広帯域再生とリニアリティに優れた信頼性の高いミッド・サイズ・モニター

SPENDORSA300

ここのところ、ニアフィールド・モニターではパワード・タイプがすっかりポピュラーになってきている感がある。そんな折、SPENDOR(スペンドール)社からもミッド・サイズのニアフィールド・パワード・モニターSA300が発売された。それでは早速このSA300をチェックしていこう。

SAシリーズの中核を担うモデルで
サラウンド・システム構築にも対応


SPENDOR社は1969年にイギリスで設立された会社で、モニター・システムや高級リスニング・オーディオ用のスピーカーで知られている。特にモニター・システムでは20年以上にわたってBBCにおいて標準モニターとして使用されているという実績がある。設立者自身もBBCに勤務していたというバックグラウンドのある会社だ。リスニング用としてもかなり高級なスピーカーを発売しているが、今回レポートするSA300はミッド・サイズのモニターとしてもかなりハイエンドなポジションに位置付けされるものだろう。SA300はパワード・タイプのモニターで構成は2ウェイとなっている。広帯域再生能力とリニアリティの両立というのが設計の目標の1つとなったようだ。このシリーズにはSA100、SA200、SA500があり数字が大きくなるほど大型になる。SA300はシリーズ中でもミッド・レンジに位置するものだ。バリエーションに、SA300、SA500を利用した際にセンター・スピーカーとして使用できるSA150、5.1chサラウンド・システム構築用のスーパー・ウーファーSA400がある。つまり、SAシリーズで5.1chサラウンド・システムを構築できるということだ。SA300のウーファーは200mmで、特殊ポリマー・コーンを採用している。ロング・スロー・ボイスコイルを使って低域のリニアリティを確保している。ツィーターは27mmの浅いウェーブ・ガイドを持つソフト・ドーム・タイプだ。キャビネットの形状は正面と側面にわたって2つの角をそぎ落としたような独特の形状を持っている。キャビネットのタイプはバスレフで、ウーファーの下に横長のポートが付いている。たたいてみると硬質な音が返ってきて、ソリッドなボディだということがうかがえる。重量もパワードとはいえこのサイズにしてはずっしりと重いが、これはハイエンド・モニターにほとんど共通する点だろう。裏面はほとんどパワー・アンプのための放熱板で覆われている。ツィーターのフレームの下部にパワー・インジケーターの赤色LED、シグナル・インジケーターの緑色LEDが並んでいるのが特徴的だ。アンプ部は低域が130W、高域が60Wという構成になっている。クロスオーバーが3kHzなのでバランスのとれた構成といえるだろう。最大音圧は仕様上では連続112dB、ピークで120dBとなっているのでニアフィールド・モニターとしての通常の使用方法なら十分といえる。コントロールは入力ゲインのほかに幾つかの補正が用意されている。低域のカットはサブソニック・フィルターで、3段階に切り替えが可能。さらにティルトは微調整用のイコライザーで低域、高域ともに3dBの範囲でブースト/カットすることができる。設置環境によって発生するちょっとしたクセを直すには便利な機能だ。入力は信頼性の高いXLR方式を採用している。

スピード感のある現代的なサウンド
フラットな特性はモニターに最適


SA300を試聴してまず感じたのは、非常にスピード感のあるサウンドであるということ。高域が元気に再現されているというふうに言うこともできるのだろうが、個人的にはスピード感という言葉の方が合っているような気がした。デジタル時代に似つかわしいサウンドだ。リファレンスとして比較したスモール・モニターのサウンドがくすんで感じることもあったほどだ。スピード感があるにもかかわらず長時間聴いていても疲れのこないサウンドだ。ミッド・サイズの割に低域もよく伸びている。バスレフの共振点付近で若干のピークがあるようで、音源によってはその帯域が若干強調されるような印象もあるが、これはバスレフの原理上当然発生すべき現象だ。全体的には非常にクセの無いフラットな特性に仕上がっていて、分解能も高くモニター・スピーカーとしては申し分のないサウンドであるといえよう。試聴した空間で可能な限り音量を上げてみたがサウンドが崩れることもなく“相似形”的に音圧が上昇してくれる。スピーカーのリニアリティもさることながら、アンプ部や電源もよく設計されている結果だろう。大音量でモニターしたい方にもお薦めできる。指向特性もかなり良い方に入るだろう。スタジオ内で複数の人がコンソールの前で試聴するといったシチュエーションでもほぼ同じ印象で聴くことができそうだ。必然的に定位もよく、奥行きなどもかなりよく表現されている。SA300を聴いて、さすがにハイエンドのモニターの底力を見せつけられた思いだ。いろいろな意味で十分な再生レンジを持ち、正確なサウンドをモニターすることが可能なスピーカーである。低域の再生レンジなどもはやスモールの範囲ではない部分もあるので、家庭用の再生機器を照準とした制作の場合、別に本当の意味でのスモール・モニターを用意する必要があるかもしれない。
SPENDOR
SA300
296,000円(1本)

SPECIFICATIONS

■周波数特性/44Hz〜23kHz(@±3dB)
■入力端子/XLR
■クロスオーバー周波数/3kHz
■外形寸法/470(H)×280(D)×250(W)mm
■重量/17kg