PAD MOTION/MUTE機能やシンセ機能などを加えパワー・アップしたKaoss Pad

KORGKaoss Pad KP2

今年初めのNAMMショーで発表されて以来、待望のKaoss Pad KP2がついに発売された。1999年に初代Kaoss Padが発表されて以来、そのタッチパッドを使ったエフェクト操作はDJ、ミュージシャンの区別なく受け入れられ、昨年にはミキサーと合体させたKaoss Mixerも登場した。KP2がどのくらい革新的なのか、気になるところだ。

アルミダイキャストの採用で
高級感を増した外観


初代Kaoss Padと比べると幅は同じだが、高さは1cm低くなり、奥行きが3cm長くなった。大きく変わったのは重量で、初代のプラスチックから高級感のあるアルミダイキャストのケースになったため660g→1.1kgと増加している。ACアダプターの重量はほぼ同じ、タッチパッド自体の面積も同じだ。スイッチ類やマイク・ボリューム、ヘッドフォンのトリムは大きめで使いやすくなった。またマイクのインプットがフロントに来たり、サンプルやホールドのキーがタッチパッドの下に来たりと、より使いやすいデザインに改められている。そしてKP2にはKaoss Mixerで強化された機能がずいぶん取り入れられている。INPUT信号とエフェクトのバランスをとるFX DEPTHツマミ、8つのプログラム・メモリー、ディレイなどのテンポをタッピングによって設定するTAP/BPMキー(自動BPM検出も可能)、複数のSAMPLEキーやサンプリング音にエフェクトをかけて演奏する機能(リサンプルは不可)などだ。なお、Kaoss Mixerでは可能だったサンプルの本体へのセーブ機能は取り入れられていないので、電源を切るとサンプリングした音は失われる。

ただのエフェクターではなく
ユニークな楽器としての存在位置を獲得


KP2で大幅に導入されたのはシンセ/ボコーダーの機能だ。プログラム70〜84は即戦力になるシンセ音がプリセットされ、タッチパッドで感覚的に演奏できる。また、プログラム62〜69はBPM機能に対応したシンセやリズム・パターンがセットされている。プログラム85〜89はボコーダーで、低音、高音(それぞれハーモニーも付けられる)、オート・チューニング、ペンタトニック、ルート+5度のプログラムをタッチパッドでコントロール可能。マイク入力に対してはもちろん効果的だが、他の入力に対しても有効だ。もう1つ、KP2ならではの強力な新機能がPAD MOTIONだ。トップ・パネルの右のレバーは下に下げるとMUTE(入力信号をカット、エフェクト音は残る)、上に上げるとPAD MOTIONになる。PAD MOTIONは、タッチパッドの操作を最大3.2秒まで記憶する機能。サンプリングと異なり、実際の音ではなくパッド操作の変化のみを記憶する。レバーを上げた状態でパッドを操作すると書き込みが自動的に開始し、レバーを戻すか3.2秒たつと書き込みが終了する。再びレバーを上げると、自動的に記憶したパッドの動きを再生する。レバーを上げている限り、パッドの動きはループ再生されるが、上げた状態でパッドを触ると再び書き込みが始まるので注意! プログラムを変えると、PAD MOTIONの内容はリセットされる。このPAD MOTION/MUTEの操作を覚えると、さまざまな効果を生み出すことができる。また、HOLDやSAMPLEキーと組み合わせることで、かなり複雑で目のくらむような音場作成が可能だ。なお、ここまで紹介した以外のプログラムでもいろいろな改善がされていて、ピッチ・シフターでの遅れも短くなっているし、初代Kaoss Padには無かったビブラート、スライサーなどのエフェクトも加わっている。MIDI IN端子も付き、外部MIDI機器からKP2をコントロールすることも可能になった。ただしタッチパッドのY方向、X+Y方向のデータは受信できないので、外部から完全なコントロールはできない。なおMIDI OUTからはタッチパッドの情報がフルに送信されるので、外部のMIDI機器を操作することは容易だ。実際にKP2を操作していくと、パッドの反応が少し良くなったくらいで初代とさしたる変化は無いように思われる。だが、PAD MOTION/MUTEレバーを使いはじめると事情は一変する。このレバーは手を離すとバネで素早くセンターに戻るので、DJでいうトランスフォーマー・テクニックが簡単に実現できるのだ。また"タッチパッドを操作しながらサンプリングし、これをループ再生しながらPAD MOTIONを挟む"といったように機能を複合させて使うことで、エフェクトの効果は何倍もスピード・アップする。シンセ機能と合わせ、KP2はただのエフェクターではなくユニークな楽器としての存在位置を獲得したと言える。Kaoss Padは幅広い層に使われてきたが、このKP2によってさらに大きな人気を得るだろう。楽器店の店頭でタッチパッドとPAD MOTION/MUTEレバーを動かし、その実力を感じとってほしい。
KORG
Kaoss Pad KP2
オープン・プライス

SPECIFICATIONS

■サンプリング周波数/44.1kHz
■AD/DA/20ビット・リニア
■エフェクト・プログラム数/100
■外形寸法/204(W)×207(D)×48(H)mm(ツマミ高含む)
■重量/1.1kg