ベース・マネージメントを備えたメイン+サブウーファー2.1chモニター・システム

BLUE SKYSky System One

筆者はライブ・ミックスDVD、映画のサントラなど5.1chサラウンドのミックスを既に何度も経験している。さらにクラブ系音楽のミックスでラ−ジ・モニターにサブウーファーを加えることもあったため、サブウーファーをモニタリングで使用することに抵抗はなく、“ふーん、サブウーファーを含む2.1chシステムなんだ……”とあまり深くは考えずにいた。しかし、想像はあくまでも想像に終わり、反対に新たな発見に遭遇するとは……やはり百聞は一見に如かず、いや、百見は一聞に如かずとはよく言ったものだ。

THXpm3を取得した確かな品質
ベース・マネージメントを装備


BLUE SKYは気になる存在だ。それは1つに同社設立の主要メンバーが何とDYNAUDIO、MEYER、KRK、M&Kなどの設計者やマーケティングのメンバーであること。そして本製品がルーカスフィルム認証のTHXpm3を取得しているからだ。THXpm3はマルチメディア制作のためのプロ規格で、スタジオ設計の細部にまで規定があり、もちろん認定を受けたモニター製品だけが導入される。よって本製品はかなりの実力を持ちワールド・スタンダードなサラウンド・スピーカー・システムということだ。今回紹介するSky System Oneはパワード・モニターSat 6.5+サブウーファーSub12から構成されるモニター・システムだ。本体にはベース・マネージメントを統括しており、開発者によればサブウーファーを加えることで全帯域において解像度の高いフルレンジ・モニタリングを実現させているとのことだ。チェックの前に、まずセッティングについて。サブウーファーと聞くと一瞬、面倒なベース・マネージメントの調整が頭に浮かぶが、本製品はパワード・モニターということもあり非常に簡単。ほとんど調整の必要は無く工場出荷時に最適にキャリブレーションされている。Sub 12で調整するのは位相切り替えとレベルだけで、Sat 6.5の方はSub 12経由で信号が送られる際に80Hzからローカットされるようになっている。サブウーファーの設置場所だが本製品は2.1ch構成なのでセンターのコンソールの裏側に置くことにした。設置場所に関しては今までの経験上、部屋や機材のレイアウトなどによってもかなり違うので、トライ&エラーを繰り返すしかないと思う。場合によっては自身の背後に置くこともあるぐらいで規則はない。今回のチェック環境ではセンター設置で問題は無さそうだ。レベルについてはSPLメーターなどで正確に計測できれば問題無いが、今回は自分の耳を信じて設定した。

ニアフィールド・モニターながら
奥行き感と落ち着きがある音質


では、実際聴いてみての印象だが、思いのほか素直で地味な感じを受けた。自分の中でサラウンドやサブウーファー、イコール“派手なサウンド”と勝手な思い込みがあったのかもしれないが、Sat 6.5はエンクロージャー自体のサイズも手伝ってか、16.5cmウーファーと2.5cmツイーターのつながりが非常に良く、まるで同軸フルレンジのユニットで聴いているかのようであった。またDIMをかけたような小さな音量でもすべてのバランスが非常に良い。製品によっては物足りなさや、コーン紙を使用している場合だとウーファーの“紙っぽさ”が気になるが、本製品は普通の音量で聴いたときのような説得力と奥行き感がある。瞬間的に考えたのは“こんなに小さい音でミックスできたら、上がりはいいかもしれない”だった。なるほど。プロ・ユースであるというメーカーの主張がすぐに分かった。堅実なベース・マネージメントを備えたフルレンジのリファレンス用モニター・システムである。そのためサブウーファーがどうのこうのと考えず、いろいろなソースや簡易的なミックスを試してみた。それらの印象だがニアフィールド・モニターながらとても奥行き感があり、特に空気感や残響音のミッド・ローへ沈んでいく深みの表現力はラ−ジ・モニター並みにあるというもの。また定位感が素晴らしく、ベースなどの低音楽器もかちっと決まってくれた。ただ、アコースティック・ピアノのソロ(クラシックのような)を聴いたときだけは、若干の低域での定位の濁りを感じた。また、パッと聴き地味だが、明らかにYAMAHA NS-10Mには無い落ち着き感がある。今回のチェックでは5.1chサラウンド・ミックスを体験できなかったが、試しにセリフを聴いてみたところ、さすがに表現力豊かで温かいリアルなサウンドだった。機会があれば、ぜひ5.1chサラウンド・ミックスでも使ってみたいシステムと言えよう。

▲Sub 12のリア部にある接続端子類、調整ノブ/スイッチ

BLUE SKY
Sky System One
Sat 6.5:110,000円(1本)
Sub 12:138,000円

SPECIFICATIONS

【Sat 6.5】
■周波数特性/200Hz〜10kHz
■最大入力レベル/+24dBu(バランス)
■外形寸法/203(W)×305(H)×260(D)mm
■重量/12.2kg(1本)
【Sub12】
■周波数特性/30〜200Hz
■最大入力レベル/+24dBu(バランス)
■外形寸法/406(W)×457(H)×508(D)mm
■重量/28kg