しっかりした低域収音が魅力の低価格コンデンサー・マイク

ELECTRO-VOICECobalt CO11

PAやレコーディングなどのプロフェッショナルの現場でも定番マイクとなっているRE20やN/DYMシリーズなどで有名な老舗メーカーELECTRO-VOICEから、昨年登場したハイコスト・パフォーマンス・マイク・シリーズ、Cobalt。既にCobalt CO4/CO5/CO7/CO9といったダイナミック・マイクがラインナップされている同シリーズに、最上位機種であるCobalt CO11(以下CO11)というコンデンサー・マイクが加わりました。早速レポートしていきましょう。

ボーカリストにうれしい
低ハンドリング・ノイズ設計


写真からもお分かりの通り、CO11はハンドヘルド・スタイルになっています。レコーディングにもライブにも、現場を選ばずに使用できます。見た目もダイナミック・マイクのCobalt CO7とほとんど同じで、見るからに耐久性に優れた感じです。ボディが細いので握りやすく、292gと重量も軽いため、ヘビー・デューティな使用にも耐え得るものだと思います。このCO11はコンデンサー・マイクなので、使用するにはファンタム電源が必要です。では、CO11をミキサー(もしくはマイクプリ)につないでファンタム電源のスイッチをオン(このときコンデンサー・マイクを使い慣れていない方は注意してください。ファンタム電源を入れるときは、必ずマイクをつないだ機器をミュートして、モニターから音が出ない状態になっていることを確認してからオンにしてください。そうしないと突然大きなノイズが発生して機材を破損してしまう恐れがあります)。では、実際にサウンドのチェックに入ります。まずは、入力レベルをチェックしてみます。ミキサーのレベル・メーターを基準にダイナミック・マイクのSHURE SM58と比べてみると、CO11の方が出力が大きいようです。サウンドの印象としては、嫌みが無く低価格なマイクにありがちな作り込んだジャキジャキした感じもありません。スペックよりもフラットで、ナチュラルな印象でした。低音から高音まで、広帯域の音をしっかりと拾ってくれる感じです。このマイクの特徴としては、メーカー側も掲げている通り、“低音の近接倍音効果が得られる”という点が挙げられます。これは決してブーミーではなく、有効に低音を拾えるといった感じで、ダイナミック・マイクのように、マイクから少し離れただけで低音が薄くなってしまうようなことがなく、ナチュラルに音を拾うことができます。CO11はハンドヘルド型なので、どちらかというとオンマイクでのセッティングを前提として設計されているのでしょう。まずボ−カルで試した感じですが、ハンド・マイクで使ってみると、予想以上にハンドリング・ノイズが少ないことに驚かされました。これは、ライブで使用する際、マイクを持ち替えたときなどの“カタカタ”“コンコン”といった余分なノイズの発生が少なくなり、ボーカリストの声のみの音作りに集中できる大事な部分です。この点は特に素晴らしいですね。ウィンド・スクリーンを外してみると、マイクのユニットの根元が防振ゴムでしっかり支えられていました。ナルホド!! そして、先述した近接倍音効果も優れていると感じました。ライブ時には、大音量のオケの中でも十分に声の低音を拾ってくれるので、バックの音の回り込みをミキサーのローカットなどで処理すれば、ボーカルをクリアかつ太い音でPAできると思います。大音量のオケの中で、モニター・スピーカーからボーカルを返したときもクリアな音質で、嫌なピーク成分も無く、ハウリングなどのフィードバック・コントロールが容易にできる印象が強かったです。個人的には、女性ボーカルとのマッチングが良く、キンキンせずに声をつやっぽく拾えると感じました。

その場の空気感を自然に拾う
原音に忠実なサウンド


次に、アコースティック・ギターにオンマイクでCO11を立てて使ってみました。アルペジオ、カッティング、かき鳴らしなど、いずれの弾き方でも弦の音やボディの鳴りを十分に拾ってくれて、生音の迫力をとらえることができました。良い感じです。例えばNEUMANN U87やAKG C414などダイアフラムが大きいマイク特有のハイファイな感じではないのですが、その場の空気感を自然に拾ってくれるので、宅録などにも有効だと思われます。ライブでもペラペラな音にならず、また回り込みも少なく原音に忠実なサウンドでした。今回は試すことができなかったのですが、ウッドベースやチェロなどの低音弦楽器にもお薦めできると思います。さらにパーカッションにも使ってみようということで、タブラ、ジャンベ、カホンに立ててみました。それぞれオンマイクで立ててみたのですが、タブラの低音や演奏者の指のニュアンスを見事に拾ってくれました。ジャンベとカホンでは、演奏者が思いっ切りたたくと多少ピークが強くなってしまったので、少しオフマイク気味にセッティングしてみたのですが、質感を損なうことなく音を拾ってくれて、これまた好印象。コンデンサー・マイク特有の空気感を再現できました。レコーディング(特に宅録)でも十分有効だと思います。このCO11は、高価なコンデンサー・マイクと肩を並べるほどハイファイという印象はありませんでしたが、これだけの性能を持っていながら20,000円という価格はとても魅力的です。ライブ/レコーディングを問わず、さまざまな環境で利用できるマイクとして、驚異的なコスト・パフォーマンスを実現していると思います。
ELECTRO-VOICE
Cobalt CO11
20,000円

SPECIFICATIONS

■指向性/単一指向
■周波数特性/50Hz〜20kHz
■出力インピーダンス/250Ω
■ダイナミック・レンジ/113dB
■外形寸法/53(φ)×173(H)mm
■重量/292g