ライブでの使用はもちろん自宅でのボーカル録音にも最適なコンデンサー・マイク

SHURESM86

コンデンサー・マイクというと、ほぼどの製品も見ても分かるように、大きいダイアフラムの縦型マイクを思い浮かべることだろうと思います。しかし、今回ご紹介するのは、SHUREの新製品で、SM86という一見ハンド・マイク型のダイナミック・マイク?と思わせる外見を持った、単一指向性のコンデンサー・マイクです。SR用途が中心となる本機ですが、レコーディング現場でチェックして見ました。

扱いやすいハンド・マイク型の
コンデンサー・マイク


この手のハンド・マイク型のコンデンサー・マイクは、一般的にはSR用としてなじみがあり、ライブなどのステージ用ボーカル・マイクとしての位置付けがされています。実際に、ライブなどでは同社のBeta87などのハンド・マイク型コンデンサー・マイクを使用しているのを見かけることがあります。しかし、この手のマイクをスタジオで見かけることはあまり無いため、レコーディングで使えるの?と思っている方も多いと思いますが、実は筆者も同メーカーのBeta87などのハンド・マイク型のコンデンサー・マイクを数本所有し、レコーディングで使っているのです。どのようなときに使うのかと言うと、例えばボーカリストがレコーディング慣れしていれば良いのですが、そうでない場合、普通にマイクをスタンドに立て、固定してレコーディングを行うと、ボーカリストが歌うときに手のやり場に困ったり、動きがぎくしゃくしていつもの感じが出ないことがあるのです。特に、ライブを中心に行っているボーカリストには多いようです。そこで、いつものパフォーマンスで歌いやすくするためにダイナミック・マイクを使うのですが、ダイナミック・マイクだと音がこもり気味になったりして、音質的に使いづらいときが出てきます。そんな場合に、本製品のようなハンド・マイク型のコンデンサー・マイクを使うのです。なぜなら、微妙なニュアンスや音質面でも、ダイナミック・マイクより有利に働くことがあるからです。では、前置きが長くなりましたが、実際の使用感をレポートしましょう。

ハンドリング・ノイズが少なく
クリアでボーカル向きの音質


まずこのマイクは単一指向性(カーディオイド)で、最近のハンド・マイク型のマイクに多いハイパー・カーディオイドものとは違い、指向性もほどよく広くて扱いやすいと言えます。指向性があまりにも狭いと、マイクの位置がシビアになってきますからね。最大音圧も147dBまであるので、声の大きい人でも難なく対応できるレベルになっています。重さや持った感じもちょうど良く、一般的なハンド・マイク型ダイナミック・マイク(SM58など)を使ったことのある人は、太過ぎず細過ぎず、何の違和感もなく本機を使用できるでしょう。また、マイク自体の出力レベルも同社のSM58などと同じぐらいの出力レベルなので、そのままマイクを差し替えてもプリアンプのレベルをいちいち変える必要がありません。その点で、マイク選びも敏速に行なえます。ただ、本機はコンデンサー・マイクのため、ファンタム電源が必要ですので注意しましょう。では、実際に使ってみた感じですが、まずハンドリング・ノイズ(マイクを手で持ったときのゴソゴソッとした音)が少ないというのが分かります。コンデンサー・マイクなので、ノイズ面では結構シビアになっているはずですが、同社のSM58よりもハンドリング・ノイズは少なく感じました。扱いが荒くなるこの手のマイクですから、内部のショック・マウント構造がしっかり作られているのでしょう。特にレコーディングでは声以外の成分の余計な音は拾いたくないので、この程度ならば、慣れれば十分に対応できると思います。また、肝心な音質の方はクリアーな方だと言えるでしょう。もちろんダイアフラムが大きい、スタンド固定型のコンデンサー・マイクと比べると、ハイ/ローの伸びなど劣る部分はありますが、このタイプでは十分納得のいく音質だと思います。今回のチェックではアコギとボーカル、スネアなどに試してみましたが、やはり本機はボーカル用途をメインとした作りだけあって、声の特性に合わせて作られているなということが分かります。もちろん、ほかの楽器の場合でも使えない音というわけではなく、比べてしまうとボーカル向きかな〜と言うレベルです。でも意外な組み合わせが良い結果を出す場合がありますので、いろいろな録音に試してみるのも良いでしょう。ただ、若干ですが2k〜4kHz辺りのピークがレコーディングでは気になりましたが、これはSR用途をターゲットとしているためだと思います。逆に、リハスタなどでスピーカーから鳴らした場合には、この特性によって音が前に出てきて良い結果が出た、と言うことを付け加えておきます。レコーディングでは、EQをするなどして対処すれば良いでしょう。低域に関しても、緩やかなカーブで特性的に下がっていますので、SM58などから変えた場合、本機は高域が上がっているので細く感じるかもしれませんが、オケの中での存在感は出しやすいと思います。ダイナミック・マイクで録った後にEQをしてしまっている人は、EQをしなくても良いかもしれませんよ。本機はSR用途を中心としているということで、レコーディングでは使用しづらいと思っているかもしれませんが、日ごろSM58などで宅録を行っていて、もうちょっと音質面でのクリアさと繊細さが欲しい人は試してみると良いでしょう。何より、コンデンサー・マイクなのにダイナミック・マイクと同じような扱いやすさも本機の特徴です。マイクは手で持って歌わないと気分が出ない!という人や、ハンド・マイクをこよなく愛する人で、高音質を求める人には最適なマイクと言えます。
SHURE
SM86
27,800円

SPECIFICATIONS

■指向特性/カーディオイド
■周波数特性/50Hz〜18kHz
■出力インピーダンス/150Ω
■最大音圧レベル
■寸法/φ49mm×183mm
■重量/278g