25mm大型ダイアフラムを採用したクリアなサウンドのコンデンサー・マイク

SM PRO AUDIOMC01

それにしても、ここ最近のコンデンサー・マイクの価格・性能には驚かされる。“コスト・パフォーマンスもここまで来たか……”と、つくづく感心させられます。今回チェックしたMC01は、SM PRO AUDIO社というオーストラリアのメーカーの製品です。MC01は、昨年発売されたプロ仕様25mm大型ダイアフラム採用のコンデンサー・マイクで、今回若干の仕様変更と同時に、大幅にお求めやすい価格になり再登場となりました(旧価格:29,800円)。仕様変更ポイントとともに、定価2万円を切った、このMC01の実力をチェックしてみましょう。

黒のボディにゴールドが映える
堂々とした雰囲気の外装


まず、このMC01の外観からです。スタジオのスタンダードであるNEUMANN U87を全体に少し細身にしたほどのサイズ(一番太いところで直径約50mm)で長さはほぼ同じと、全体の雰囲気はU87によく似ています。ボディはつや消しの黒、ウィンド・スクリーンのスクリーン・ネットの目はかなり細かく、加工もとても丁寧に仕上げられています。各スイッチやロゴ・マークは、薄いゴールドが印象的なデザインです。低価格のマイクにありがちな、安っぽい作りのものと違って全体的に堂々とした雰囲気のマイクです。メーカーの設計コンセプトでしょうか、手を抜いていませんね。実際、ソロ楽器やボーカルなどはマイクに向かって、演奏したり歌ったりするので、マイクの顔つきは結構大事だったりしますからね。このMC01には、専用ショックマウント・アダプターとキャリー・ポーチが付属しています。この価格で同梱されているのは大変うれしいです。全体の仕様は、25mm大型ダイアフラムを採用し、指向性は単一指向性固定。仕様変更で追加された機能としては、85Hz@−10dBのローカット・スイッチと10dBアッテネーター・スイッチ(パッド)。コンデンサー・マイクなので、外部(コンソールやマイクプリ)からの48Vファンタム電源で動作します。それでは、実際に音を聴いてみましょう。今回はNEUMANN U87、TELEFUNKEN U-47Tubeと比較してみました。マイクプリやケーブル・セッティングは、できるだけ同じ状態にして3本のマイクをセッティングします。最初はストレート・ボイスでのチェックから始めてみました。マイクの出力差を調整してから、まずは無音状態での残留ノイズの差は、MC01の圧勝かな! もっとも、ほかの2本は生産されて15〜40年経っているので、そのころの録音環境での設計スペック、経年変化などで一概に比較するのは、平等ではないと思いますがね……。正直、MC01の方が“一皮むけたようなリアルな感じ”(SN比の差かな?)です。真正面での特性の違いには、大きな差はなかったです。左右にポイントを外していくと、MC01の方が若干高域成分の量感(倍音成分)が減ってきますが、大きく特性の差は感じられませんでした。音源が動くときや、パーカッションなど広めのセッティング時には、音質変化が少ないので良いかもしれません。破裂音やウィスパー・ボイス、極オン・セッティングでも十分なパフォーマンスでした。

中高域の抜けがよく
クリアで明るいサウンド


それでは、男性ボーカル、女性ボーカル、アコースティック・ギターでの聴き比べをしてみましょう。セッティングの都合上、NEUMANN U87との2本でチェックした結果です。中域から高域の表情には若干差が出ました。MC01は、良い意味で音の輪郭がつやっぽくなって、明るいサウンドです。サシスセソ等の子音(高域)も出過ぎた感じにはなりません。中高域に少しクセがありますが、抜けは非常によく、全体的にクリアな印象です。U87と比較すると、若干“こぢんまり”する感はありますが、まとまりのある扱いやすいサウンドです。低域は思った以上に感度が良く、床の鳴りやボーカルなどのポップ・ノイズ、楽器の低域ノイズ、エアコンや機材のファン音はU87よりも敏感に感知され過ぎる傾向があります。恐らく、この辺りの特性の良さが、逆に楽音以外の低音域のノイズに対処することを考えてローカットを追加仕様とした原因なのでしょう。ローカットの効きも、ちょうど低域ノイズの帯域をカバーしていますので、大いに利用した方がいいでしょう。ただ、スイッチの入りっぱなしには注意してください。低音楽器やワイド・レンジの楽器(ピアノ、ドラムなど)の録音時に悲しい結果になりますから……。今回、SPLの高い音の録音はやっていませんが、ボーカルやアコースティック・ギターなどではヘッド・ルームは問題ありませんし、パッド(−10dB)も追加仕様となっているので、ほとんどの録音状況では、問題なく使えることでしょう。今回、マイクプリはSSL Gシリーズ・コンソールのものとNEVE 1073でチェックをしましたが、若干印象の違いを感じました。恐らくソリッドなオペアンプのプリアンプでは、抜けの良さが強調され過ぎてしまう傾向があって、むしろビンテージ回路や真空管仕様のプリアンプの組み合わせの方が、相性がいいかもしれません。全体的な印象としては、価格からは想像つかないほどバランスの良いコンデンサー・マイクです。特に、初めてコンデンサー・マイクを購入するようなユーザーには、ちょうどいい製品かもね! ただ、そのようなユーザーが使うことを考えて、初心者にも分かりやすいマニュアルや、保管時(特に高温多湿の日本の気候での保管)の注意事項などを書いた小本などを付属してくれるともっと親切だと思いました。
SM PRO AUDIO
MC01
19,800円

SPECIFICATIONS

■ 指向性/カーディオイド
■ 周波数特性/30Hz〜16kHz
■ 出力レベル/−38.5dB±2dB
■ 出力インピーダンス/200Ω以下
■ 入力換算ノイズ・レベル/26 dB以下
■ 電源/ファンタムDC(48V±4V)
■ 外形寸法/50.5(φ)×190(H)mm