベル・メーターは何とかしてもらいたい。“SIGNAL”と表示されたLEDは、レベルを検知し青く点灯する。このランプの光量の強弱でレベルを確認し、ピーク時はこれが赤く点灯する仕様になっているのだが、これでは、まるでウルトラマンのカラー・タイマーだ。なお、レベル・メーターは、LEDの横にあるスイッチで、インプット/アウトプット・レベル表示の切り替えが可能だ。電源については、専用のユニット(DC30)が別に用意されており、115/230V仕様となっている。使い勝手は1176LNと同様にシンプルで扱いやすい。インプット・ゲインは、11ポイントのロータリー・スイッチを採用。はじめは低めの設定にしておき、アウトプット・ゲインを可変ボリュームで好みのレベルまで上げていく、スタンダードな仕様ながら各ポイントの個性が非常に良い。ステップを上げれば上げた分、音が太くなっていく感じだ。ここは、コンデンサー・マイクを使用する際に、マイク本体のPadを−10、−20dBと切り替えて使ってみるのも面白いだろう。ちなみに、インプット・ゲインの最初の3段(25、30、35)は、Hi-Z用で、ゲイン・ツマミをこの位置にセットすると、XLR入力からの音はミュートされるようになっている。さて、このHi-Z入力だが非常に感触が良い。当然ながら音が良いという意味だが、エレキベースやフル/セミアコなどのような“音のコシが低い”ソースには最高である。中低域に伸びがあり、嫌なローは目立たなく、弦鳴りの部分が良い感じに強調されている。“本当にソリッドステートなの?”と思うくらいふくよかな感触だ。チェックした楽器の中では、特にエレキギターのフルアコ(もしくはセミアコ)のバッキングやソロなど、“甘い感じ”の奏法の表現に優れていた。機材のチェックを忘れ、小一時間もギターを弾いてしまったくらいだ。また、このHi-Z入力端子には“Z-IN SELECT”と呼ばれるスイッチが装備され、ここではハイ/ローのインピーダンス切り替えができる。つまり、本機をシンセやリズム・マシン、エレキギター/ベースなどのDIとして使うことができるのだ。

ハイファイでコシがあり
中低域が心地よく締まったサウンド


今回のチェック期間中、筆者のバンドである電車のレコーディング作業があり、スーパー・ドラマーの小畑ポンプ氏とスーパー・ベーシストの佐藤研二氏の協力を仰ぎ、本機をいろいろなソースで試してみた。まず、ドラムのマルチ録音。比較対象になるマイクプリは無かったが、とりあえずキックとスネアにマイクを立て本機をチェック。マイクは、キックにはAUDIO-TECHNICA ATM-25、スネアにはSHURE SM57というオーソドックスなチョイス。コンプ/EQは使わずマイキングのみでサウンドの感触を試してみた。結果、チューニングの良さもあるが、ハイファイで非常にコシがあり、中低域が心地良く締まっていた。キック、スネアを1176LNにスルーさせて録る手法があるが、まさにその雰囲気プラスαという感じ。また、インプット・ゲインを若干上げ目にしたときも心地良いコンプ感が出ていた。次にベースだ。アンプはMARSHALL Super Bassで、マイクはAUDIO-TECHNICA HYP-180Bを使用。HYP-180Bは低域に特徴のあるマイクだが、これも印象は良い感じ。その結果、中低域から高域のヌケはマイク特性の感じがそのままで、2108独特のハイファイさが低域を伸ばして締め、指弾きのアタック音でスピーカーが震える近接感までも拾うことがきた。なお、NEUMANN U87で歌録りも試したが、奥行き感が非常にあり、ハイのヌケが良い。クセのある帯域も特に無く、幅広いレンジの良いポイントで締まりを感じた。今回は、いろいろなマイクで本機を試したが、“マイクを選ばないロックなマイクプリ”という印象。ぜひ、チャンネル分そろえてドラムのマルチ録音を行ってみたいところだ。幅広い用途向きのマイクプリであるため、プロ・スタジオの常設機材にお勧め。また、ガッツのある音を好むエンジニアにも大推薦だ。

▲リア・パネル。左端が電源コネクター、その右にXLR入力(MIC IN)、XLR出力(LINE OUT)が2系統

UNIVERSAL AUDIO
2108
260,000円

SPECIFICATIONS

■周波数特性/20Hz〜20kHz(±0.5 dB)
■最大入力レベル/+8dBu
■最大出力レベル/+26dBu
■最大ゲイン/65dB
■入力インピーダンス/1kΩまたは、4kΩ(XLR)、58kΩまたは、2MΩ
■SN比/EIN −165dB@65dB Gain
■外形寸法/483(W)×44(H)×292(D)mm
■重量/5.2kg