ロータリー・フェーダーを採用した真空管搭載ハイエンドDJミキサー

ALLEN&HEATHXOne:V6

昨年から話題になっていたALLEN&HEATHのロータリー・フェーダー式DJミキサー、XOne:V6がようやく国内上陸を果たした。早速テストする機会を得たので、ここに紹介していこう。

真空管回路も備えた入力部
大型VUメーターで視認性も良好


主にハウス系のDJに重宝されるロータリー・フェーダーを備えた本機は、入力6系統仕様。各入力チャンネルが2系統の入力切り替えに対応し、計12ステレオ入力まで対応している。ch5〜6には真空管回路まで搭載されている。各チャンネルにはLEDメーター、マスターにはVUメーターを備え、現場での使い勝手も良さそうである。"各チャンネルがうまく簡素化されていながら、必要なものがついている"というのは簡単そうで難しいことなのだが、全体的になかなかまとまっていて好感が持てる。マスター・セクションには小振りのノブが多数付いていて、左からマスター、マイク、ブース・モニター、ヘッドフォンの各セクションとなっている。それぞれにボリューム、EQが付いていてこれも使いやすそう。ヘッドフォン・セクションでは、マスターとモニターの音の混ざり具合が調整できるようになっていて、モニター・スピーカーが無いDJブースなどでは重宝しそうである。......と、いろいろスペックを書いてみたが、結局一言で言って"かっこいい"。これに尽きる感じ。今までのハウス系DJミキサーにも、20世紀の遺産UREI 1620に迫る物は結構あったのだが、どれも少し安っぽかった。機能的にはいいとこまで行ってるのだが、DJ心から見て、見かけでまず"超えてないな!"と思わせるものが多かった。でもこれは見かけから"これはいけるんではないか!"と思わせるところがまず第一にいい。やはりDJの職業柄というか、見かけも重要なのである。

フェーダーはPENNY+GILES製
透明感とタイトな低音を両立


ぜひとも現場で使ってみたいと思い、実際に西麻布CLUB YELLOWでの仕事に持ち込んでみた。ダンス・フロアで音を聴いて最初に感じたのは、最近のミキサーの多くが何となく硬い感じの出音が多いのに対して、V6は柔らかくアナログっぽい感じが優しくて、ハウス系の音楽にジャスト・マッチ。これまでのALLEN&HEATHのDJミキサーは、どちらかというと硬くエッジが効いた出音で、それがテクノやトランス系のDJに受けてヨーロッパでは結構な人気であるが、それとは根本的にどこかが違う。偶然遊びに来たガラージ系のベテラン、DJ NORI氏も"今日はいつにも増して優しくていい出音だねー"なんて、ミキサーが変わったことを知らないのにそう言っていたくらいだから、やはりハウス向きの優しい音なんだろう。とは言ってもパンチはあるので、透明感とタイトな低音が必要な今どきのプログレッシブ・ハウスを連続でかけても違和感無くうまく混ざる。ロータリー・フェーダーのDJミキサーで一番重要なのはボリュームの上がり方(カーブ)だ。PENNY+GILES製フェーダーを採用したV6は、スムーズでありながら上がってほしいところで"クン"っと上がってくれる。2つのチャンネル・フェーダーを操作しながら、現在プレイ中のチャンネルから別チャンネルへビートの主導権を移動させることも容易である。これがあまりいいカーブでないDJミキサーだと、レコード2枚が同時に鳴っているだけで混ざり合って1曲になっていないという状況になるわけだが、このV6ではちゃんと2枚が混ざり合って1曲になってくれる。いいミキサーでミックスすれば、ローカットなどしなくてもうまく2曲が混ざり合って1曲になるわけだが、V6もそうなってくれる。まさにロータリー・フェーダーのミキサーの本領が体感できる。初めて1620を触った人に"自分のDJがうまくなったような気がする"と言わせるのはこうした感覚が得られるからなのだが、まさにそれと同じ感覚を今の技術で再現した感じだ。また各チャンネルにハイパス・フィルターが付いているので、ミックス時や曲の合い間にアクセントとして低音をカットして変化をつけることも可能。それがなかなか使える。最近のDJプレイには、CDプレーヤーを問題無くつなげられることも重要であるが、やはりCDとアナログの音質の差は気になる。その問題を真空管回路を付けたことによりうまく解決してくれて、CDも違和感無くアナログ感覚でかけられることもかなりの高得点。各チャンネルのキューイングもLEDが付いたボタンで視認性も良く、操作しやすい。マスター・セクションにノブがたくさんありすぎてやや分かりにくいが、ノブを換えるなり色を塗るなりすればいいだろう。現場で6時間ぶっ通しで使ってみて、お世辞でなく現在のロータリー・フェーダー・ミキサーでは最強であることを再認識したわけだが、大げさな説明は必要でなく"かっこいいからお薦め"と軽く友人には薦めたいミキサーである。
ALLEN&HEATH
XOne:V6
オープン・プライス

SPECIFICATIONS

■ヘッドルーム/+22dB(各チャンネル)、+24dB(ミックス)
■最大出力/+28dBu(XLR)、+20dBu(TRS)
■外形寸法/483(W)×178(H)×181(D)mm
■重量/7.5kg