プリアンプ/EQ/真空管リミッターを2ch分内蔵したプロセッサー

MINDPRINTDTC

今回紹介するMINDPRINT DTCは、プリアンプ/EQ/リミッターが一体となったシグナル・プロセッサーです。回路には真空管を使用し、マイクプリ部には自社で開発したトランスも使用されているというぜいたくな作りになっています。またこの手の製品は1ch仕様のものがほとんどですが、本機は2chが完全に独立した仕様です。その上、オプションでS/P DIF(オプティカル/コアキシャル)やAES/EBUのデジタル入出力も装備できるなど、大変に使い勝手の良い製品だといえます。それではその実力はどれほどか、早速チェックしてみましょう。

自社開発のトランスを採用
太い音が特徴のマイク入力部


信号の流れに沿って、プリアンプ部から順に各セクションを見ていきましょう。プリアンプ部では、マイク入力時のブースト量が72dBと、十分なゆとりがあります。一方、ライン/インストゥルメント(DI)入力時には、本機の基準レベルを中心に+16dBまでの増幅、マイナス側は音が消えるまでレベルを調整できます。しかもデジタル入出力にも対応しており(オプション)、これらの入力をスイッチで切り替えて選択できるようになっています。また本機では、プリアンプ部とEQ部の間にインサート端子も用意されており、外部エフェクターとの接続も可能です。そのほかにも−20dBのパッド、48Vのファンタム電源、位相反転、メーター表示の入出力での切り替えなどがあり、機能的な不満は全くありません。肝心のマイク入力の音は、トランスを使用している効果がよく出ており、低域は太く、高域は倍音が良く伸びていながらも、音に硬さは無くとても落ち着いた音になっています。質感的には、滑らかというよりも良い意味での粗さがあり、オールドのNEVEに近い音です。反対にライン入力やインストゥルメント入力では、中高域が若干明るく、力強く音が前に出てきて、ライン系のシンセ/サンプラーやギター&ベース系の録音にピッタリだと言えるでしょう。

4バンドEQ+フィルターで
幅広い音作りが可能


EQセクションは4バンドのパラメトリック仕様です。カーブはローとハイがシェルビング型、ローミッド/ハイミッドがベル型となっています。なんと本機では、シェルビングのローとハイでもQツマミでカーブを変えられる設計になっていて、GMLのEQのように滑らかなシェルビング・カーブから、ブースト周波数前にディップができるオールドNEVEのような癖のあるカーブにすることもできます。全帯域にわたってビンテージの質感があり、ローのブースト時は全体をファットで太くするという感じの音です。カット時は極端なカットよりも、余分な低域を抑える用途に向くかかり方をします。ハイもローと同様で、普通は10kHz辺りを極端にブーストするとハイハットなどがチキチキ出始めますが、本機では高域全体を自然かつ滑らかにブーストすることができます。またカット時はローと同様に極端なカットはできませんが、本機にはこの4バンドEQに加えて、周波数の設定が変更できるローカット/ハイカット・フィルターが付いており、これがアイソレーターのように強力に効くので、カットの際に不便だと感じることは全くありません。シェルビングのロー/ハイとは対称的に、ベル・カーブのローミッドとハイミッドはかなり攻撃的にかかり、この4バンドEQと2つのフィルターで幅広い音を作り出すことができます。

真空管回路の採用により
高域の倍音を保つリミッター部


最後のリミッター・セクションの設定ツマミはリミッター(かかりの深さ)とリリースの2つしかありませんが、実際にはとても使いやすいです。SSLコンソールの内蔵コンプやプラグインのTC|WORKS TC Master Xのように深くかけていくと音圧が上がるタイプで、深さに応じてリミッター的なかかり方からコンプレッサーへとレシオが自動的に変わる設計になっています。しかもこのセクションには真空管が使用されているので、深くかけても高域の倍音が失われることがなく、その結果音圧を上げながらうまく音を前に出すことができます。残念ながら今回はデジタル入出力端子(オプション)が装備されていなかったので、これについてはチェックできませんでしたが、24ビット/96kHzでのデジタル入出力にも対応する本機は、デジタル録音時にビンテージの質感や力強さを加えたいと思っている方にお薦めできる、とてもコスト・パフォーマンスの良い素晴らしい製品だと思います。
MINDPRINT
DTC
175,000円

SPECIFICATIONS

■入力端子/マイク・イン(XLR)×2、ライン・イン(XLR/TRSコンボ)×2、インストゥルメント・イン(フォーン)×2、インサート・リターン(TRSフォーン)×2
■出力端子/ライン・アウト(XLR)×2、ライン・アウト(フォーン)×2、インサート・センド(フォーン)×2
■周波数特性/5Hz〜127kHz(±3dB、マイク・イン)
■歪率/0.001%(ライン・イン)
■外形寸法/482(W)×133(H)×238(D)mm
■重量/6.1kg
※オプションのデジタル入出力モジュールDI-Mod 24/96(35,000円)またはDI-Mod 24/96 AES/EBU(40,000円)を増設可能