最新鋭の機能を搭載しさらなる進化を遂げた定番アンプ・シミュレーター

LINE6Pod XT

ギター・アンプ・シミュレーターの定番、LINE6 Podに新モデルとして最新鋭の機能を搭載したPod XTが発売された。LINE6といえば、これまでPodのほかに世界中のビンテージ・エフェクターをモデリングしたStomp BoxやStudio Modeler、そして多機能モデリング・アンプVettaなどを発表し、そのユニークな性能と個性は世界中で認められている。Pod XTはそれらを統括し、もはやホーム・レコーディングのみならず、プロフェッショナル・マシンとしても必要なツールとしての価値を得たエフェクターと言えるだろう。

キャビネット・モデリングの
向上で“生”なサウンドを表現


前機種と比べ、まず外見で気になるのはズラリと並ぶボタン群と中央にある液晶パネルだ。まるでPod Proがこの卓上サイズに凝縮されたようにも見えるがPod Proに比べ、デジタル・アウトの装備以外はそれ以上のものだ。MARSHALL JCMやFENDER Twinなどをはじめとする32種類のアンプ・モデル、22種類のキャビネットのモデルはPod2同様、とてもクオリティの高い質感だ。特にキャビネットのモデリングは非常に向上している感じがあった。例えばミュート・ピッキングをした際、スピーカーが振動により微妙に“ブホッ”という感じを出すところなどは非常に“生”に近いものがある。また新しいテクノロジーとしてAcoustically Integreated Recording(A.I.R.)ダイレクト・レコーディング・アウトがある。これはセッティングしたギター・アンプを録音するとき、キャビネットに対して4種類のマイク・セッティングと、部屋の広さまでも1ステップずつ100%まで設定可能な機能である。これにより“通常はSHURE SM57をオンで狙うが、曲によっては広い部屋でオフマイクで録って雰囲気を出す”といったことも簡単にできるのだ。

ギタリストの理想のサウンドを作る
充実の内蔵エフェクター


今回このモデルについて私が特筆したいのは内蔵エフェクト。ギタリストであれば気になるのはまず何といっても“歪”系のエフェクトだ。Pod XTにはまず10種類のダイナミック系のエフェクトがモデリングされていて、中でも私が気に入ったのは、ROGER MAYER Fuzz FaceとELECTRO-HARMONIX Big Muffのモデリング。下品で個性のあるファズ・サウンドを非常に忠実に再現している。このほかにもコンプレッサーの王道BOSS CS-1やMXR Dyna Comp、MUTRON 3(オート・ワウ)などのエフェクト・プログラムも非常に印象は良い。モジュレーション系のエフェクトはアナログ系を主体に11種類あり、非常においしいところのビンテージ物のモデリングが施されている。ジミヘンが愛用していたビブラート・エフェクターUnivibeやMXRのフェイズ・シフターPhase90、ADAのジェット感あるFlanger、最古の国産コーラスのBOSS CE-1に至ってはコーラスとピッチ・ビブラートの切り替えまでもが再現可能になっている。またエフェクターではないが、LESLIE 145やFENDER Vibratoneなどのロータリー・スピーカーのシミュレーションも装備されている。ディレイ(ここではエコーと呼んだ方がよいだろう)系は9種類のモデリングでBOSS DM-2やELECTRO-HARMONIXのMemory Manをはじめとするアナログ系のものが特に良かった。ROLAND RE-201やMAESTRO EP-1のようなテープ・エコーのシミュレートもとても良く、音質はもちろんのことだがエディットのパラメーターの中にFLUT(ワウ・フラッター)とDRIVEパラメーターがあり、チューブ(真空管)サウンドの温かい音をシミュレートするだけでなく、エコー・マシンの機械自体がボロくなってテープが滑ったりするような生々しい音も演出する。リバーブもアンプ内蔵型のスプリングをはじめとする15種類のセッティングがあり、非常に用途が柔軟になっている。すべてのエフェクトを同時に使用することも可能で、ディレイ/モジュレーション系のエフェクトに関してはパラメーターの中にPre/Postの切り替えがあり、これによりアンプの前か後ろにエフェクターをセットすることができる。この1台でエフェクトを含む理想の音色を作ることも可能と言えるだろう。Pod2と比べ、ボタンやツマミが増えたことによって“扱いづらくなったのでは?”と思う人もいるかもしれないが液晶パネル(画面①)の装備のおかげで非常に分かりやすい。外側にあるアンプ部の各パラメーターを操作すると、それと連動してDRIVEからCHAN VOLまでの表示が出るので、今どんなセッティングになっているのかが視認できるのだ。中央左下のEDITボタンを押せばキャビやマイク・セッティング、各エフェクトのエディットやアンプの選択にアクセスでき、下にあるファンクション・キーと上のSTOMP、MOD、DELAYなどのエフェクトのON/OFFスイッチにより簡単にエディットすることが可能だ。チューナーも前機では3セグメントのLEDのみで少々やりづらかったが、このモデルでは液晶パネル上で長めのメーターになっていて細かいチューニングもできるようになっているほか、440Hzから±10Hzのピッチも簡単に調整可能となっている。ほかにもPC上へのデジタル・アウトもUSB接続で可能となるなど、細かい点までかなり強化されたアンプ・シミュレーターとなっており、今後当分はスタンダードになることは間違いないだろう。これからアンプ・シミュレーター購入予定のある方は多少無理をしてでも手に入れたいところだ。

▲画面① 中央の液晶パネル

LINE6
Pod XT
75,000円

SPECIFICATIONS

■AD/DA/24ビット
■プリセット/アンプ・モデル:32、キャビネット・モデル:22、マイク・モデル:4、エフェクト・モデル:49、チャンネル・メモリー:64
■入出力端子/ギター・インプット、ヘッドフォン・アウト、+4dBu(バランス)/−10dBV(アンバランス)1/4"(L/Mono、R)出力端子、MIDI IN、OUT/THRU、RJ-45フット・コントローラー端子、デジタル入出力用USB端子
■外形寸法/280(W)×190(D)×74(H)mm
■重量/1.25kg
■付属品/AC/ACアダプター、USBケーブル