アナログ機器のような使い勝手を持つ24ビット仕様デジタル・グラフィックEQ

PRESONUSDEQ624

今回レポートするのは、PRESONUSから新しく発売された"ダイナミック・プロセッサー内蔵デジタル・ステレオ・グラフィック・イコライザー"DEQ624。箱から取り出したときの印象は"まんまアナログ!?"でした。フルデジタルという言葉から想像される、大型ディスプレイやページをめくるための操作等は必要無く、パネルにあるのはツマミとスイッチとスライダーのみ。クイックな操作が要求される"現場"でも十分対応できる設計になっているようです。

バンド・レンジを3タイプ選択可能
ノイズ・キャンセラー機能なども装備


まずリア・パネルを見てみると、シンプルに電源スイッチと入出力端子を備えるのみ。デジタル端子は用意されておらず、XLR、TRSフォーン、バリア・ストリップとアナログばかり3系統を備え、外見の印象はますます"アナログ機材?"といった感じです。次にフロント・パネルへ移り、各機能を紹介していきましょう。まず入力された信号は31バンドのグラフィック・イコライザーを通り、パネル右側のダイナミクス・プロセッサー・セクションへと進みます。このセクションは左から順にハイパス・フィルター→ローパス・フィルター→エキスパンダー→リミッターという流れです。BYPASSはハード・ワイアー・バイパスとなっています。入力端子からの信号は最初にデジタル変換されるわけですが、バイパス音はこの手前でスルーされるため、バイパス・スイッチのオン/オフ操作により、デジタル・プロセッシングされた音とバイパス音(原音)を常に比較しながら作業を進めることができます。RANGEはスイッチを押すことで±6dB、±12dB、+12/−24dBの3タイプのレンジ(量)を順に選択できます。選ばれたレンジはフロント・パネル左端のLEDで確認可能です。HI-QはイコライザーのQをNORMAL=4.32(1/3 オクターブ幅)とHI=11.54(1/8オクターブ幅)のどちらかを各周波数ごとに選べるようになっています。HIを選択すると、エンコーダー(スライダー)AとBの間にあるLEDが点灯します。CHANNEL-A MASTERスイッチはチャンネルAをマスターとしてステレオ・リンクする機能です。使用時には、チャンネルBのコントローラーはすべて効かない状態になります。AHCは"アダプティブ・ハム・キャンセラー"の略で、スイッチを押すだけで自動的に測定/感知したグランド・ノイズを除去してくれる大変優れた機能です。PRESET+STORE/SECURITYスイッチでは、本体内に4個までのユーザー・プログラムを保存可能です。誤ってコントロールを動かしてしまい設定が変更されるのを防止するセキュリティ・ロック機能を使えば、フロント・パネルのコントロールを一切無効にすることができます。

ステレオ・リンクで位相のズレを回避
−24dBカットはハウリングに威力大


では、肝心の音と実際の操作性のレポートです。今回は本機を都内某クラブに持ち込み、週末の2日間フル活用してチェックを行いました。1日目はメインのサウンド・システムに組み込んで使用。バイパス・スイッチを切り替えながらのAD/DA変換チェックでは、特に派手な色付けもなく、少しだけ粒のそろった音でコントロールしやすくなった印象です。機能面では、ステレオ信号を扱う上で便利だったのが先ほど説明したCHANNEL-A MASTERです。EQの場合、左右の設定が少しでもズレるとその分位相が悪くなるわけで、特にグライコの場合は左右チャンネル全スライダーを全く同じセッティングにするのは不可能なので、かなり重宝する機能です。"いじり過ぎ"による音質の劣化防止にもなります。今回はDJミキサーからの出力を通したのですが、使用するのがCDやアナログ盤ということで、突然過大入力が入ってくることは無かったものの、会場のテンションが上がってくると当然DJミキサーのマスター・フェーダーもジワリジワリと上がってきます。その場合はGAINを下げるよりもリミッターを少しだけ深く設定すると良い結果が得られました。最近のお客さんは、音の良し悪しよりも音圧の方に敏感に反応しますから。プログラム・メモリー機能の利用方法としては、最近CDだけでプレイするDJも増えてきているので、アナログ盤とCDの質感の差を補正して本体にメモリーしておくとかなり便利だと思います。メモリー数は4個ですが、これで十分でしょう。2日目はライブ用のステージ・モニターに使用してみました。ここで威力を発揮したのはRANGEとHI-Qで、+12/−24dBなんてレンジ幅はなかなか他にないし、特に−24dBカットはかなり効きます。これら2つを組み合わせた使用例としては、モニター・チェック中にその日のハウリング・ポイント(特にボーカル)を幾つか特定し、その周波数帯だけHI-Q設定(LED点灯状態)にしておけば、リハーサル/本番を問わず、たとえ手元が暗くても素早く対処できます。また、グライコにハイパス・フィルターというのはよくありますが、DEQ624にはローパス・フィルターも付いているので、ステージ上でモニターのヌケが悪いときにローパスを少しかけてあげると良くなるケースがあり、結構便利です。実際にこの2日間、チェックというよりフル活用させていただきましたが、各機能の組み合わせによって、価格以上の性能が発揮できるのは非常にグッドです。それに、たとえデジタル製品であっても取説無しで使えるというのはかなり重要ですよね。そして最後に......これってデジタルだから、何年使っても"ガリ"が出ないんですよね?
PRESONUS
DEQ624
148,000円

SPECIFICATIONS

■ダイナミック・レンジ/105dB
■周波数特性/10Hz〜20kHz(±0.5dB)
■全高調波歪率/0.005%
■チャンネル・ゲイン/−20Hz〜+20kHz
■入力ヘッドルーム/+22dBu
■外形寸法/483(W)×228(H)×89(D)mm
■重量/6.4kg