多数のビンテージ系モジュレーション効果を完璧にモデリングした1Uエフェクター

LINE6Mod Pro

LINE6は非常に素晴らしいメーカーである(主観)。アンプからコンパクト/ラック・エフェクター、プラグインまで、モデリングをコンセプトとするメーカーのトップを常に維持してきているからだ。私自身もプラグインのAmp FarmやEcho Farmは手放すことのできないアイテムの1つである。そのLINE6からスタジオ・モデラー・シリーズとして、Echo Proに次いでFilter ProとMod Proが登場した。今回はアナログ・コーラスやロータリー・スピーカー、フェイズ・シフターなどモジュレーション・エフェクトをたっぷり搭載したMod Proをチェックしていきたいと思う。

説明書無しでも基本操作OKな
シリーズ共通の分かりやすいデザイン


1Uサイズで奥行きは15cm前後、重量もさほど重くない、コンパクトで素晴らしいパッケージに仕上がった本機のリア・パネルからチェックしてみよう。IN/OUTは+4dB対応のXLRが各ステレオで、それとは別に−10dB対応のフォーンも各ステレオで用意されている。フォーンはRchのみ使用すれば、モノIN/モノOUTのコンパクト・エフェクター的にギターやベースを接続する場合に便利だ。LchのみはTRSフォーンに対応し、IN/OUT各1本ずつのTRSケーブルでステレオ接続が可能になっている。+4dBに対応しつつ、他にもいろいろな接続法を備えているのは幅広いユーザーのニーズを考えると素晴らしいことである。次にフロント・パネルだが、このシリーズ共通のデザイン(色は違うが)は非常に分かりやすくどれか1つを把握すれば他の機種の操作もすぐ理解できるレイアウトになっている。内容の違うエフェクターでここまで共通のレイアウトを取れるのは設計段階からきちんとコンセプトが煮詰められていたということで、素晴らしい仕事ぶりだ。うんちくはこの辺にしてパネルを見ていこう。IN/OUTのレベル、ドライ/ウェットのMIXバランス、PROGRAM SELECTノブ、MODELING SELECTノブ、SPEEDノブ、DEPTHノブ、さらにプログラムによりパラメーターの内容が変わるTWEAKとTWEEZノブがある。この2つのノブは最近多くなった、メイン・ディスプレイを見たりパラメーター・ページをめくらなければ今何をコントロールしているか分かりづらい機種とは異なり、ノブ脇のLEDを見れば一目瞭然だ。ボタン系はシステム・セットアップやSAVE、TAP、ディスプレイ・セレクト、BYPASSなどの基本操作用のボタンを装備。実際の使用感は、各ノブの役割が分かりやすいため取説無しでも何の問題もなく使える。ただしシステム・セットアップやMIDIの設定など深層に入っていくタイプの設定は、ディスプレイが小さいため取説がないと分かりづらいかもしれない。しかし他社のマルチエフェクターに比べれば格段に分かりやすい。

ギターやベースだけでなく
録音済のボーカルなどにも効果的


一番重要なサウンドについて述べていくことにしよう。すべてのプログラム、モデリングに関して“うーん、どーかなー”と思わせるものは1つも無くGoodの一言である。世間ではモデリングというものに対して“なーんだやっぱ本物と違うや”とか“ここがこーだったら買うのになー”などの意見も多数耳にするが、本物の音が欲しければ本物をそろえればいいのであって、しかしその本物が必ずしも今作ろうとしているサウンドとマッチするとは限らない。その点、モデリング・マシンは価格的に手に入れやすいだけでなくS/Nも良く、1台で数種類のエフェクトを使用することもでき、良いこと尽くめだ。またしてもうんちくはこの辺にしてサウンドの話に戻るが、私が特に気に入ったのはフェイザ−系である。今までのラック・タイプやプラグインではコロコロ感というかショワショワ感がいまいちだったのだが、Mod Proはその点が非常に良い。エレキギターは当然、ボーカルなどにもかかりが良く、ハードなオケに混ざっても存在感がある。あとトレモロ系も良い。普段私はAmp FarmのFENDERのトレモロを使用するのだが、Mod Proはアンプ・モデラーではないので歪みとは関係なくトレモロをコントロールできるのは重宝した。その他のモデリングも非常に素晴らしい作りになっている。あえて難癖をつけるとすればJET FLANGERがちょっとおとなしい感じがしたくらいである。全体的にギターやベースを直接インプットしてエフェクターとして使用するのはもちろん、既にレコーディングされた素材、例えばボーカルやキーボード系に使用してもかなり良い。ちょっと物足りなかったオルガンのLESLIE感を増したり、Rhodesのコーラス感やパンニング感をより目立たせるなどいろいろな用途が考えられる。その他、気に入ったシステムがあるので記載したい。まずバイパスの種類が豊富にあること。エフェクト音のみをミュートしてドライにするタイプや、IN/OUTの信号を完全ミュートするタイプ(アウトからは音は一切出ない)、AD/DAを経由しないでアナログ部のみを通るドライ音を出力するタイプなど使用する状況によって簡単に使い分けることができる。次にアウトのバランス(MIXバランス)だが、プログラムにメモリーされたバランスをそのまま使用する以外に、プログラムに左右されずに任意に決めたバランスでフィックスすることもできる。例えばインサートで使用した場合、50:50の比率でMIXバランスをフィックスすれば、40:60や70:30のプログラムでも比率は50:50で聴くことができる。これは便利だ。またモジュレーションがテンポ管理できるのは当たり前で、TAPボタンを一度押しすればモジュレーションのスウィープがリセットされ一定の周期でスタートすることができる。これによってフランジャーなどでスウィープが閉じた状態と開いた状態を曲の任意のポイントに入れることが簡単になる。ほかにも便利な機能があるので一度使用してみてほしい。最近のこの手のエフェクターは、数年前の状況を考えると、年ごとに著しい進歩と素晴らしいプリセットおよびデザイン、使いやすさ、低価格を実現してきている。ユーザーにとってはうれしいことだが、一方でユーザー個人の耳と何を必要としてるかの明確なコンセプトも必要になってきている。他人に左右されずに自分自身で良いものを選んでいただきたい。このレビューがそれに役立てればうれしい限りである。
LINE6
Mod Pro
オープン・プライス

SPECIFICATIONS

■AD/DA/24ビット
■サンプリング・レート/46.8kHz
■エフェクト数/16
■ユーザー・プログラマブル・プリセット/99
■入出力端子/フォーン・イン/アウト(アンバランス)L/R(MONO)、XLRイン/アウト(バランス)L/R、MIDI IN/OUT、エクスプレッション・ペダル
■外形寸法/482(W)×153(D)×43(H)mm
■重量/1.92kg
■オプション/エクスプレッション・ペダルEX-1(9,800円)