クリアでタイトなサウンドの低価格モニター・ヘッドフォン

AUDIO-TECHNICAATH-M30

いろいろと多数発売されているヘッドフォンの中でも、レコーディングなどでモニター用途とされているものは非常に少ないと言えます。今回AUDIO-TECHNICAから、1万円を余裕で下回る予想店頭価格で6,000円前後という大変コスト・パフォーマンスに優れた密閉型スタジオ・モニター・ヘッドフォンが発売されました。値段が手頃なだけに気になっている人も多いと思いますので早速チェックしてみましょう。

コンパクトで装着感が良く
長時間付けても疲れない


まず最初に手に取ってみたところ、非常に軽い! ヘッドフォン自体が重いと、レコーディングでは特に女性の場合は疲れるし、何より外れやすいという問題が起きてきます。本機の場合は、実際に付けてみても重量をあまり感じない印象で、ヘッドフォンの重さで疲れることは少ないでしょう。大きさ的にもコンパクトに作られており装着感も良く、頭の大きい筆者でも大丈夫。頭の小さい人に試してもらっても問題になることはありませんでした。また、耳への圧迫感ですが、この点においても緩過ぎず、きつ過ぎずちょうどよい印象。ヘッドフォンは使っていくうちに緩くなっていくものですが、緩くなったと想定しても大丈夫だと思います。まあ実際には、付けた感覚に個人差があるのでなんとも言えないのが正直なところですが、この装着感だとどんな人でも問題は無いと思います。長時間ヘッドフォンを付けているレコーディング作業においての"ヘッドフォンを付けた感触"という点においてはまずクリアしてると言えるでしょう。機能的な部分では、ユニット自体が180°回転するので、片耳モニターもスムーズに行うことができます。プラグに関しても、標準とミニとの2ウェイ・プラグが採用されているので、どんな機種にも使えるのはうれしいところです。ドライバー・ユニットにも、ネオジウム・マグネットを使用した直径40mmの物を使用しており、最大許容入力が1,600mWとレコーディングにおいて一番音量が大きくなってしまうドラムのレコーディングにも対応しています。それでは、外見やスペック的なことはこの辺にして、何と言っても音が一番ですから次にその辺をチェックしてみましょう。

サウンド作りの場に合った
低域のレスポンスの良さ


音をパッと聞いた瞬間、モニター的な音だな〜と思ったのが最初の感想です。好きな音楽などを休みのときにゆっくり聴くという感覚ではなく、音を作っていますor作りますという場合に適していると思いました。その音質は、どちらかと言えばオーディオ的に良い音というものではありませんが、クリアでタイトであり、音が前に出てくる印象です。スタジオ・モニター・ヘッドフォンとして発売されているだけのことはあります。バランスが取りやすいと感じました。特に低域のレスポンスは、個人的な意見ですが非常に良い印象で、ダボつかず分かりやすい音を出してくれます。レコーディングのとき、ベーシストの人などに"コントロール・ルームで聴いている低音は良いのだが、ヘッドフォンで聴くと音が軽くてよく分からないので、ヘッドフォン・モニターだけ低音を上げといて"などと言われますが、本機ではそういうことも無さそうです。最近のヘッドフォンに多いどちらかと言えば高域重視のものとは違い、中域から低域にかけて厚く、ジャキジャキ、キンキンとした軽い音ではないので耳も疲れにくいと思います。では、実際のレコーディングではどうだったのかというと、今回試用期間が短かったので歌とギター録音で試してしてみましたが、特にギタリストには好印象でした。皆さんおっしゃっていましたが、録音するときのリズムが分かりやすく、耳に痛くないということでした。歌に関しても、声に大事な中域が前に出てくれるので、自分の声が分かりやすいということでした。ただ、耳に優しいモニター用途ということで、高域がソフトな作りになっているからだと思いますが、ファルセットやブレスなどの細かいニュアンスや、アコギのアルペジオなどの繊細な部分を表現するのは苦手なようです。ミックス・ダウン時でもバランスや中域〜低域のモニターには問題ないのですが、リバーブの切れ際やパーカッションなどの高域の成分のバランスには慣れが必要だと思います。普通のオーディオ的なヘッドフォンに慣れている人は、本機だと高域を出し過ぎて、なおかつ低域を絞りたくなってしまうでしょう。しかし、今回チェックしたヘッドフォンが新品の物でしたので、もうちょっと使ってエイジングをすると全体的になじんでくると思います。今回は借り物なので行いませんでしたが、筆者もヘッドフォンを購入すると必ず行うことですので、エイジングは大事だということを覚えておきましょう。何と言っても手ごろな価格帯でのモニター用途のヘッドフォンという意味では使える一品だと思います。最近のちょっと耳に痛いヘッドフォンに飽きた方には最適なチョイスとなるでしょう。筆者もいろんな人のレコーディングを行いますから、キャラクターとしてこのヘッドフォンを購入してみたいと思いました。音に関しては好みが別れるところですから、皆さんも実際に自分の耳で確かめて購入することをお薦めします。非常にコスト・パフォーマンスに優れたヘッドフォンだと思います。
AUDIO-TECHNICA
ATH-M30
オープン・プライス(市場予想価格/6,000円前後)

SPECIFICATIONS

■型式/密閉ダイナミック型
■再生周波数特性/20Hz〜20kHz
■最大許容入力/1,600mW@1kHz
■インピーダンス/65Ω
■感度/100dB
■重量/200g(コード、プラグ含まず)
■ケーブル長/3.4m