ライブでのシステム構築の可能性を大きく広げる総合コントローラー

DBXDriveRack 260

本誌1月号でも紹介した、米DBX社製サウンド・システム総合コントローラー、DriveRack PAの上位機種、DriveRack 260が発売された。コンソール・アウトからパワー・アンプの間には、これ一台で十分(メーカー談)という、超ハイコスト・パフォーマンスな機器だ。早速チェックしよう。

プロの現場での活躍が期待できる
フィードバック・サプレッション


●I/O部
上位機種なのに民生機とのレベル・マッチングを取りやすくするための、入力レベル切り替え(−10dB→+4dB)が、本機にも付いている。さらに、前回レポートしたDrireRack PAには付いていなかった、アウトプットのミュート・スイッチが付いた。スピーカー・システムの帯域ごとのチェック時に便利なのは言うまでもない。●グラフィックEQ部
1/3oct、28バンド、左右独立およびLRリンク可能。DrireRack PA同様に、デジタルEQの特徴である、固有の色付けを伴わない極めて正確な動作をする。無味無臭な感じ......。●AFS(アドバンスド・フィードバック・サプレッサー)
自動ハウリング抑圧機。最狭1/80octという、とても急峻なノッチ・フィルターを12系統も装備。フィルターの帯域幅は1/5oct(スピーチ・モード)から、先述した1/80oct、Q=116まで設定可能。このフィルターは、一般的な周波数固定式でも使用できるし、ライブ・モードと呼ばれる自動追尾型も備える。これは、ハウリングが始まりかけている周波数を見つけ、フィルターのポール(カット周波数)を可変し、ハウリングを止めてしまう機能。最狭1/80octのニードル・フィルターと言えども、12カ所穴を開けられたのではたまらないと思う人には、自動フィルターの形成数を制限できることを付け加えておく。さて、このライブ・フィルター、非常にうまく動作するのだが、さすがにフィードバック奏法をしているエレキギター音と、マイクとスピーカー間で起こっているハウリング音の判別は難しいようで、けなげにフィードバック音の帯域をカットしようとした。ただし、例えばミュージカルの現場のように、オペレーターの目の届かないところにあるモニター・スピーカーの前を、仕込みワイアレス・マイクを付けた役者さんが横切るようなとき、あるいは場面転換で音場が変わりハウリング・ポイントが変わるようなときにはとても便利だろう。そして驚くべきことに、これらのフィルターは、5秒〜60分を経過すると自動的に解除する設定すらできる。我々が普段、ほとぼりが冷めたころに少しずつ戻していくテクニックを、機械がやってしまうのだ。●サブハーモニック・シンセサイザー
原音に含まれる50〜116Hzの成分から、28〜56Hzの重低音を作り出す機能。同社の特許技術。●コンプレッサー
同社製コンプは、オーバーイージー(ソフト・ニー)回路が売り物だが、そのソフト・ニーの具合を10段階に可変可能で、プログラムの性格に合わせた自然な音作りが可能。●クロスオーバー・セクション
最大でステレオ3WAYから、フルレンジ・システムにサブウーファーをモノラルで加えるモードまで設定可能。各バンドにフルパラメトリックEQまで付いているので、特に高域は、ホーンの指向角度に合わせた補正にも使える。●ピーク・ストップ・リミッター
スピーカー・ユニットを瞬間的な過大入力から守るために有効。これも3バンド独立で内蔵。

大規模ページング・システムにも
対応する強化されたディレイ機能


●タイムアライメント・ディレイ
スピーカー・ユニットの振動板の前後の位置を電気的に合わせる機能。最大ディレイ・タイムは10msec、3.4mまでの補正が可能だ。この機能に関しては、DriveRack PAと同等なのだが、本機では入力段にも最大100msecのディレイが組み込まれたため、メイン・システムから最大34m離れたところに設置されたディレクター・スピーカーへの送りが可能になった。もちろんその場合、メイン用とディレイSPシステム用と2台必要にはなるが、大進歩。今回ディレイ機能はさらに強化されていて、本機を6系統のページング・システム(ホールの構内、駅や空港、スタジアムの音響など、いわゆる呼びかけシステム)マネージャーとして使用する場合、最大2.7秒のタイム・アライメントが可能になった。SPシステムへの送りはフルレンジになるが、6つあるアウトプットごとに、EQやリミッターが内蔵されている本機であれば、素晴らしいペイジング・システムが設計できるだろう。●AGC(オートマチック・ゲイン・コントロール)
新たにAGCも装備された。ソースの音量差を無くす機能である。無音時に、ノイズを拡大してしまわないよう、ゲート機能も付加された。●RTA(リアルタイム・アナライザー)&PA Wizard
リアパネルに測定用MICインプットがあり、使用中、いつでも28バンド・スペアナ表示が可能。PA Wizardには、各スピーカー・メーカーの機種ごとの最適なセッティングがデータとして入力してある。パワー・アンプに関しては、入力感度を含めたデータ管理がなされている。ここまでは、DrireRack PAと同様だが......。●RS-232 PC GUIコントロール
本機とPC間でデータの送受信が可能になったため(接続はDB-9タイプ・コネクター)、本機のエディットをPC上で設定でき、新しく発表になるPA Wizardデータも、ダウンロードできるようになった。自分のデータを持ち歩くエンジニアも出てくるだろう。スペアナ画面も見やすくなる。●ゾーン・コントローラー
別売りのゾーン・コントローラーと専用ケーブルを使うと、最長1,219m離れた場所でのミュートおよびボリューム・コントロールが可能になる。詳細は今回チェックできなかったので申し訳ないのだが、前述したページング・システムを設計する際に有効なものなのであろう。コントローラーの価格は1万円を切るようだ。音楽用システムとしても、ページング用システムとしても、本機のコスト・パフォーマンスは、相当高いものと言える。防災等級に関しては不明。デジタル機なので、水と熱暴走には気を付けよう......。AD/DAは今回も手抜き無しで◎。
DBX
DriveRack 260
120,000円

SPECIFICATIONS

■入力インピーダンス/>40kΩ
■出力インピーダンス/120Ω
■最大入力レベル/+20dBu
■最大出力レベル/+20dBu
■サンプリング周波数/48kHz
■周波数特性/20Hz〜20kHz、+/−0.5dB
■外形寸法/483(W)×44(H)×150(D)mm
■重量/2.4kg