適正レベルとウォームなサウンドが手軽に得られる1ch真空管レベラー

SUMMIT AUDIOTLA-50
高級なスタジオ機器を提供しているSUMMIT AUDIOから1Uハーフ・サイズで1ch仕様のTLA-50という製品が発表された。“Tube Leveler”と名付けられた本機は大変コンパクトで、2台を並べてステレオでという使い方や、ヘッド・アンプと組み合わせてインプット・モジュールに、といったような柔軟な使い方ができそうである。またその“Leveler”という命名にも興味を引かれる。早速チェックしてみよう。

シンプルな操作セクションと
2色の表示が可能なVUメーター

内容を見てみるとコンプレッサーとチューブ(12AX7)のバッファーとの組み合わせで、比較的オーソドックスな考え方で作られているように思われる。コントロール部はアタックとリリースがそれぞれ3ポイントのプリセットで、作業の簡略化に一役買っている。プリセット・タイムの設定が適切であるからか、実際の使用においてはこの3ポイントでそれほど不足を感じない。それ以外のコントロールはゲイン・リダクションとゲインのツマミ、メーター切り替え、それと動作切り替え(LINK、IN、BYPASS)のスイッチだけという極めてシンプルなものになっている。

端子類はXLR/標準フォーンのコンビネーション・インプット、XLRと標準フォーンが独立したアウトプット、サイド・チェイン用のTRSフォーンのイン/アウト、そしてLINK用の標準フォーンと、これまた非常に分かりやすい。

中央にあるVUメーターはゲイン・リダクションとアウトプット・レベルを切り替えて監視できる。この辺りも極めて標準的なものである。1つ変わっているのはそのメーター部の照明で、普段は左右2個ずつの黄色いLEDが点灯しているのだが、試しに思いっ切りレベルを突っ込んでみると照明が赤く変わるのである。ケースの隙間からのぞいてみると、黄色いLEDに挟まれて赤いLEDがあるのが見える。どうやらこれがオーバー・レベル・インジケーターになっているらしい。取扱説明書や仕様書を見てもこの件に触れている部分はないが、調べてもらったところ+18dBuで赤のLEDが点灯するということだ。なかなか奇麗な処理の仕方だと思う。

通すだけで適正レベルが得られ
“なめらかで明るい音”に変化

さて、実際に使ってみると、設計意図通りであると思われるレベルのコントロールに特化されたような使い心地で、Levelerという命名にもなるほどと納得させられてしまう。

まずボーカル、ギターやベースなど単体にかけてみると見事に狙った適正レベルにそろえることができ、しかもコンプくささが極めて少ないのである。ソフト・ニーであるとわざわざうたっているコンプの性質なのであろうか。レベル設定を間違ったような極端な状態においてもこの傾向は変わらない。これは現場では大変有用なことで、入力されるレベルが正確に予測できないとき、取りあえず本機さえ入れておけば録音に失敗する可能性が非常に少ないのではないかと思われる。

既に触れたが、コンプ部のプリセット・タイム設定はいずれも適切であり、FAST、MEDIUM、SLOWどこに設定しても表示通りの働きで、しかも効き方が極めてスムーズである。コンプレッション・レシオは手動では設定することができないが、入力に応じて自動的に可変設定されているようだ。ここにもオーバー・コンプをコンプと感じさせないこの機種の秘密があるのかもしれない。

次にミックスされた音を入れてみると、こちらの方が単体の音に使うよりありがたみが大きい。音圧感とレベルを容易にコントロールできる。各スイッチやツマミの位置がどうであってもそれなりに“良い音”が出てくる感じで、イージー・オペレーションの見本みたいな印象を持った。

トータルの音色は“なめらかで明るい音”であると思う。この機械を通すだけで、めりはりの効いた良い感じになってくる。この音はコンプによるものなのか、それともチューブによるものなのだろうか? 興味深い。

ふと見ると、本機のバイパスは全バイパスではなくコンプ部分だけのバイパスである。従ってバイパス・モードで使うとチューブ・バッファーだけを通した音を聴くことができる。これはとても面白いし、使えると思う。実際、バイパスで使ってみるとチューブがサウンド作りの核となっているのがとてもよく分かる。全バイパスと比較すると音が明るく豊かになっているのである。しかも変わり方には誇張がなく自然であり、無理なファットさを求めていない様子が見てとれ、とても良い印象を与えてくれる。

なお、本機の使用形態のバリエーションとしてサイド・チェインを使った信号のコントロールがあると思う。この機種ではサイド・チェインが使えるので、自身の信号にEQをした特定帯域だけをターゲットにコンプをかけたり、他の音源によるコントロールなどを試してみた。いずれの場合も予期した通りに設定に忠実に動作してくれるという印象だ。しかし、いろいろな局面で経験を積んでいないとこの機能を使いこなすのはかなり難しい。試行錯誤あるのみである。

それからもう1つ、LINK機能がある。これは2台を同じコンプレッションで動かす機能で、特にステレオで使用するときなど必要になってくる重要な項目なのであるが、今回は1台だけのテストであったため残念ながら動作確認できなかった。もしまた機会があればリポートしたい。

総合的に見てとても高品位であると思うし、使うのがとても楽しかった。できれば常設して積極的に使いたいものの1つである。だが、ステレオで28万円、資金繰りには苦労しそうである。

SUMMIT AUDIO
TLA-50
140,000円

SPECIFICATIONS

■入出力端子/フォーン(アンバランス)/XLR(バランス)コンボ・イン、フォーン・アウト(アンバランス)、XLRアウト(バランス)、サイド・チェイン(TRSフォーン)、ステレオ・リンク(フォーン)
■出力インピーダンス/75Ω
■最大出力レベル/約+29dBm
■入力インピーダンス/20kΩ
■最大入力レベル/+26dBm
■電源/20W、100V、50/60Hz
■外形寸法/216(W)×216(D)×45(H)mm
■重量/2.0kg