System6000のアルゴリズムを引き継いだ高品位なステレオ・リバーブ

T.C. ELECTRONICReverb4000

幾つもの魅力的なデジタル製品を出しているT.C. ELECTRONICからReverb4000というステレオ対応のリバーブ専用機が発売された。定評のあるSystem6000の高品位なリバーブを1Uサイズのモジュールに詰め込み、単体でも使用できるようにしたものということで、個人的にも期待していたのだが、今回チェックをする機会に恵まれた。デザイン、ネーミングからも同社のM3000と比較してみたくなってしまう製品だが……早速チェックしていきたいと思う。

本体+エディター・ソフトの併用で
快適な操作性を実現


まず、Reverb4000はSystem6000のステレオ・リバーブを搭載し、T.C. ELECTRONICの最新ステレオ・リバーブ・アルゴリズム“Reverb4”、M5000のプリセットおよびアルゴリズム、System6000、M3000のプリセットから厳選されたものなど搭載したモデルである。また、サンプリング周波数は32/44.1/48/88.2/96kHzに対応し、ビット・デプスも24ビット対応ということで、アナログではもちろんのこと、DAW上での作業がメインとなる場合でも、重くなりがちなリバーブのプラグインをハードに任せるなどのメリットも大きい。デジタルで96kHz接続できる製品を待っていた方も多いのではないだろうか。本体も1Uサイズとコンパクトだし、つまみの数も少ないので、特にマニュアルも見ないでとりあえず使い始められるだろう。実際、一通り触ってみれば、だれにでも使えるような分かりやすい設計になっている。次にフロント・パネルを見ていこう。右の大きなダイアルでプリセットを選ぶのだが、プリセットを読み出すと液晶ディスプレイにプログラム名とアルゴリズム、さらにPRE DELAY、DECAY、HI DECAYというよく使う3つのパラメーターが表示され、とても見やすい。これらは中央の3つのダイアルで直接操作することが可能で、ほとんどの場合はこれだけで事足りるのだが、ほかのパラメーターもPAGEをめくるごとに割り当てられており、とても使いやすい。そのほかには入力/サンプリング周波数/ディザなどの変更ができるI/O(サンプリング周波数や入力ソースに関してはメータの横のLEDで確認可能)、ここを押せば最初のページに戻ってくれるHOME、UTILITYやRECALL、STORE、WIZARD、ENTER、BYAPASSなどのシンプルな内容。とは言っても必要なものはフロント・パネルに出ており、ゴチャゴチャしたスイッチや深い階層構造が苦手な人には最適な設計だろう。この中のWIZARDは面白い機能で、150ものファクトリー・プリセットの中から欲しいものを探し出すときに役に立ってくれるものだ。この機能はT.C. ELECTRONICでは伝統的なものらしく、カテゴリー別のプリセット検索を瞬時に行うことができ、System6000やM5000、M3000といった機種別、Vocal、Strings、Brassなどの音色別、Large、Mediumなどの広さなどを選ぶことで、プリセットの中から使用目的に見合ったものを選んでくれるというものだ。次にリア・パネルには、XLRのアナログ入出力やAES/EBU/S/P DIFなどの豊富なデジタルの入出力、さらにUSB端子を用意。このUSB端子を使ってコンピューターと接続することで、ディスプレイを使ったエディットが可能となっているわけだ。なお、付属専用エディター・ソフトであるTC Icon EditはWindow 2000/XP/ME対応で、まだ正式なアナウンスはないが、今後Mac OS Xにも対応を予定している。TC Icon Editのコントロール画面はSystem6000のリモート・コントローラーのような感じでとても使いやすい。一般的なスタジオではモニター・スピーカーの前などに本機を置いて各パラメーターをいじれる環境はあまりないので、このような機能はとてもありがたい。本体/エディター・ソフトは常にリンクしているので、どちらでも変更できるのだが、レベルなどを大きなモニターで確認できたり、DAWソフトなどを使った作業ではプラグイン感覚で画面を切り替えて使えるなど、非常に大きな魅力だ。

スタジオのメイン・リバーブになり得る
きめ細かなナチュラル・サウンド


さて肝心の音質だが、期待通りというか、とてもきめ細かくナチュラルなサウンドを聴かせてくれる。L/Rチャンネルに独立したリバーブ処理が行われているためか、定位なども自然で、奥行き感も申し分のないもの。今回はM3000と同時にはチェックできなかったのだが、強いて言えばM3000もよりもさらに立体的な印象である。ただ、ジャンルによってはクリア過ぎるということもあるかもしれないので、ぜいたくを言えば使い分けたいものである。Reverb4000は先述のアルゴリズム、プリセットをはじめ、EMTなどの往年の名機をシミュレートしたプリセットなどもあり、スタジオで使用するメイン・リバーブとして申し分ない製品であると言える。ちなみに、個人的に気に入ったプリセットは“Reverb4”を使用しており、これだけでも十分魅了的だと言えるだろう。加えて、Reverb4000は32〜96kHzに対応しているので、いろいろサンプリング周波数を変えたり、クロックを入れてみたりしたのだが、素材によっては96kHzよりも44.1kHzの方がなじむものもあったりするのだ。これだけでもニュアンスががらりと変えられるので、曲に合わせていろいろと試してみるのも面白いだろう。さて、チェック後の率直な感想だが、さすがT.C. ELECTRONICの製品といったところ。ただ、高価な製品なのですぐに手を出せるものではないが、System6000の価格を考えれば待望の製品と言えるだろうし、機会があればぜひ一度使ってみてほしい。そうすれば、Reverb4000の価値がきっと分かると思う。

▲リア・パネルの接続端子。左からアナログ入出力(XLR)×2、デジタル入出力(ADATオプティカル、S/P DIFオプティカル)、Sync In(RCAピン)、デジタル入出力(XLR、AES/EBU)、デジタル入出力(S/P DIFコアキシャル)、MIDI IN/THRU/OUT、USB

T.C. ELECTRONIC
Reverb4000
480,000円

SPECIFICATIONS

■周波数特性/デジタル:DC〜23.9kHz(±0.01dB@48kHz)、DC〜47.9kHz(±0.01dB@96kHz)、アナログ:10Hz〜20kHz(+0/−0.5dB@48kHz)、10Hz〜45kHz(+0/−3dB@96kHz)
■サンプリング周波数/32/44.1/48/88.2/96kHz
■AD/DAコンバージョン/24ビット(6.144MHz △Σ@48/96kHz)
■レイテンシー/デジタル入出力時:0.2msec@48kHz、アナログ入力時:0.8msec@48kHz、0.4msec@96kHz、アナログ出力時:0.57msec@48kHz、0.28msec@96kHz
■最大入力レベル/+22dBu(バランス)、−10dBu(@0dBFS)
■最大出力レベル/+22dBu
■全高調波歪率/アナログ入力時:−95dB(0.0018%)@1kHz、−6dBFS(FS@+16dBu)、アナログ出力時:−82dB(0.008%)@1kHz、−6dBFS(FS@+16dBu)
■外形寸法/483(W)×44(H)×208(D)mm
■重量/2.35kg