NEVEデザイン・プリアンプを備えたISAシリーズ待望の4chマイクプリ

FOCUSRITEISA428 Pre Pack

最近"本当にアレいいの?"と電話で問い合わせが来たりします。その後、本人は安心して購入したようですが、私は真実しか書いてません(笑)。そのFOCUSRITE Platinum RangeのVoiceMaster Proのレビューを書いたのがつい先日のことですが、今度は同社のISA Rangeから4chマイクプリISA428 Pre Packが発売されました。この時期にあらためてISAシリーズから本機をリリースした意味とは一体何なのか? これらも併せて探りつつチェックしていくことにしましょう。

24ビット/192kHz対応の
デジタル出力モデルもラインナップ


ISA RangeはFOCUSRITE創設時から存在する定評あるシリーズです。本機には4chのNEVEデザインのトランス・ベース・プリアンプが装備されており、それぞれマイク/ライン/インストゥルメントの切り替えが可能です。マイク入力時には4種類のインピーダンスの切り替えが可能で、ファンタム電源、フェイズ・リバース、ハイパス・フィルター、インサート端子(パッチ・ベイに立ち上げても音質に有利なオン/オフ・スイッチ付き)が搭載されています。端子はマイク入力と出力がXLRで、ほかはフォーンとなっています。今回の試聴機には搭載されていませんが、FOCUSRITE独自のアナログ・ソフト・クリップ・リミッター&24ビット/192kHzの8ch ADコンバーター(DIGIDESIGN 192 I/Oと同等のコンバーター・チップを使用)を備えたデジタル出力モデルもあるそうです。このモデルは、AES/EBUまたはS/P DIF対応のD-Sub9ピン、さらにADATオプティカル(共にダブル・ワイアー対応)を備え、8chのADコンバート&デジタル出力が可能です。本機の特筆すべき注目点としては、先述した4種のインピーダンス切り替えと、1MΩものロードがかかった超ローインピーダンス受けインストゥルメント入力(FET回路)の装備が挙げられるでしょう。また、本機はシンプルな4chマイク&ライン・プリアンプとして使用することができ、さらにデジタル出力モデルの場合は4chマイク&ライン・シグナル+4ch外部ライン入力の信号を8chデジタル出力可能。しかもダブル・ワイアー時には最高192kHzに対応します。

音の性格を変化させる
4つのインピーダンス・モード


今回のチェックにはシンクシンクレコードのアーティスト、村上ユカさんにボーカルで協力していただきました。オケにアルバム『はなうたち。』収録の「砂山」のマスターDAT(!)を使いましたので、かなりシビアなチェックができました。マイクはNEUMANN U87を使用しています。まずは録音レベル設定です。本機はリボン・マイクにも対応できるよう、最大80dBの増幅が可能となっていますが、アナログ・ピーク・メーターとLEDメーターを備えているのでレベル調整時も安心感があります。試しに、マイク入力を本機で60dB増幅してみると、サビでピーク目いっぱいな状態に。ところが、その音圧感、音の芯、低音の駆動&トレース感がNEVE 1073のそれとかなり似ていることに気付きます。ふわっとしつつも安定感があり力強さのあるあの感じです。ただし、ここは増幅度によって評価が異なる可能性があるかもしれません。さらに、ハイパス・フィルターはザクッと入れても繊細な滑らかさが消えるようなことがありません。これは良い音質です!さて、今回は特に各チャンネルに4種類用意されているインピーダンス各設定値モードでの音の違いに耳を傾けてみました。その4種類のモードは①LOW(600Ω)、②ISA110(オリジナルNEVE入力ステージZオーバルネットワーク/1.4kΩ)、③Med(2.4kΩ)、④High(6.8kΩ)です。説明書を見ると、①〜④までの音の傾向が書いてあったのですが、私の感想のそれとは逆だったのでちょっと戸惑いました。が、これはこれと言うことで、私の感想を書いておきます。①の音はかなり開放的で温かく、間口の広い音がします。古くさく懐かしくも感じ、中域の厚みと優しさはU87と思えないほどでした。②の音は、①に比べると突然コシが入り落ち着きます。私の中の"No.1 FOCUSRITE製品"であるISA115には及びませんが、値段の差こそあれ、音の方向性は似ているかもしれません。③の音は、今度は突然、閉塞感のある音に。しかし、よく聴くと立ち上がりがシャープで①②に比べて音の受動反応が速くなっています。④の音は一番反応がシビアな印象で、パルシブな音には一番リニアに反応していますが、若干高域が強調されてもいます。と書いてみたものの、コンデンサー・マイクに対してのこれらインピーダンス値の違いによる音の変化は結構、微妙な違いです。時間の関係上リボンやダイナミックでチェックできなかったのですが、ハイインピーダンスのマイクであったなら、違いはより顕著だったかもしれません。音の性格を変えるこのインピーダンス切り替えが、フロント・パネルで簡単に変えられるのはいいですね。それにしても、定評通りのISA音質。ハイサンプリング・レート&DAW全盛の今日に合わせリリースされた本機で、携帯性に優れ小スペースでかつ大規模なシステムが組めるでしょう。中継用モービル車などにも向いてますね。チャンネル当たりで見ると安価なので、一度チェックしてみることをお勧めします。DIGIDESIGN Control︱24のヘッド・アンプ部設計からも分かるように、FOCUSRITEのターゲットはDAWマーケットへと移行しようとしていることがうかがえます。DAWの大流行に機器メーカーはコスト削減と小容積化を迫られ、音質との戦いに悩まされていることと思われます。しかし、ISAシリーズはさらに滑らかで力強く良い音でした。早く世の中に平和が戻り、これらのオーナーになれる日を夢見て頑張って精進しましょう。
FOCUSRITE
ISA428 Pre Pack
320,000円

SPECIFICATIONS

■周波数特性/20Hz〜120kHz
■ゲイン/60dB(Mic)、+18dB/-18dB(LINE)、30dB(Inst)
■高調波歪率/0.003%
■S/N/125dB
■外形寸法/481(W)×85(H)×251(D)mm(突起部含まず)
■重量/約6.5kg