ノイズ低減により広ダイナミック・レンジを実現したコンデンサー・マイク

AUDIO-TECHNICAAT4047/SV

AT4047/SV。AUDIO-TECHNICAからAT4033A、AT4050/CM5、AT4060と続いてきたシリーズの最新型。海外では既に販売され、評判も上々。さる筋からの情報によると、ボブ・ディラン(2001ワールド・ツアー)や、KISS(THE FARE WELL TOUR)等、SRの現場でも使われ高い評価を得ており、KISSのツアーでは、使われているマイクはAUDIO-TECHNICAだらけだったという証言も得ている。スゴイですね。ちなみに、今回紹介するAT4047/SVはベースとギターにそれぞれ立てられていたそうな。

新たな野望と展開を感じさせる
銀梨地仕上げの外装


既発のコンデンサー・マイクAT4050/CM5そして、真空管搭載のAT4060で、AUDIO-TECHNICAのサウンド・カラーは確立されたかに見え、実際ワタクシなど、同社の名を聞けば"エッジの効いた高域から、延びのあるクリアな低域。キレイな音のマイク"と連鎖的に想像してしまうほどだ。さらに"フラットな音質"と付け加える人も居る。上から下までキレイにフラットに表現してくれるマイク。素晴らしいですね。しかしそんな製品も、定番と言われているマイク、例えばNEUMANNのU87等と比べると、中低域に物足りなさを感じてしまうことがしばしばあったのも事実。まあこういった現象は新旧各製品を比較した場合、どんなときにも付いて回ることではありますがね。レンジが広がれば広がるほど真ん中が寂しく感じてしまうということでしょうか。いや、そんな単純なことではないのでしょうね。何故か太い音の方が重宝される今の録音シーンでは、気にせずにはいられない問題の1つであったりするわけです。AT4047/SVも先入観からAUDIO-TECHNICAのサウンド・カラーを想像していたが、しばらく見つめるうちに、今までとは違う何かが鼻先をかすめた。まず、色が違う。同社のマイクといえば黒いものと思っていたが、こいつは銀だ、銀梨地仕上げ焼き付け塗装だ。外装には凝るメーカーである。この前もウルシ仕上げのヘッドフォンとかも作ってたし、これは同社の新たな野望と展開を感じずにはいられないのである。

明るい中域が特徴的
守備範囲の広いマイクだ


スペック的には、まず指向特性は単一のみ。AT4050/CM5で定評を得た大口径1インチ・ツイン・ダイアフラムを改良して搭載。FETの見直しにより、大幅にノイズ低減に成功(AT4050/CM5の1/2程度)、ローカット・スイッチあり(80Hz 12dB/oct)、パッド・スイッチあり、高耐入力。でっかい音もどんと来い、しかもサイズはコンパクトという、どーだ、まいったかのスペックなのだ。にわかに興奮してしまったが、コンデンサー・マイクで大きな入力に耐えられるのは、うれしいじゃないかと思うのはワタクシだけでしょうか。実際、ベース・アンプやギター・アンプにかなりべったりと近付けて狙ってもみたが、音圧に負けることなく、クリアに再現してくれた。特にベース・アンプに使った感触が好印象で、録音が進んで音が増えてくると、何やかんやと邪魔されてぼやけがちになる中低域もしっかりと抜けて聴こえてきた。以前AT4060を使ってベースを収録したときも、同じように抜けの良さに感心したことがあるのだが、真空管マイクのAT4060に匹敵するパフォーマンスを本機は秘めているのだろう。続いて、アコースティック・ギターに使ってみたところ、高域の延びとエッジの効いたサウンドが心地よく、ストロークのパートなど、ホントにキレイに響いた。自慢のロー・ノイズ設計のおかげで、思い切ってレベルを大きく設定できるのも助かる。しかし単音でプレイするようなフレーズのとき、少し太さが物足りなく感じる場面もあった。場合によっては、通常より楽器に近付けてセッティングするような工夫が必要かもしれない。ちなみに今回手伝ってくれたギタリストは"繊細なサウンドがするマイクだ"とコメントしていた。パーカッションのたぐいにも良い仕事をしてくれそうで、オーバーヘッドからざっと並んだ小物類を狙ってみたのだが、粒立ちのよさは失われず、オフマイクのセッティングでも十分使えそうだ。そのうちドラム・セットのオーバーヘッドにも使ってみたい。皮物はジャンべに使ってみたが、この楽器独特の、ふくよかな低音からカンカンと響く高域までをバランスよく拾ってくれた。短い時間の中だが使ってみたところ、今までの同社製品よりも中域に明るさが出ていて、物足りないと思っていた部分が補われたように感じた。メーカーの言う"出力段に組み込んだトランスと新開発の素子により、ビンテージ・マイクにも通じるつややかな音質を実現"という部分がそれなのかもしれない。AUDIO-TECHNICAが、今までのテクニカ・サウンドとは異なる新しいサウンドを目指したというAT4047/SV。思った以上に守備範囲の広そうなマイクである。16万円という値段が微妙な気もするが、余裕があればペアでそろえておきたいと思わせる魅力は持っている。ちなみに専用のショックマウントのAT8449/SVは別売りで2万円である。ほかにマウントのしようが無いのだから、セットで売ってくれればいいのに。これ、唯一引っ掛かったポイントなんですよね。
AUDIO-TECHNICA
AT4047/SV
160,000円

SPECIFICATIONS

■指向性/単一
■周波数特性/20Hz〜18kHz
■感度/−35dB(0dB=1V/Pa、1kHz)
■最大入力レベル/149dB SPL(1kHz、THD1%)
■SN比/85dB @ 1kHz/1Pa
■出力インピーダンス/250Ω
■ノイズ・レベル/9dB SPL
■ダイナミック・レンジ/140dB
■ローカット/80Hz 12dB/oct
■外形寸法/534(φ)×170(H)mm
■重量/410g