名機AT4033aを受け継ぐ40シリーズの新基幹コンデンサー・マイク

AUDIO-TECHNICAAT4040

AUDIO-TECHNICA社は、世界で活躍する日本のオーディオ・メーカーです。その製品はレコード針、ヘッドフォン、マイク、オーディオ・アクセサリーなど挙げればきりがありません。量販店などのオーディオ・コーナーに行くとお目にかかる率100%のネーム・バリューであると共に、家の中にもスタジオにも必ず1つは製品があるという、コスト・パフォーマンスにも優れるナイスなブランド。今回は、世界的なロング・セラーとなったAT4033aをベースに最新の技術を投入したATシリーズの新モデル、AT4040を紹介いたします。

ダイナミック・レンジやSN比は
AT4033aに比べ飛躍的に向上


箱の中には筆者も初めて見た新設計の専用ショックマウント(マイクと接触する部分はすべて防振ゴムに触れるようになっている)、つや消しブラックのAT4040マイク本体、そしてマイク・ポーチ&ダストカバー。マイク・ポーチにはショックを防ぐものが混入されていないので、購入した場合シリカゲルとエア・パッキンなどでグルグル巻きにして持ち運ぶのがベストでしょう。指向性は単一指向性のみ。−10dBのPADと、80Hzから−12dBのローカット・フィルターのスイッチはさすがにMade In Japanなだけあって、ちゃんと“カチッ”となるようになっており、また、スイッチの先端が折れない設計になっています。別売りのAT8446(ウインドスクリーン)でサスペンションとのコンパクトなセッティングにより、ボーカリストの歌詞が見えないというようなわずらわしさも解消できます。AT4033aからAT4040への変更点を挙げると、ダイナミック・レンジ、SN比がそれぞれ向上しました。ダイナミック・レンジは低域までかなり延びています。また、重量が70g軽くなっています。ちなみに周波数特性が面白いのですが、6kHz近辺にピークがあり、もう1つ10kHzにもピークがあります。そして、9kHz近辺を若干アッテネート(NEUMANN U87Aiも10kHzにピークあり)。これを踏まえた上で、スタジオ・スタンダードであるU87Aiと比較してみました。ヘッド・アンプはSSL Gシリーズです。言うまでも無いですが、U87Aiはナチュラル・サウンドの代名詞です。しかしながら、低域も高域もAT4040の方が確実に奇麗に延びています。今回、U87Aiの周波数特性を初めて見てちょっとビックリしました(40Hz以下って無かったんですね)。一方のAT4040は20Hz(人間の可聴範囲、もしくはデジタル・レコーダーの低域限界)まですごくフラット。ローカットを入れた場合も、音質にあまり影響の無いところをアッテネートしています。それに比べ、U87Aiではエアコンのノイズも無くなりますが実際の音の低音も無くなるほどアッテネートされます。AT4040はそこまではアッテネートせず、本機の目指すナチュラル・サウンドの意味する点が分かるような気がします。

アコースティック・ギター録りでは
EQ無しでもOKな印象


実際に女性ボーカリストで試してみました。6kHz近辺にピークがあるため、クリアな息づかいがすごくよく聴こえます。高域まで奇麗に延びていて、また立ち上がりの音程がよく分かるので、ボーカリストにもオフピッチが容易に判断できると思います。そのためか、入力感度がU87Aiよりも高いためか、かなりオンなマイクの印象。リップ・ノイズが目立ってしまうため、少し注意が必要でしょう。男性ボーカルでは、低域のこもったような音域もクリアに聴こえるのですごく良い感じでした。ただしウインドスクリーンをしないとポップ・ノイズがきたときに音が無くなるので、必ずウインドスクリーンの用意を。ということは、ドラムなどの音圧があるものに対してオンマイクで使用するには不向きだと思います。ボーカルやアコースティック・ギターなどに向いているのでしょう。また、ドラムやギター・アンプのオフやストリングスにも向いていると思われます。アコースティック・ギターで試すと、なかなかおいしいところが持ち上がっているせいかEQ無しでもOKな印象。ギターの音程の部分のサウンドがすごくグッドでした。自宅ユースでもバッチリなマイクでしょう。自宅にあるDIGIDESIGN Digi 001でも試してみましたが、プラグインが1つ助かるぐらい抜けが良かったです。これはやはり6kHz近辺のピークによりクリアなせいでしょう。かといってあまり痛くないのは、上記の通り9kHz近辺をアッテネートしているためです。欠点を強いて挙げるとすれば、コネクター部分が少し浅く、NEUTRIKのコネクターを挿すと少しゆるく感じる、その1点だけでした。AUDIO-TECHNICAといえばキック用のATM25があまりにも有名。このATM25が発売される以前は、キックのマイクはSENNHEISER MD421かELECTRO-VOICE RE20が定番でした。ほとんどのエンジニアが、このマイク選定にATM25を付け加えたという輝かしい事実があります。余談になってしまいましたが、ATM25のようなくせのある音色のマイクを作ったAUDIO-TECHNICAが、本機によってまたマイクの歴史を変える……そんなことが再び起こるのを楽しみに思います。
AUDIO-TECHNICA
AT4040
オープン・プライス

SPECIFICATIONS

■型式/DCバイアス・コンデンサー型
■指向特性/単一
■周波数特性/20Hz〜20kHz
■感度(0dB=1V/1Pa、1kHz)/−32dB
■最大入力音圧レベル(1kHz、THD1%)/145dB SPL
■ローカット/80Hz、12dB/oct
■パッド/−10dB
■SN比(1kHz、1Pa)/82dB
■出力インピーダンス/100Ω平衡
■本体寸法/53.4(φ)×170(H)mm
■重量/310g
*付属品:専用ショック・マウント、マイク・ポーチ、ダストカバー