クリアなサウンドで豊かな低域を備えるコンパクトなパッシブ・モニター

PMCDB1

今回紹介するのは、英国BBCをはじめとする放送局、レコーディング/マスタリング・スタジオ、ホーム・ユーザーまで幅広く支持されているPMC社の小型パッシブ・モニターDB1です。このDB1は、同社スピーカー製品の中で、最小サイズながら本体には1.5mにもおよぶトランスミッションライン(音声の導管)を内蔵しています。また、デスクトップ・モニターや小さな狭いスペース等も想定した開発/設計ということで、PCベース録音環境でも実力が発揮できそうです。本誌の読者も大いに興味あることでしょう。プロフェッショナルな現場から高い評価を得ている“PMCサウンド”を継承しているDB1。実際に設置場所もいろいろ変えてみてチェックしてみましょう。

同社TB2シリーズより30%小型化
バスレフ・ホールは筐体背後に装備


まず、外観です。実際の見た目は、想像よりも小さく感じられ、縦長でブラックのクールな顔つきは、どんな環境にもマッチしそうです。エンクロージャーは、幅155mm、高さ290mm、奥行き234mmとYAMAHA NS-10Mよりも縦/横ともに一回り小さいサイズ。また、同社小型スピーカーのベストセラー、PMC TB2シリーズ製品よりも30%のコンパクト化を実現しているそうです。バスレフ用のホール(穴はウレタンで埋まっている)は、ほかのPMCスピーカー・シリーズ同様、後部に空いています。ユニットは140mmの防磁型コーン・ウーファーと、27mmのコーン・ツイーターが縦同軸上にデザインされた2ウェイ・システム。サラン・ネットを外してみるとウーファー・サイズはAURATONE 5Cとほぼ同じでした。また、スピーカー・コネクターはバイワイアリングにも対応。本体カラーは今回試聴したモニターはブラック・モデルでしたが、ほかにもブラック・アッシュ/ウォールナットの2種類がラインナップされています。

ナチュラルでフラットなサウンド
小型ながら質量感ある低域


DB1は、パワード・モニターではないので、我が家のモニター・システムと切り替えて試聴しました。このシステムは、NS-10M+パワー・アンプYAMAHA PC-4002/Studio。高出力系のパワー・アンプをPC-4002/Studioしか所有していないため、これを切り替えてNS-10Mと聴き比べることにしました。まずは、デスクトップ・モニターよりも後ろにセッティング。スピーカーからの距離は1.5〜2.0mと少し遠め、後ろの壁とは20cm前後の距離で、バスレフの出口が左右のセッティングで状況が若干違う状況になっています。実は、試聴する前からDB1が“バスレフでソフト・ドーム・ウーファー”なのに対し、NS-10Mが“密閉タイプでコーン紙ウーファー”なので、思いっきり違う音になることを想定していましたが、ここまで違うとは少々ビックリしました。筆者も普段からスタジオなどでは、ソフト・ドームのモニターを使ったりしているのですが、切り替えた直後はいつも音の違いにパニクります。今回はこれを避けるため、できるだけ1曲通しで聴き、表現力の違いを比べてみました。では、比較結果ですが、ある程度大きな音量では、サウンドの柔堅の印象の差がかなり明確に出ました。もちろんNS-10Mの方が堅く派手に感じられます。DB1はもう少し音量を出したいと感じられるほど、“うるさくない”サウンド・カラーです。実際、どこまでパワーが入るかは試していませんが、歪み感は少なくクリアなサウンドがキープされる分、音圧感はもう少し欲しくなるかもしれません(大音量には少々パワー不足かも)。また、低域は、サイズからの想像するもの以上にかなり低い帯域まで伸び、量感も多く感じられました。ただ、バランスには若干注意が必要かな。逆に、中域はおとなしめで締まった感じ。高域もうるさくないので長時間のモニタリング時には、疲れにくいシステムでしょう。定位感もツイーターが縦同軸上のデザインになっているおかげか、NS-10Mに比べ安定感は増しているように思われます。さらに音像の解像度もNS-10Mの中域特有の癖が気になるほど、ナチュラルでフラットな印象を受けました。当然と言えば当然ですが、中/小音量ではソフト・ドーム・タイプの利点か、DB1の方がバランスの違いは少ないです。このセッティングでDB1は若干低域の抜け/暴れが気になります。恐らくバスレフの部分とウーファーの反射の影響でしょう。しかし、デスクトップ・モニターの側(0.5〜1.0m前後の距離)にセッティングしたときの方が、直接音が増えるせいか低域のもたつき感は解消されました。ただし、このようなセッティングの場合、モニターと距離が近いため、モニター・サービス・エリアの上下/左右がどうしても狭くなってしまいます。本機のサイズを考えると、ツィーターを耳の高さに合わせるのには、ちょっとした工夫が必要になるでしょう。最近は、十分な実力を備えた低価格の小型モニター・スピーカー・システムが各社から出ています。サラウンド用スピーカーも意識してか、サイズ的にもよりコンパクトになってきています。今回DB1を試聴してみて、本機同様に高いコスト・パフォーマンスを目指したパワード・モニター製品もぜひ聴いてみたい衝動にかられました。
PMC
DB1
138,000円(ペア)

SPECIFICATIONS

■周波数特性/50Hz〜25kHz
■ピークSPL/110dB以上(@1m)
■入力感度/87dB(1W/1m)
■クロスオーバー周波数/3kHz
■インピーダンス/8Ω
■外形寸法/155(W)×290(H)×234(D)mm
■重量/4.5kg(1本)